*そして僕等の世界は染まる*

□七日目
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「最初はグー、じゃんけんポン!!」



ヒヅキの高らかな声と共に繰り出されたのは、向かって右からグー、グー、チョキ。

ようするに、だ。



「はい、今回の買出し係りはフタバに決定〜」


「ちっ、しゃーねぇなぁ…」



もう日も落ちて、だいぶ涼しくなってきた頃。

主にヒヅキによって、寮部屋は珍しく盛り上がっていた。

今夜はヒヅキの提案で、試験終了の打ち上げをすることになったのだ。

元より俺がそんなことを提案する訳がないし、フタバにもそんな発想はない。

それどころか無視して寝ようとしたフタバの耳元で、「打ち上げ〜打ち上げ〜」と恨みがましく囁いたことで、無事に執り行われることになってしまったのだ。



「だいたいこういうのは提案した奴が買ってくるもんだろ」


「セコイこと言うなよ〜。俺、今月ピンチなんだから!」


「だったら、んなことやるなっての…」



切って少し短くなった髪をかき上げて、フタバが毒づく。

と言いつつも結構ノリノリに見えるぞ。



「んじゃあ、お前何食いたい?」


「えっとねーとりあえずは腹に溜まるもの!

あとはケーキ!ホールのでかいやつ!」


「ふざけんな、だったらテメェで金払え。

適当に買ってくるから、準備しとけ」



存分に着崩した制服姿のまま、フタバがだるそうに出かける支度をする。



「あれ?俺にしか聞かねぇの?」



ヒヅキが不思議そうに俺を見る。

分かりやすすぎて、頭にハテナマークが見えるくらいだ。



「俺の好きなものくらい分かってるだろ」



今にも部屋から出そうになっている双葉に向かって投げかける。



「その割りにお前、利いたら聞いたメンドーだって『何でもいい』って答えるけどな」


「別に、お前みたいに好き嫌い激しくねぇし」


「るせ、じゃあ行ってくる」



バタンという音に「気をつけろよー」とヒヅキが投げかけた。

それを聞きながら俺は立ち上がる。



「早く準備するぞ。あいつ、買い物はやいから」


「あーなんかそんな感じするな」



うんうんと頷くヒヅキ。



「それにしても、お前ら相変わらずスゲェなぁ」


「は?」



端に寄せられた机を持ってきている俺に、ヒヅキがしみじみと言った。



「こーなんつーかさぁ、お互いのこと何でも分かってるよな」


「…気色悪ぃこと言うなよ」



毎度毎度、なんてことを言い出すんだ、コイツは。

お前の方がよっぽど恥ずかしいっての。

ほんと、今の台詞をフタバに聞かせてやりたかったよ。



「ヒヅキ、さっきのフタバにも言ってやれよ」


「は!?無理だろ!!ぶっ殺されるわ!」


「大丈夫だって、」



こんなにくだらないことに誘ったのはお前だろ?


「まだまだ夜は長いんだから」







(たまには三人)

(馬鹿騒ぎしてみるのも)

(俺は嫌いじゃない)

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