7thB.V

□あなたの明日の様子が楽しみ
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あなたの明日の様子が楽しみだな



「姉ちゃん何やってんの?」


レナの部屋の前を通りかかったフレディは、驚いていた。
少し開いていたドアの隙間から見えた部屋の中が、とんでもないことになっていたからだった。
突然入ってきたフレディに、レナはあたふたと周り集まった布や紙のカタマリを後ろに隠した。


「ダメじゃない。ちゃんと閉めておかないから、見つかっちゃったでしょ!」

「あぅ?」


影の赤い目が、不思議そうに瞬きした。
影はおそらくレナにつき合うことに飽きてしまったのだろう。色とりどりの布や紙の海に寝転がってコロコロと転がっていた。
怒られていることに全く気が付いていない影に、レナはふうとため息を付いた。


「見つかっちゃったんなら仕方ないよね! フレディにも手伝ってもらおう!!」

「はぁ!?」


レナは笑顔で布を差し出した。
赤に黒に紫……さまざまな色の布と紙。ほかにもレナの周りにはいろんな柄や色のものが広がっていた。きっと影が散らかしたのだろうなと、フレディは思った。
にしても、この大量な布と紙はどこから調達したのだろう。
村から少し行けば街に出るのだが、基本的に冥使の、しかも央魔であるレナが一人で出かけることは出来ない。許可を取れば別なのだが、その場合はフレディのところに連絡がくる為、すぐに分かる。しかし、そんな報告は来ていない。


「……姉ちゃん。まさか、村を抜け出してないだろうな」

「………」


そこで何故顔を背ける。
図星をつかれたのだろう、レナの顔はひきつっていた。
レナはおとなしそうな顔をしているが、時々思い切った行動に出ることがある。きっと、影に身代わりでもさせたのだろう。


「何でバレたの!?」

「あ、やっぱり?」

「ヒドい、誘導尋問なんて!! フレディまでアーウィンみたいなことしないでよ」

「いやいや、兄ちゃんじゃなくても姉ちゃんは分かりやすいからね!!」


年下なのに…と呟くのがフレディの耳に入った。
レナの方が年上なのに、やっぱり幼く見えてしまう。容姿もあるのだろうが、やっぱり純粋で疑うことのない無垢な性格の所為なのだろう。


「もう過ぎたことは気にしないわ! 私は今に生きているのよ!!」


レナは訳の分かるような、分からない主張をして、こぶしを握った。
影はレナのそばに転がって、首を傾げている。
なんだかおかしなこの状態に、フレディは怒るに怒れなくなっていた。


「はいはい。姉ちゃんの主張(?)は分かったから。で、これはどうしたらいいの?」

「そう!! そうよ、早くやらなきゃ間に合わなくなってしまうのよ」


レナから説明を受けたフレディは驚いた。
ハロウィンパーティーをして、みんな―主にアーウィンを驚かせようと、今から準備をしていたらしい。
それにしてもこの量は多すぎる気がしないでもない。
本当にレナは、とんでもないことを突然思いつく。
人間と央魔が冥使に「trick or treat」と言うのは、シュールというのか、かなりアレな気がする。


「……それ、本当にやるの?」

「どうして! 私、楽しみにしてたの。身体が良くなったら絶対やるって決めてたのよ!?」


すがるようなレナの目に勝てるわけもなく、フレディはレナを手伝うことになるのだった。


「さて、人数も増えたから一気にスピードを上げなきゃね!」

「……はいはい」


レナに渡された針と糸を受け取って、フレディは覗くんじゃなかったかなと少し後悔した。



「さぁ、あなたも遊んでないで手伝ってよね!」

「うー…はぁい」


寝転がっていた影にオレンジ色のフェルトを渡した。
この頃、影は本当に人間――冥使なのだからこの言い方は少し違うが、らしくなってきた。
最初は意志疎通すら難しかったのにと、レナと影が分裂した時のことをしみじみと思い出す。
こうして、レナと姉妹のように同じ作業をしているのを見ているのがとても微笑ましい。年上のレナに対して失礼なのだが、フレディは自分も作業を進めながらそう思った。


「……で、言われた通りに線のところ切ってるけど、これはいったい何なのさ?」

「それは……ないしょ!!」
「んー…っしょ」


ねーと顔を合わせるレナと影は文句なしに可愛い。
彼女たちの好きなようにさせてあげるのが一番だろうなと、フレディは黙々とはさみを動かすのだった。


「……兄ちゃんの顔が目に浮かぶわー」

「そうよね!! きっと喜んでくれるわ」

「……デスネー」


きっと思い浮かんだアーウィンの顔は違うものだが、楽しそうな予感は間違いない。
レナ達が来てから、日々の出来事が楽しくなってきた。こうして、季節の行事をやることも初めてな気がする。


「さて、やっと出来たわ」
「うー、、にゃ?」

「ねッ、姉ちゃん!?」


レナが影の頭に付けたのは、黒い尖った耳。
ついでに、にょろんと長く作ったしっぽらしきものを影に渡していた。


「可愛い! ね、フレディ!?」

「へ? あー…うん」


ちょうど四つん這いになっていた影は、いかにも猫っぽい仕草で首を傾げていた。
ぺろんと長く赤い舌が覗いていて、いかにも化け猫っぽい。


「そうねぇ……フレディには何になって貰おうかしら?」

「姉ちゃんは何になるんだよ?」

「……ひみつ!!」

「はぁ?」

「だって、フレディにも驚いて貰わなきゃ」


あ、そうですか、とフレディはハサミを動かすことにした。

ねこ耳としっぽが気に入ったらしい影は、部屋の中をくるくる回っている。

チクチクと針を動かすレナはとても楽しそうだった。

「ふふ…アーウィン、驚いてくれるかしら」

「驚いてくれるよ、きっと」



楽しいハロウィンパーティーは、あともう少し。





「……ところで、この部屋どう片付けるんだ?」


「………しーらない!!」




アーウィンにバレるのも、時間の問題な気がしてならないフレディだった。


Fin.


久々過ぎてドキドキです><
時期的にハロウィンモードで浮かれ気味につきwww



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