book2

□sweet chocolate
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yoru×ran







しんと静まり返った深夜。
空の布団の中でもぞもぞと這い出して隣を見た。裸で眠っている彼を、ゆさゆさと揺さぶって起こす。


「ねえ、よるぅ。夜ってば!!」


もうとっくに起きていることは分かっているのに、意地悪な彼はすぐには起きてくれない。
直のもう一人の人格のらんは、同じく空のもう一人の人格である夜を待っていた。らんとは違って、主人格である空よりも力の強い夜は、出てこようと思えばいつでも出てこられる。


「よるぅ……出てきてよ」


直の意識が落ちて、らんはやっと出てこられるようになった。早く夜に会いたくて仕方がないのに、いつだって夜は意地悪をする。
ひくひくとらんは嗚咽を漏らす。泣き始めてしまったらんをちらりと見た夜は、らんの細い腕を引っ張った。


「なに泣いてんだよ」


眦に溜まった涙を吸い取ると、夜はらんを腕の中に納めた。らんの身体にちらばった赤い印を、夜はじっと見つめる。


「やだぁ、恥ずかしいよ」

「ったく、空のやつ。俺のらんのことも考えて盛れってんだよ」

「ボクなら大丈夫だよ?」


ぎゅうっとらんは夜に抱きついた。夜はらんを抱きしめ返しながら考えた。
当然のことながら、夜もらんも二人で一つの身体を所有している。さっきまで空と直が交わっていたことで、直の身体には負担が掛かっているはず。その上らんと身体を繋げれば、負担はかなり大きいものとなる。


「ボク、大丈夫だよ。だから、よるぅ……」

「わかったよ」


夜は、らんの唇を塞いだ。すでにツンととがった赤い胸の飾りに手を伸ばす。ぴくんと細い身体が跳ねる。らんの薄い胸元には、たくさんの赤い印が散らばっていた。


「直は胸が弱いらしいな」

「やあ、ナオのことなんて、知らないもん」

「へー……さっきの空たちのエッチ、覗いてたんだろ?」


にやにやと夜は笑いながら、赤い痕を辿るように口付ける。日に焼けていない肌が、赤い痕を増やしていく。


「んっ……あぁッ!! の、のぞいて、なぁ…ッ!?」

「へえ……じゃあ、らんの弱いとこ、俺に教えてみな?」

「んっ、あぁ……やあ……ここぉ…」


夜に従順ならんは、おずおずと胸のあたりとさす。
夜は、かりっと胸の飾りを噛んだ。らんは身をくねらせた。赤みが増したそこを指で潰す。もう片方を口に含んで、吸い上げる。らんは、嬌声を上げて身をくねらせた。
潤んだ瞳が夜を見る。口角を上げた唇が、らんの耳もとで悪戯を告げた。

「いつもしてるように、一人でイってみな」

「やっ、よるの…いじ、わるぅ……」

「できるだろ、らん?」

小さく頷いたらんの頭を、夜はぽんぽんと撫でた。
らんはそっと自身に手を伸ばす。小さな手でそこを握って、そろそろと動かした。じっと見つめる夜に、らんは視線を迷わせる。見られていると思うと、手はなかなか動かない。


「ほら、もっと強くやンねぇとイけないだろ?」

「ん、んー…ッ、はぅ、よるぅ……」


らんの甘ったるい声に、夜はすっとらんのわき腹をなでる。しかし、夜はそれだけでらんを手伝おうとしない。弱い刺激は苦しさが増すだけで、ぽろぽろとらんの目から涙が零れる。夜は、にいと意地悪い笑みを浮べると空いているらんの手を取った。


「ほら、こうやって、こっちもいじればいいだろ?」


白くてふにふにとした双丘を開いて、窄まりにその手を持っていく。らんはふるふると首を振ると、手を引っ込めようとする。しかし、夜にとってはたいした抵抗にはならず、もうすでに解れているそこは、らんの指をぷつんと簡単に飲み込んだ。


「やっ!? やだぁ、よるっ、やぁ――ッ!!」


細い指をするりと飲み込んだそこは、物足りなさそうにひくひくと収縮する。ふるふるとらんは指を出そうとするが、夜がそれを否定した。


「らんなら出来るよな?」


らんは、ゆるゆると手を動かし始めた。らんの頭を撫でて、夜は先を促がす。
手を動かすたびにらんの表情が妖艶になっていった。見せ付けるように、くちゅくちゅと自身を扱く。薄く息づく窄まりには、一本では物足りなくなったのかすでに三本の指が出入りしていた。
びくびくと、らんの身体が痙攣する。ぱんぱんに膨らんだらんの自身は、あと少しで達しようとしていた。


「…はぅ、ああっ!! よ、るぅ…ん、あ……なっ!?」


夜は、らんの手ごと今にも破裂しそうなそこを握り締める。ぐるぐると熱が逆流したらんは、苦しそうに夜を見つめる。


「イクなら、一緒に行こうぜ?」

「よるぅ!!」


ぎゅうと抱きつてきたらんを、抱きしめ返すと夜はずんと腰を進めた。とろとろに溶けたそこが夜を包む。らんはきゅうきゅうと締め付けて、離そうとしない。


「あっ、ああ……よ、るぅ…ね、き、もち……いっ!?」


返事のかわりに、夜はらんに口付ける。汗ばんだお互いの肌が引っ付いた。もう既に限界を迎えたらんは、夜を満足させようと自分も腰を進める。ぱんぱんと肌のぶつかる音と、水音が部屋に響く。夜自信もそろそろ限界を迎えようとしていた。


「やっ! ボ、ク…も、ムリっ……よるっ、よるぅ!!」


握っていた手を離すと、らんは甲高い声をあげて白濁を流す。同時にらんの中がぎゅうぎゅうと夜を締め付けて、らんのそこに白濁を注いだ。






「ねえ、よる……今日はバレンタインなんだって」

「ふーん。っつても、もう日付変わってるけどな」


行為のあとの心地よい疲労感の中、ベッドの中で抱き合っていると突然らんはそう言った。
空を通してすべてを見ていた夜は、直のチョコを思い出す。手作りのそれは、少し歪で硬かった。だけれども、甘い物が得意ではない空のために少し苦めに作られたそれを空は喜んで食べていた。


「夜も、チョコ欲しい?」


こてんと首を傾げるらんに、夜は長い髪を撫でた。


「いや、俺はチョコなんていらないな。らんさえいればそれでいい」




抱きしめたらんは、チョコレートよりも甘く、夜を酔わせる。


らんは、ちょんと夜の唇に口付けた。




甘い味のそれは、チョコなんかよりもずっといい。











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