野生生活
□鉄生、波乱の1日C
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「いやぁ、岩城。助かったよ。お前だろ?助けてくれたのは」
あの後、鉄生は平波に呼び出されると、礼を言われた。
すっかり元気になった平波は、にこにこしている。
「いや、実際に助けたのは陵刀っすよ。あいつ、医師免許持ってるんで…一応」
それを聞いて、急に平波の顔から表情が消え、強ばった。
「ど、どうしたんだよ、平波」
冷や汗まで、だらだらと流し始めた平波を不審に思い、心配そうに尋ねる鉄生。
「い、いや…あいつ、何か変な事してなかったか?」
そこで今度は、鉄生が動きを止めた。
そして、冷や汗を流し始めた。
「ど、どうした、岩城」
その鉄生の動作に、嫌な予感がした平波。
冷や汗が、更に滝のように流れ出した。
「あ、うーんと…えぇっと」
鉄生は悩んだ。
先程の事は『変な事』に分類されるのだろうか、と。
鉄生的には、十分『変な事』なのだが…
だが、事を荒立てることもないと思い留まった。
「…いや、なかったっすよ」
「ほ、本当か?」
「本当っす…それじゃ」
そう言い残すと、鉄生は脱兎の如く逃げ去った。
(なんで俺ばっかりが、こんな目に遭わなきゃなんねーんだよ!)
(それもこれも、全部あいつのせいだ!)
『あいつ』とは、言うまでもなく陵刀の事だ。
「一言、びしっと言ってやんねーと気が済まねぇ!」
そう叫ぶと、鉄生は『研究室』と名の付く部屋のドアを、ばしんと開けた。
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