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□【不安定な君に】(照翔)
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仕事が終わり、雨で濡れた服を乾かして家で寛いでいると、インターホンが鳴る。
荷物か何かだと思い、出ると、其処には雨に濡れた左が居た。
一瞬驚いたがすぐに状況を理解して、中に入るよう促す。
このままでは風邪を引いてしまいかねないので風呂を貸してやる。
左が入っている間に新しい服を用意して、脱衣所に置いてやる。
ついでに濡れた左の服を洗濯機の中に入れた。
暫くして上がってきた左にタオルを渡す。
「…サンキュー」
温まった翔太郎の姿に内心でホッと息をつく。
そこでふと左に違和感を感じる。
一体何だ…?
逢ってからの左の様子を思い返してみることで気付いた。
いつもより左の口数が少ないのだ。
「何かあったのか?」
「……」
「珈琲を入れるからその辺に座っとけ」
尋ねてみたが何も答えない左に言いたくないのだと思い、リビングに座るよう言って珈琲を入れに行く。
言いたくないのなら無理に訊こうとは思えない。
俺自身がそう何より解っている。
二人分のマグカップを持って左の下へ行くが、左を視界に入れた俺は思わず立ち止まる。
左はある一点を見ていた。
けれど、左の目はそこにあるものを映してはいなかった。
「左」
溜まらず名を呼べば、ゆっくりと此方を向く。
其処にはいつものような表情はない。
俺は何も言わないまま珈琲を手渡す。
左もそれを受け取るだけで何も言ってはこない。
俺はそのまま左の横に腰掛ける。