book2

□六花
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さむい冬。今年は特にその寒さは異常なほど。
しんしんと降り続ける雪は、街並みを白に変えていく。




*六花





暗くなった部屋の中で、キラは目を覚ました。窓の外では今夜も雪が降り続いているようで、雪の影がちらちらと見える。窓についた水滴がくもりをとって流れていった。
パジャマだけを着ていた身体が、寒さに震える。
部屋の中は、温度管理が出来ていて快適に過ごせるようになっているはずなのに寒い。包まっていた布団を手繰り寄せてみても、その寒さはなくならなかった。


「あす……」


隣の部屋から漏れる明かりに手を伸ばす。
今日中にやらなければならないことがあるからと、アスランは言っていた。
邪魔してはいけないからと、先に休むねとそう言ったのはついさっきのような気がする。

ぺたぺたと、フローリングを歩いてドアを開ける。かたかたとパソコンに向かう藍色は、よほど集中しているのか、キラには気付かなかった。
パソコンの灯りに照らされた横顔は、とても真剣で近づくのを躊躇わせる。
口を動かそうとするけれど、寒さで震えて声が出せないようにうまく開けることができなかった。
がたん、と風が窓にぶつかった。


「キラ?」


気が付いたら、藍色の髪に抱き着いていた。驚いたような翡翠の目がこちらを見る。


「…あす、ら、ん……ごめん。でも、少しだけ」

「キラ、こんな格好じゃ風邪引くよ」

「いいの、あったかいから」


ふっと息を付くのが聞こえた。邪魔をしているのは分かっているから、少しだけで良かった。気が済んだから、今度こそ邪魔しない。


「だーめ。せめて羽織るものぐらい着なさい」

「…なんか、お母さんみたい」

「キラが子供みたいなだけだよ」


まわされていた腕をほどいて、アスランはそばにあったひざ掛けを栗色の頭にかけた。不服そうな顔に、笑みをこぼす。


「で、どうしたの?」

「……、」


小さくて聞こえないと言うアスランに、寒いかったからとぽそりと告げた。翡翠の瞳が少し大きくなって、ふっと和らいだ。なんだかとても、顔が熱くなってきて下を向く。


「ふーん……そう」


キラが想像していたよりも、あっさりとした反応に思わず顔を上げた。今度は、紫の瞳が大きくなる。とても近くにあった翡翠がこっちを見て、ちょいとキラを抱きしめてそのまま隣の部屋まで運ばれた。すとんと、ベッドの上に下ろされて自分もその上に上がる。


「あの……アスラン?」

「もう目処はついたし、明日やればいいから、寝ようか」

「でも、カガリに言われてるんでしょ?」

「まあ、なんとかなるよ。それより、甘えん坊な誰かさんが一人で寝れないらしいからね」


にやにやと笑うアスランの胸元をぐっと押し返した。だけれども、それとは反対にぎゅっと抱きしめられる。じたばたと暴れてもその腕は溶けなくて、むしろ強くなる。ぴったりとくっついた胸元から、自分のではない鼓動が聞こえた。抵抗するのにも飽きてぴたりと静かにすると、それがもっと大きくなる。
キラよりも少し大きな手が、栗色の髪を撫でた。温かな感触が心地いい。昔から変わらないそのぬくもりがもっと欲しくて首筋に手を回した。


「どうした? いつもに増して甘えただな」

「いいの、だって寒いもん」


どさりと、屋根に積もった雪が下に落ちる。まだ雪はやみそうもない。


「ねえ、ちゅうして」

「はいはい」


寒い冬は少し苦手だけれども、寒さの所為にして少し素直になれた。

雪に感謝かもしれない。





end



寒いから、べたべたに甘えるキラがいたら良い。
てかいませんかねぇ……
寒いからこその糖度高めなのです。

しかしながら、このアスランは少し大人ですが、内心悶えてるに違いない!
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同じ題材で、書いてみようのアスキラバージョンです。他のところも覗いてみてください☆






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