*そして僕等の世界は染まる*
□三日目
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「よぉ」
屋上の扉が開く音。
顔を出したのはやっぱりフタバだった。
「あぁ、はよ」
短い挨拶を交わす。
そういえば鍵をかけておいたはずなのに、どうやって入ってきたんだコイツ。
フタバはコンクリートに寝そべっていた俺の隣に座り込んで、いつもの仏頂面を更にしかめた。
「風、強いな、ココ」
「当たり前だろ、屋上なんだから」
俺は腕を枕にして、空を見上げたまま答える。
ふいにフタバを見ると、かろうじて長髪ではないものの、延び放題になっている赤い髪をうっとうしそうにはらっていた。
それでも柔らかに風になびき続ける。
そのうち諦めたのか、俺に話しかけてきた。
「お前、昔から屋上好きだよなぁ」
「そうか?」
「そうだろ。
中学の時だって、探すと大体ここにいたし」
「お前だってそうだっただろ」
俺がそういうと、確かにそうかもな、とフタバは頷いた。
中学時代、他の仲間もいたけどほとんどはフタバとつるんでた。
地元でも荒れていることで有名な中学で、俺達はまさしく不良みたいな存在だった。
気がつけば、もうだいぶ長い付き合いになる。
「なぁ、お前さ」
ふっと、口をついて出た言葉。
取り分け考えて発した訳じゃないけど、どうしてか聞いてみたくなった。
「フタバは、何で授業サボるんだ?」
俺の質問を聞いて、また突然だな、とフタバが笑う。
「たぶん、俺はさ、」
少しだけ考えるように、髪をかきあげるフタバ。
その髪が日を浴びているせいか、酷く赤く目に焼き付いた。
「たぶん、俺には当たり前っつーのがないからだ」
フタバらしい解答。
もう何年も一緒にいるけど、相変わらず微妙につかみにくい奴だ。
でも、たぶんそれは、
「俺も、かもな」
俺にも共通する答え。
フタバが寝そべったままの俺を見下ろして、乾いた笑顔を見せる。
俺を、ほとんど同時になぜだか笑った。
そしてフタバが言う。
「だろ?
俺達、似てるんだ」
(俺だって)
(お前を見つけることくらい)
(造作もないよ)