*そして僕等の世界は染まる*

□二日目
1ページ/1ページ

「あれ?一人か?」


「別にいいだろ」



高校の広い学食で声をかけてきたのはやっぱりヒヅキだった。

覗き込むようにして俺のA定食を見て、うまそーと呟く。

俺は食べかけの唐揚げを口に運んでから言った。



「食わないのか?」



何やら突っ立ったままのヒヅキを少し離れた席で呼ぶ声がする。

コイツは控えめにいって友達が多い。

それに誰とでもつるむ。

なのにルームメイトってだけで俺やフタバを見つけるとわざわざ駆け寄ってくる。

今日もそうだ。



「あぁ、食うよ」



ヒヅキはそう言うと、何故か俺の隣に持っていたC定食のトレイを置いた。

そして当然のようにヒヅキ自身も椅子を引いて腰かける。



「…お前、何してんの」


「え?いや、さすがに俺もコレ以上何も食わなかったら腹が背中になるっつーか…」


「んなこと聞いてねーよ。

お前、向こうの奴等に呼ばれてるぞ」



一瞬だけキョトンとした表情を見せたかと思うと、そうだった!、と手をうって呼ばれた方へと戻っていった。

コレでゆっくり食える。

そう思ったとたんに、また同じ顔が俺の隣に腰かけた。



「さぁ、食うぞー」



あまり
のさらりとした違和感のない動作に、一瞬俺の方が呆然としてしまった。



「だから…、何してんだよ、お前…」



呆れたように俺が言うと、ヒヅキは豚のしょうが焼きを持ったまま、またキョトンとした。



「え?だってそろそろ食わねーと俺のC定食が…」


「そーいうことじゃなくてっ!」



思わず立ち上がって叫んでしまった。

周りが少し静まり返ったが、俺は何事もなかったかのように座り直した。



「何で戻ってきてんだよ」



わずかに抜けた顔が、おぉ!!、と理解したと言わんばかりに輝いた。

そしてその顔のままニッコリと微笑む。



「お前と食いたかったから」



他にないだろ?、と続ける。



「本当はさー、他のやつも誘おうと思ったんだけどやめた」


「何でだ?」


「だってお前、嫌いなんだろ、大勢でいるの」



俺はヒヅキの発言に少し驚いていた。

何でわかったんだ、コイツ。



「集会はいつもサボってるし、運動できるのに部活も入らねーし。

授業も時々抜けてるだろ?」



よく見てんな、俺がサボってるのに気づいてるのはフタバだけだと思ってたのに。



「だから一人で来た。
つーか…、皆できたらお前のこと取られそうだし」


「俺に構うのなんて、お前くらいだよ、バーカ」



ハニカむように笑ったヒヅキにつられて、少しだけ頬が弛んだ。



「あ、笑った」



心底驚いた顔で、ヒヅキが言う。

なんだか回りの喧騒がやけに騒がしい。



「俺だって少しは笑う。

お前、俺のことなんだと思ってんだよ」



いつもの不機嫌な顔に戻し、昼食に戻りつつ言った。

するとヒヅキは恥ずかしげもなく堂々といい放つ。



「コレから、俺の親友になるやつ」










(こんな宣言)

(してくるバカ)

(見たことも)

(聞いたこともねーよ)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ