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□幸せはいつか醒めるから
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それでも、抱き締める位はいいじゃないか


幸せはいつかさめるから


「と言うわけで、上下逆転しようか、団蔵」
「だが断る」
いやいや待て待て。
今の始まりだったらシリアスじゃないのか。
つか寧ろシリアスだった方がまだ助かった。
「どちらかと言うとシリアルの方だろうね」
「庄ちゃんったら冷静ね!でも今俺にそんな余裕は無いぞ」
はははと渇いた笑いをこぼしながらも、庄左ヱ門と距離をつめる。
因みに今の時間は夜中。
場所は庄左ヱ門と伊助の部屋。
伊助は団蔵が来ると同時に出ていったので、この場には庄左ヱ門と団蔵のみである。
じり、と両者は押し倒す気概が満ち溢れてはいるが、睨みあったまま布団の上で火花を散らす。
……こちらから見れば大分シュールな図だが。
「にしてもいきなりどうした?今まで何も言ってこなかっただろーが」
「ちょっと考える事があってね……」
「考える事?」
よく解らない事に呆けていると、
「隙あり」
「うおわっ!!」
足払いをかけられ、すっ転ぶと同時に腹の上に乗っかられる。
「ぐえっ」
「いい声出すじゃないか、団蔵?」
「しょーうー……?」
下から見れば、少々暴れまわったせいか、服が少し乱れ、団蔵からしてみれば据え膳だ。
「……どうせ」
「あ?」
こっからどうするかなー、と下敷きにされながらも考えていると、ぽつりと庄左ヱ門の口から言葉が漏れる。
「ここから出たら、団蔵とは離れるだろうから。少し位、お前の視界を知りたかっただけだよ」
そんな諦めたようで、何処か嬉しそうな顔にはたと見惚れれば、ぺしりと頭を叩かれる。
「そんな余裕で構えてていいの?」
「いや、余裕は先程申しました通りないんだけどな、」
「?」
「そう可愛い事言われちゃ、惚れ惚れするしか無いかと」
「……阿呆」
はぁ、と溜め息を点いてはいるが紅くなった顔までは持ち前の冷静さで隠せなかったらしい。
「てか、勝手に達観してる感じっぽいけど、俺は」
ぐい、て腕を引き今度は庄左ヱ門を下にする。
「離す気ないからな」
一瞬、きょとんと目を開けた後、ぶすりと頬を膨らませる。
「それとこれは関係無いだろ」
「いーだろ、てかもう楽しんだろ?」
「……馬鹿旦那」
ふわりと額に口付けると、観念したかのように力が抜ける。



幸せがいつかさめるものだと知っている
だからこそ今は抱き締めさせて欲しい





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