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□【貴方が入れる珈琲は】(照翔)
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「ハァー、やっと終わったぜ」
椅子に座りながら伸びをする翔太郎。
手元には懐中時計がある。
翔太郎は今までこれを時間を掛けて直していたのだ。
「なら、そこにある珈琲でも飲むことだな」
「へ?」
突然、前方から聞こえた声に目をパチクリして視線を向ける。
「うお、照井!?何時の間に…」
其処には客用のソファーに座り、寛いで珈琲を飲んでいる照井が居た。
「飲まないのか、冷めるぞ」
翔太郎の質問には答えず、照井は言う。
「あ゛?…何だ、気が利くじゃねぇか」
質問を無視されたことに一瞬イラッとする翔太郎だが、デスクに置かれている珈琲に目がいくと、機嫌を良くする。
「君だからな」
「!?」
サラッと発言された言葉に動揺するも、それを悟られない様に珈琲に口を付ける。
丁度良い珈琲の熱さに疲れが取れ、心がほっこりしてゆく感覚になる。
「照井、」
「何だ?」
「ありがとな」
美味しいなんて言うのは癪である為、口が裂けても言わない。
だけど、感謝の気持ちにその分をも入れる。
照井はきっと気付かないだろうが。
「ああ」
翔太郎は視界の端で照井がフッと笑っているのを見た。
オマエの珈琲は温かくてホッとする。
まるで、オマエの存在の様に−
end
2011.09.04