book3
□parallel distortion
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Side.K
小さい頃からずっと一緒で、面倒見が良くて。頭のいいキミによくテスト前は泣き付いていた。何かあると、すぐにキミの隣にくっ付いて。僕が何かヘマをすると「しょうがないな」と笑って助けてくれた。
ずっと、ずっと一緒にいられると幼い頃の僕は、そう思っていた。
『……アスラン』
『大丈夫だよ。ほんの少しの間、離れるだけ。また、すぐ会えるよ』
桜の木の下で泣いていた僕に、そう言って笑ってキミはトリィをくれた。
僕は「うん」と頷いて、キミに笑ってさよならを言えた。だって、キミはいつも正しくて、嘘をついたことがなかったから。
その言葉どおり、僕らは再会した。あの熱と硝煙と巻き上がる埃の中で。
「どうしてキミはそこにいるの? なんで、僕はここにいるの?」
いつの間にか敵になっていたキミに、どうして僕は引き金を向けているのだろうか。守らなければいけない友達と、キミとの違いはないはずなのに。
この船のなかに、コーディネーターは一人だけ。今、僕が戦っているのはコーディネーター達。
ナチュラルの地球軍と、コーディネーターのザフト。
とてもシンプルな構図の中に、僕だけが取り残されている。
「どうしたらいいのか、分からないんだ、アスラン」
迷いながら、キミの仲間を殺す。戦争なのだからと、割り切ってしまえば楽なのだけれど。たくさん殺しておきながら、考えるのはキミのことばかり。
もしかしたら、今日殺したパイロットはキミの友達だったかもしれないと。
だからと言って、ここを離れてしまったら、この船に戦力はなくなってしまう。知り合ってしまった多くの地球軍の人たちと、学校の友達が、どうなってしまうのかなんて、考えなくても分かる。
だから迷いながらでも、襲い掛かってくる相手を倒すしかないのだろう。
考えても考えても、出そうにないその答えは、誰に聞けばいいのだろうか。
「ねえ、おしえてよ……」
狭くて暗いこの卵の中のような場所で、僕はいつの間にか泣いていた。
平行線を進んでいると思っていた。
だけれども、いつしかそれは少しずつ角度を付けはじめて進み出す。