dream
□lemon*skash
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1章 始まりの音
えーん、えーん…
どこからか子供の声が聞こえてくる
ママー…
一人の金髪の少女が公園の前で立ち止まると、今にも消えかかりそうな声の主を探した
短めのスカートから雪のように白い足がすらりと伸びている
さらに黒のニーハイで曲線美が強調されている
エメラルドグリーンに輝く水晶玉のような瞳にちょこんとある唇
整った輪郭からは精巧に作られたアンティークドールを思わせる
桜も散り新芽が出始めている木のしたで小さくしゃがみ込んだ女の子に目が止まった
少女は駆け寄ると小刻みに震える肩に手をそっと置いた
「どうしたの?迷子?」
鈴とした声が響く
女の子はひっくひっくと声を詰まらせながら頷いた
「私が探してあげようか?」
「ほんとに…?」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると膝に擦りむいたような跡があり血が少し垂れていた
「怪我をしているわ、ちょっと待ってて!」
公園にある水飲み場らしき所でハンカチを濡らすと女の子の膝を丁寧に拭き、鞄の中に入っていた非常用のバンソコ
ウを上から貼った
「ふぅ、これで大丈夫」
「ありがとう、おねぃちゃん!」
無邪気な笑顔に安心したのか少女の方も笑い返した
「まい…!」
さっき入ってきた公園の入り口近くから大人の女性の声がした
「お母さん!」
すぐ立ち上がり走りよるとぎゅっと抱きついた
「あそこのおねぃちゃんが助けてくれたんだよ!」
女性は少女を見ると丁寧にお辞儀をしてお礼を言った
しばらくしゃべった後、これから学校だからとそこで別れた
「ばいばーい!」
女の子の小さな手と少女の細くて長い手が左右に揺れながらそれぞれが公園から遠ざかっていった
「…」
道路を挟んだ向かいの道でこれを見ていた少年がいた
「…あっ、俺も学校だった」
焦げ茶色で短く波打った髪が風でふわっと舞った
「あの制服って雷門だよな…」
少年は少女がいった方向に向かって駆けていった