book2
□いじわる
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久々にBLCDの収録に、なんだかいつもとは違う疲労感があった。
主役の少年が、異世界に飛ばされて王子様と恋をする。敵国に捕まったり、売られそうになったりして最終的には王子様と幸せになるという、そんな話だった。
主役の少年を僕が演じて、相手役を子安さん、敵役が石田さんだった。
話的には、ハッピーエンドで良かったが、かなり激しいエッチシーンがいっぱいあった。アブノーマルな道具なんかも出てきたし、現実にはあり得ない設定もあって、気分が高揚しているようだった。
「今日はとっても良かったよ、保志くん。」
「ひゃッ……あ、ありがとうございます」
子安さんに肩を叩かれて、迂闊にも変な声を出してしまった。
子安さんは、目を丸くしてくすりと笑った。
「なに、もしかして、さっきので感じちゃった?」
「ち、違います!!」
「はははー。そんなムキになっちゃって。ホント、かわいいよねー」
あわあわと、首を振る。それを見て、よけいに相手はからかうようにほっぺたをつついてきた。
「顔、真っ赤にしちゃって」
「やめて下さ……」
最後まで言い切るうちに、左腕が思いっきり引っ張られた。身体が傾いて、トンと誰かにぶつかった。
「いい加減、やめてあげて下さい」
よく知っている匂いと、少し低めの声だった。
ちらりと見上げると、真っ黒な目が怒っているように感じられた。
「い、石田さん!?」
「相変わらずだねぇ。ハイハイ、ごめんねーからかいすぎました。じゃあね、保志くんまた!!」
「あ、子安さん!?」
機嫌が悪い雰囲気を感じ取ったのか、子安さんはさっさと出て行ってしまった。
おいて行かれた僕は、怒りのオーラ全開の石田さんが怖すぎて助けを求めるように、手を差し出したのだった。
「あ、それと。あんまり保志くんいじめるなよー」
ひょっこり顔だけ出した子安さんは、それだけ言い残して今度は本当に去っていった。
これがアニメだったら、確実に石田さんの額に浮かぶ血管がブチンと音を立てているだろうことが、何となく分かってしまった。
「こ、子安さんのバカぁああああ!!!」
* * * *
「ひゃ…ッン、いやぁ……や、だぁッ……!」
無機質で冷たい機械が身体の上を這い回る。熱を持って反応するそこには、いっさい触ってくれないでいた。
意地悪な手が、額に張り付いた僕の髪を払った。
「や、やぁッ、さわっ……てぇ…」
「だめ。触ったらお仕置きにならないでしょ」
にっこりと笑った“スフェーン”は、その楽しそうな声とは裏腹にとても怒っていた。
* * * *
あのあと、有無を言わさず石田さんのマンションに連れ込まれて現在に至っている。
無言のまま、ベッドの上に倒されてシャツを脱がされる。怒った石田さんは怖すぎて抵抗できないでいた。
石田さんの右手が近づいてくる。顔に触れそうになったとき、思わずびくりと目を瞑ってしまった。
ひんやりとした手が僕の頬に触れた。そろりと目を開けると、透き通るような黒の瞳がこちらを見つめていた。
「ごめ……ごめん、なさ…い」
「どうして謝ってるのか、分かってる?」
怒りの色を孕んだ瞳が、まっすぐに貫く。右手が頬から首、肩と降りていく。緊張した僕に触れる度に、身体が熱くなっていく。
石田さんの冷たい手が、胸の飾りを掠めた。
「あっ……ッ!!」
「……触ってないのに、もう勃ってるよ」
ピンと指で弾かれて、声が出た。普段より色づいたそこは、石田さんが言ったようにツンと起っていた。
恥ずかしさから顔を背けると、するりと手が下腹部に触れた。
びくりと身体が反応する。
「…やッ!? だめぇ!!」
スラックスの中入ってきた手は、勃ち上がったそこに触れた。恥ずかしいくらい反応していたそこは、すでに熱を持て余している。
「……濡れてるね」
いつもの優しい声とは違って、堅くて冷たい声は感情が感じられずに怖くなる。
「もしかして、僕が触る前から?」
「え……ちがッ!!」
するんと下もすべて脱がされたら、押し込められていた自身がピンと上を向いていた。触れられてもないのに、すでにてらてらと濡れている。先からあふれ出た精液が、自身を伝って茂みを濡らしていた。
「僕が触れなくてもイけそうだね」
「え? んっ……はぅッ!!」
突然固くて冷たい物がおへそあたりに当てられた。そしてそれは、ブーンと振動音をさせる。どこから取り出したのか、ピンク色をした小振りなバイブがそこを刺激していた。
「やッ!! やだッ……ぅうッ!!」
「結構激しい内容の収録だったからね……感じちゃった?」
「やぁ、ちがッ…ん…ッ!?」
おへそから、足の付け根のギリギリのところに当てられる。細かい振動がくすぐったい。知り尽くされた弱い箇所ばかりを刺激される。しかし、肝心なところにはいっさい触れようとしない。
「ねぇ、もしかして子安くんに触れられたから?」
「ちがッ……ちがうッ!!」
「だって、お仕事中に感じちゃうような淫乱な身体だからね」
「あぁッ!! やんッ……」
放って置かれていた乳首に突然バイブを強く押しつけられる。いきなりの刺激に身体が仰け反った。
「あぁ…あッ!? ヤッ、んんーッ!!」
びくびくと身体が痙攣を起こす。やめて欲しくて手を伸ばすが、すぐに捕らえられてしまった。
「こら、だめだよ」
「やぁ……」
置きっぱなしになっていたネクタイで、ひとまとめに手首を縛られた。クスリと石田さんが笑った。
「とっても良い格好だね“祐希”」
石田さんが呼んだは、今日演じた役柄の名前だった。敵国に捕まった祐希は、確かこんな風に悪戯される。
「やッ…やだ、放し……て!」
「どうして? “祐希”はこんなにも喜んでいるじゃないか」
くすくすと笑う声は石田さんの声なのに、全く違う声だった。役に―スフェーンになりきった声。
完全に反応した僕自身にはまったく触れてくれない。それどころか、バイブのスイッチを強に替えたのか振動が激しくなる。
「ひゃ……んッ!! 手、てぇほい、てッ…アッ…!?」
「簡単にイかせてあげないよ。これは、“祐希”が悪い子だからだ。好きでもない人でも感じてしまう……フフ、可愛いね」
あと少しの刺激があれば、射精できるのに胸の刺激だけではイけなくて、苦しさだけが増していく。身体を捩っても、足をばたばたしてもやめてくれない。腕は押さえられてしまっているから抵抗もできない。
熱が溜まって破裂しそうなのに、それもできない。
スクスクという笑うと、「そうだ」という楽しそうな声が聞こえた。
「胸だけで、イってみせて」
「ヤッ! は…ぅッ……ぁあっ! む、、りぃ…い……だ、さぁ…!!」
「そう、無理なんだ? じゃあ、手伝ってあげるよ」
ふっと、一瞬だけバイブが離れた。するりと左腕が下肢に伸びて、奥の窄まりに指が触れた。先走りがここまで垂れて濡れたそこは、まだ固く閉じていて、触れられたことでビクンと反応する。
「やだぁ、やだ…やだぁ、や…あッ……!!」
「嫌だじゃないでしょ? 好きでょ、こうされるの」
プツンと指の先がそこを押し開いた。先走りの液が潤滑油になったようだが、押し開いていく感覚が恐怖に変わる。するすると指が中を探る。しかし、すぐに指を引き抜かれて、目の前にピンクのころんとしたものが差し出された。
「いッ…、やぁ、やだ、やだ、やだぁ、いッ!!」
足をばたつかせるも、大した抵抗にならずに、ひんやりとしたローターが当てられ入れられた。
目に涙が溜まる。生理的な涙なのか、違うのか分からないがぼやけた視界では石田さんの顔は見えなかった。
ローターが中で動き出す。
「っや、あぁ……アッ、やぁ…ッ!!」
「おいしそうだね、このぐらいじゃ足りないと思うけどね」
まるで、違う人に犯されているようで怖い。声は石田さんの筈なのに、雰囲気がまるで違う。
バイブの音も近くで聞こえて、再び胸に当てられた。
「やだぁ!! やぁ…ッ!? いしだ、さ……いしだ…さッ!!」
身体をめちゃくちゃに動かして抵抗していた。縛られた腕も動かして、彼―スフェーンから逃れようと必死だった。
そして、何度も石田さんの名前を呼び続けた。
「保志くん!? 保志くん、ごめん。いじめすぎた」
「い…し、だ……さん?」
「うん。僕だよ」
「うぅ……いしださぁ、」
抱きつきたくて腕を伸ばす。まだネクタイで塞がれたままで抱きつけない。それに気が付いた石田さんは、そのまま僕を抱きしめた。
「ごめんね…怖かったね」
背中をそろそろと撫でられる。その手はとても優しくて、声もいつもの石田さんのものだった。それだけで、すごく安心する。
「ごめん…な、さい」
「もういいよ。僕も大人げなかったし」
よしよしと子供のように頭を撫でられた。なんだか子供扱いされているようで、むすっとした顔で石田さんを見る。
「ホント、保志くんは可愛いよね。あんまり僕を心配にさせないでよね」
「なんですかそれ……僕を可愛いなんていう人、石田さんぐらいしかいませんよ」
ハァ、となぜかため息を付かれる。確かに、鈴村くんとかそう言われてからかわれたことはあるけど。
「それより、早く取って下さい」
「ん? なにを?」
「こっ…これ、と手ですよ!!」
まだ中に収まったままのローターは、未だに動いたままで、ネクタイも解かれないまま。自分の下肢から伸びたピンクのコードをもろに見てしまいあわてて目を背ける。
「どうして?」
「どうしてって、石田さん!?」
にこりと笑う顔が怖い。どうして笑顔なのに、こんなに怖い顔ができるのだろう。
「まだ、お仕置きはすんでないよね?」
「へっ!? なななんでぇ!!」
ポンとそのまま後ろに押されると、石田さんが覆い被さってきた。目の前に満面の笑みを浮かべられて、背中がぞぞっと冷たくなった。
「もう少し、しっかり意識してもらわないとねぇ」
「えぇええー!?」
その後、こってりとお仕置きされて足腰起たなくなったのは言うまでもなく。次の日の現場にいた子安さんにからかわれ、謝られた。やっぱり、これからBL系の仕事は断ろうかと本気で思い出したきっかけかもしれない。
「石田くんさぁ、手加減って知ってる?」
「えぇ、もちろん知ってますよ」
今度から、彼を怒らせるのはやめようと心に決めた子安だった。
end...
長っ!!
むだに長くて、しかもエロいことしかしてない……
こんな感じで、BL系に出なくなったんなら仕方ないよねーみたいな?
じつは、初生ものです。
しかし、いつまでたっても保志さんって可愛いよね。