*そして僕等の世界は染まる*
□七日目
1ページ/1ページ
「最初はグー、じゃんけんポン!!」
ヒヅキの高らかな声と共に繰り出されたのは、向かって右からグー、グー、チョキ。
ようするに、だ。
「はい、今回の買出し係りはフタバに決定〜」
「ちっ、しゃーねぇなぁ…」
もう日も落ちて、だいぶ涼しくなってきた頃。
主にヒヅキによって、寮部屋は珍しく盛り上がっていた。
今夜はヒヅキの提案で、試験終了の打ち上げをすることになったのだ。
元より俺がそんなことを提案する訳がないし、フタバにもそんな発想はない。
それどころか無視して寝ようとしたフタバの耳元で、「打ち上げ〜打ち上げ〜」と恨みがましく囁いたことで、無事に執り行われることになってしまったのだ。
「だいたいこういうのは提案した奴が買ってくるもんだろ」
「セコイこと言うなよ〜。俺、今月ピンチなんだから!」
「だったら、んなことやるなっての…」
切って少し短くなった髪をかき上げて、フタバが毒づく。
と言いつつも結構ノリノリに見えるぞ。
「んじゃあ、お前何食いたい?」
「えっとねーとりあえずは腹に溜まるもの!
あとはケーキ!ホールのでかいやつ!」
「ふざけんな、だったらテメェで金払え。
適当に買ってくるから、準備しとけ」
存分に着崩した制服姿のまま、フタバがだるそうに出かける支度をする。
「あれ?俺にしか聞かねぇの?」
ヒヅキが不思議そうに俺を見る。
分かりやすすぎて、頭にハテナマークが見えるくらいだ。
「俺の好きなものくらい分かってるだろ」
今にも部屋から出そうになっている双葉に向かって投げかける。
「その割りにお前、利いたら聞いたメンドーだって『何でもいい』って答えるけどな」
「別に、お前みたいに好き嫌い激しくねぇし」
「るせ、じゃあ行ってくる」
バタンという音に「気をつけろよー」とヒヅキが投げかけた。
それを聞きながら俺は立ち上がる。
「早く準備するぞ。あいつ、買い物はやいから」
「あーなんかそんな感じするな」
うんうんと頷くヒヅキ。
「それにしても、お前ら相変わらずスゲェなぁ」
「は?」
端に寄せられた机を持ってきている俺に、ヒヅキがしみじみと言った。
「こーなんつーかさぁ、お互いのこと何でも分かってるよな」
「…気色悪ぃこと言うなよ」
毎度毎度、なんてことを言い出すんだ、コイツは。
お前の方がよっぽど恥ずかしいっての。
ほんと、今の台詞をフタバに聞かせてやりたかったよ。
「ヒヅキ、さっきのフタバにも言ってやれよ」
「は!?無理だろ!!ぶっ殺されるわ!」
「大丈夫だって、」
こんなにくだらないことに誘ったのはお前だろ?
「まだまだ夜は長いんだから」
(たまには三人)
(馬鹿騒ぎしてみるのも)
(俺は嫌いじゃない)