book2
□ひなぎく
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「うん、そうだなぁ……でも、僕は……」
*ひなぎく
電話越しに聞こえるのは、キラの双子の姉―カガリの声。随分と長い事、キラは携帯で話し込んでいる。二人掛けのソファはそこまで広くなくてキラは、アスランに寄りかかっている。心地よい重みで、二人でいるときにはよくこうしている事が多い。
「へ!? うぅ……カガリはいいけど!!」
楽しそうに話すキラの顔。ころころと変わる表情を見ているのが楽しくて、眺めていたのだが、あまりにも放って置かれていて段々と面白くなくなってきた。
クスクスと笑うキラは、隣にいるのだがキラの心は今、カガリに向けられている。
「えー…うーん……」
キラの手が無意識に、アスランの膝に乗る。その手を持ち上げると、キラと目が合った。カガリの話を聞いたまま、「なに?」と首をかしげている。アスランはにこりと笑うと、キラの手の甲に口付けた。ちゅっという可愛らしい音が響く。
「ひゃッ…あ、ごめん…え、何?」
驚いた顔に気分をよくして、今度は掌に。そうすると、キラは急いで手を引っ込めてくるりと後ろを向いてしまった。ソファの端っこまでずりずりと下がって小さくなっている。
その様子に、アスランはクスリと口角を上げた。
「うん、うん…でもさ……」
まだカガリとの話は続いているようで、キラは相槌を打っている。
丸まった背中は、こちらに聞こえないようにしているように見えた。
栗色の後ろ髪から首筋がチラリと覗く。今度はそこに口付けると、ビクリと背中が揺れる。その反応が面白くて、きつくそこを吸うと綺麗に赤い痕が付く。首筋を辿って、うなじに掛かる髪を払う。日に焼けていないそこは白く、自然に口を寄せていた。
「ッ、はぅ……」
キラは声が漏れるのを押さえるように、口を押さえた。ふるふると携帯を持つ手が震えている。変なところで頑固なキラは、普通を装って相槌を打とうとしているようだった。
空いている耳元に、ふっと息を吹きかける。面白いぐらいにびくりと反応する。小さく形のよい耳を食んで、ぺろりと舐めた。
耳元が弱いことは、当然知ってやっていること。何度かそこに唇を寄せていると、我慢できなくなったのか、キラはさっと立ち上がった。アメジストのような目が少し潤んでいて、頬が紅葉している。その顔は睨んでいるようだが、ちっとも怖くはない。
耳に当てた携帯はそのまま。どこまで頑固なのだろうと、ふっと息を付いた。
同じように立ち上がったアスランに、キラはびくりと一歩下がって警戒している。まるで、追い詰められた子猫のよう。アスランの仕草一つ一つに反応している。
すっと手を差し出すと、ぎゅっと目を瞑る。しかし髪をポンポンと軽く撫でられただけだと分かると、おそるおそる目を開けた。
「あッ!?」
取り上げられた携帯を目で追ったキラは、アスランに抱きしめられていた。ぱちんと携帯が閉じられて、開いていた唇にアスランは口付ける。深く追い込むようなキス。頭を押さえつけられたキラは、苦しそうに息継ぎをしていた。
「はぁはぁッ……ひ、どっ……はぅッ――!?」
薄く開いた唇は、いつもより赤みが増していてとまらずにその唇を塞ぐ。そのままキラをソファに追いやって、抵抗するその腕をそこに縫い付けた。
「キスだけで感じた?」
足の付け根に割り込んだ膝が、かすかに熱を感じる。クスクスと笑うと、キラは悔しそうに顔を背けた。
「いじわる……」
「そう?」
耳元で、そっと囁いた言葉にキラは目を丸くした。恨めしそうにアスランを睨むと、ばたばたと暴れ出す。
カガリの電話が途中で切れたことは、気付いていた。嫉妬していることが面白くてわざとフリをしていることも。
「きみ、ほんと性質ワルイ!!」
「キラも相当だと思うよ」
ぷっくりと膨れた頬を突く。掴んでいた手首を離して抱きしめる。じっとキラを見つめていると、ふうと息を付いて背中に腕を回してきた。
「でも、本当にカガリに聞かれてたらどうするのさ」
「…カガリなら、乗り込んできそうだな」
キラ大好きのカガリなら、「私の可愛い弟に何をするんだー」と言いながら飛んでくるだろう。きっと、おまけでピンクの髪の彼女もやってくるに違いない。
「……それは……怖いな」
「へたれ」
「なんか、言ったか?」
「いや、何も!!」
きゅっと抱きついてくるキラにキスをする。さっきとは違って、優しいキス。
唇をそっと離すと、キラはえへへと笑った。
end
朝やっていた、「Kiss×キス×Kiss」というDVDからの妄想。ひたすらキスするいろんなシチュのDVDだそうです。突っ込みどころ満載で、ネタとしては最高ですよwww
束縛キスというのから、アスキラが出てきました☆
ちょっと子悪魔キラちゃんとそれを転がすアスラン……になってたらいいなー
ちなみに……
雛菊の花言葉:乙女の無邪気、無意識
花の見た目どおりの可愛い花言葉ですねぇ(*´`)