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□最高の我侭
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最高の我侭






「なぁ。何か欲しい物とか無いのか?」

今日は久々の千鶴とのデート、
俺達を知ってる奴がいないと思われる所まで遠出をする事とした。

教師と生徒と言う関係でもあるが恋人でもある。
千鶴と付き合い始めてもう一年が経つ。高校三年になった千鶴とは
人目を盗んで会ってはいたが、そんな事を繰り返していると
千鶴のほうが疲れてくるのでは?っと思い、高速を飛ばして
2時間ほど走ったところに有る大型のショッピングモールに来ていた。
誰にも気兼ね無く、人の目を気にする事もない。

「いえ、見ているだけでも、とても楽しいです」

千鶴は基本的にあまり物を欲しがったりはしない。
俺の中で女というのは、貪欲で特に高い物を欲しがる。
しかし自分の金は出したがらないで、上手い具合に男に買ってもらう。
そんなイメージが大半を占めていた。
そんな我侭女のイメージを払拭させたのが今の恋人の千鶴だ。
何事にも一生懸命で、素直で。小さなことでも感動しやすい性格の彼女を見ていると
とても心が温かくなり、優しい気持ちになれる。

しかしそんな千鶴にも俺は少しだけ不満がある。
千鶴は誰かに甘える事が苦手らしく、俺にさえ、なかなか甘えてこないし
我侭も言ってはきてくれない。
今日は何でも我侭を聞くといっても、せいぜい手を繋ぎたいと言うだけだ。
だから俺は普通に手を繋ぐのではなく、お互いの指を絡めて手を繋いだ。
世間で言う恋人繋ぎと言うものだ。

千鶴は初め人目を気にして恥ずかしがっていたが、だんだん慣れてきたようで
時折ギュッと強く握ってくる。そんな小さな手もとても愛おしい。

二人で敷地内の店を見て周る。雑貨や小物を置いてある店が好きなようだ。
時折手にとって眺めたりしている。
それでさっきの台詞になる。しかし答えはいつも同じで見ているだけで楽しいのだと。

「見てるだけなんてつまらねぇだろ?」
「だって先生、一つ買ったら欲しいもの全部買いたくなっちゃいます」
「だから、買ってやるって」
「いいえ、見ているのが楽しいんです」
「解らねぇな・・・」
「解らなくて良いです。こうしているのが楽しいんです」
「そうか?」
「本当に欲しいものは・・・内緒なんです」

おまけにこいつは頑固だ。自分の意思を曲げない。
そう言うところも好きになった理由の一つだが・・・
千鶴は意味深な事を言って嬉しげに笑い手を強く握ってくる。

「なぁ少し休まねぇか?疲れただろう?」
「はい。じゃあ何処かで休みましょう」
「ああ」

二人で店内のカフェで休憩を取る事にした。



先生とこんな風に堂々と出かけることが出来るなんて。
こんな事は卒業するまでは絶対に無いだろうと思っていた。
だから今回は本当に嬉しかったのだが・・・

解ってはいたが先生と歩いていると変に注目を浴びてしまう。
特に女の人からの視線をビシビシと感じている。
二人でカフェに入るなり老若男女問わず注目されてしまう・・・
本当に何で先生はこんな子供の私なんか選んでくれたのだろう。
その疑問は未だに解消されてはいない。

先生はコーヒーを私は甘いカフェオレを頼みしばし二人で話しているが
まだ視線は感じたままだ・・・

無理は無い。白のVネックのニットにジーンズのいたってシンプルな服装だが
それがかえって先生の魅力を引き出しているとしか思えない。
モデル顔負けとはこういう事を言うのだと、改めて実感した。

「どうした?そんなに疲れたのか?」

心配そうに覗き込んできる先生が以外に近かったので
驚いて後ろに体を引いてしまっていた。

「・・・おい」
「あっ、すみません。驚いてしまって」
「まぁ良いが。この後はどうする?」
「・・・・・」
「おい、本当にどうしたってんだ」

周りの視線が気になってしまい先生の話を集中して聞いていなかった。
どうして私なんかを・・・。一度気になってしまうと、どうしても聞きたくなってしまう。
私は思い切って先生に聞いてみる事にした。

「先生は私の何処が良かったんですか?」

土方はいきなりそんな事を聞かれたため驚いてしまう

「だって・・・周りを見ても綺麗な人なんて沢山いるし・・・なんで私を選んでくれたんだろうって・・・」
「はぁ?そんな事気にしてたのか?」
「先生といる時ずっと視線を感じています」
「そりゃ、お前もだろ」
「え?」

千鶴は解ってないだろうと思っていてが、本当に解っていなかったらしい
確かに女の方は俺を見ていたと思うが、男共は千鶴のほうを見ていたのだ
小柄で可愛らしく、表情も明るい。そんな千鶴を見ている視線が煩かったと言うのに。
こいつは自分の事を全くと言っていいほど知らない。

「何で私なんか・・・」
「『なんか』なんて言うんじゃねぇよ」
「でも・・・」
「俺はお前だから惚れたんだよ」
「ほ、ほれ・・・」
「何でそこで赤くなんだよ。当たり前だろ。だからこうして一緒にいたいと思ってんだ」
「先生・・・」
「いいか?良く聞けよ。何事にも一生懸命で、素直で。小さなことでも感動しやすくて、頑固で」
「頑固って・・・」
「思いやりがあって、そんなところに惹かれたんだ」
「そんな、買い被りです」
「違わねぇよ。確かにあんまり我侭言ってもらえないのは不満なんだがな」
「・・・違います」

先生は解ってない。私がどんなに我侭で嫉妬深いかなんて・・・

「先生は我侭言わないと言いましたが違います。私とても我侭なんです」
「お前の何処が我侭なんだよ」
「私とても欲しいものがあるんです」
「は?何だよ言ってみ」
「お金では買えないものなんです。だから我侭なんです」
「それは何だ?」
「・・・・私が欲しいのは先生なんです。先生の全てが欲しいんです」
「・・・・・・・・・」

あれ?何かおかしい事言ってだろうか。先生の目元が少し赤い気がするし
周りでこちらを見ていた人たちも驚いたような顔をしている

「お前・・・意味解って言ってんのか?」
「え?変な事言いましたか?」
「変じゃねぇが・・・今この場で言う事ではないな」
「でも私は本当に先生が・・・先生といる時間がとても欲しかったんです」
「時間?」
「はい。先生の心と二人で過ごせる時間がとても欲しいんです」
「・・・・・」
「ね?私ってとても我侭なんですよ?・・・・嫌いになりましたか?」

不安そうにこちらを見ている千鶴がいるが俺にとってそれは我侭だとは言えない

「バカ、そんな訳ねぇだろ。むしろ惚れ直した」
「え、え、え〜?」
「そんなに俺を思っていてくれてるなんて最高じゃねぇか」
「そ、そうでしょうか」
「ああ」

そっと千鶴の左手を取って薬指に軽くキスをする

「せ。先生」
「良いか、覚えておけこの先の俺の人生の全てをお前にくれてやる」
「え?」
「だからお前も、この先の時間を俺にくれ」

そう言ってポケットから小さな箱を取り出して目の前で開けてやると
大きな目がさらに大きくなり、それを見つめる。
それを右の薬指にはめてやる

「これは予約だ、本物はいずれ渡してやるからこれで我慢しとけ」
「え・・・これって・・・・」
「安物で悪いがな、左手は本番まであけておけ」
「そ、そんな安物だなんて。私、と、とても、う、うれ、しい、で・・」

涙が溢れて言葉にならないがコレだけは言っておきたい

「先生、ありがとうございます。そして・・・」
「そして?」
「あ、あ、愛してます」
「ああ。俺もだよ」

泣き笑いのような顔で俺に囁いてくれる言葉は何て甘美なんだろう。
二人で見詰め合って微笑んでいると、周りから大喝采がおきた
それぞれ「おめでとう」とか「お幸せに」などと声もかけられる

・・・・忘れていた。ここはいつもの先生の部屋ではない。

私は恥ずかしがって、俯いてしまったが先生は野次のような冷やかしに答えて

「ああ、幸せにしてやるさ」

なんて言っている。ますます顔を上げずらくなってしまった。

「なぁ千鶴」
「は、はい」
「幸せになろうな、二人で」
「はい」

こんなに大勢の知らない人たちに囲まれ祝われながら私達は未来を約束した

ずっと一緒に居ようと永遠を誓う





当然ながら月曜に登校した学校では千鶴の指にはめられた
指輪を見て、がっかりする者と、立ち直れない位ショックを受けた男達が
相手は誰だと騒ぎ立てた者達が大勢いたそうだ。


いかがだったでしょう?突然甘い二人が書きたくなったしまいました(笑)
あ、甘いか?自分では解りませんが甘くしたつもりです(汗)
SSLシリーズではまだ付き合ってもいないのにいきなりプロポーズを書いてしまった。
・・・まぁいいか〜(お気楽です)
ココまで付き合ってくださってありがとうございました」〜
2011/3/24

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