小説

□可愛い?どう?
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「見て見て!かわいいー?!」

そう叫びながら選手の集まるミーティングルームのようなところに
出てきた鳴。

見れば頭には、カツラをつけている。
短い白髪をすっぽり覆うそれは、薄茶色で肩の下くらいまでの長さ。

「何それ」
白河が言うと、
「仕送りにまぎれこんでた!」

どうやら鳴の家族のものらしい。
「で、どう?!似合ってる?!」
面白そうに話す鳴。
似合ってるっちゃ似合ってるけど・・・とカルロス。
お前童顔だからそんな大人っぽいのは、と付け足す。

イー、と歯を出す鳴。
そして思いついたかのように、
「じゃあ白河は?」
「は?」

白河だったら似合うんじゃない?と言って、そそくさとカツラを脱ぎ、
「はい!」と手渡す。
「いや、無理」
冷静に切り返されるが諦めない鳴。
「えええええ〜〜っいいいじゃんお願い!」
「イヤだ」
「むう・・・・あ」

鳴が視界に捉えたのは、面倒ごとに巻き込まれそうな気配を
感じ取って移動を開始していた樹。

「いーーーつきくーん」
「う!」
稲実に君臨するわがまま帝王のやたら甘ったるい声に恐る恐る振り返る。
おいでおいでをされ、しぶしぶそちらへ。

ごにょごよ、と耳打ちされ、ええっとわめく。
「い、イヤですよそんなの!」
「先輩命令ーーー」
「しょ、職権乱用!大体そんなことしたら俺が白河さんに・・・」
「ねえ樹」

急に冷めた目で見られてうっとなる。
「明日の練習は、ピッチング多めだったっけ・・・?」
「え゛?!」

その一言で何が言いたいのか分かってしまう自分に自己嫌悪した樹。
こ、この人は悪魔だ・・・・
でも

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