book2

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「大丈夫だから、ね。帰ろ」


綺麗な緑色の瞳がそう語りかけた。



 





それはとっても、ささいなこと。
母さんに怒られて、だけどそれを納得できなくて。
上手く伝えることも出来なくて、だから、勢いで家を飛び出した。



走って、走って、

がむしゃらに走ったら、知らないところまで来てしまっていた。


「ここ、どこ?」


知らない並木道と、知らない公園。


夕暮れ時の公園には、誰もいなかった。

オレンジ色に照らされた公園の遊具が、寂しそうに影を落とす。

揺ら揺らと揺れているブランコは、きっとさっきまで誰かが遊んでいたから。

そこに座って一人、そっとそっとブランコを漕いだ。


キーキーと揺れるブランコ。

影がだんだんと長く、濃くなっていく。



「あ、すらん……」


だんだんと、寂しくなって。
だけど、家には帰れなくて。

いつも一緒にいるトリィも、今日に限って家においてきてしまった。


ぽたり、ぽたり、と地面に落ちた雨粒は、あとからあとから流れてきて、止める事ができなくなった。


オレンジ色の光は、もうすっかりなくなって後は、深い青が来る。

アスランの髪の色みたいなその空に、余計に寂しさが膨らんだ。


……ィ、ト…リィ


「え……トリィ?」


かすかに聞こえたその鳴き声に、あたりを見回した。
ブランコから飛び降りて、小さな緑を探す。


「あ、トリィだ!!」


紺色の空に、翼を広げた緑の小鳥がこちらに向かって飛んでくる。
ぱたぱたと羽ばたかせて、ちょこんと頭の上に乗った。


「どうして?」

「探しに来たからに決まってるじゃないか」


僕の影が、二つに重なる。
空よりも明るい藍色がすぐそばにあった。


「あすらん……ッ」


さっきまで止まっていた涙がまた溢れてきて、僕はアスランに抱きついていた。
わんわん泣いて、泣きやむまでアスランはずっと背中を撫でてくれてた。

トリィはパタパタと羽ばたいて、空に飛んだ。


「心配したんだぞ。学校から帰ってきたら、キラがいないって……」

「だって!?」

「キラの母さんも、心配してた」

「…知らない」


飛んできたトリィをぎゅっと抱きしめて、座り込んだ。
本当はもう怒ってもいない。


「キラ、帰ろ?」

「……いや」


だけど、出て行ったのは僕だし帰りづらい。
こんなに反抗したことは初めてだし、どうやって母さんに謝っていいのか分からない。



「キラ、ほら」


差し出された手を取ろうとして、とまどって。

そうしていたら、アスランの手にぐっと捕まった。


「帰るよ」

「……うん」


歩き出した僕たちは、手を繋いだまま。
先を進むアスランの背中と、肩に止まったトリィ。


影は、僕らよりもずっと長く細くなっていて、その影よりも深い空がもうすぐやってくるところだった。



「……おなか、すいた」


「今日は、ハンバーグだって」








“怖がる君の手を握った、
僕の下心をきみは知らない”






end


幼少アスキラです☆
一度は書いておかなくてはね!!
いったいキラは、どこまで走ったんでしょうね……
きっと、コーディネータークオリティーwww

しかし、まさかの下心あり……このころからアスランはキラ一筋です(キリッ









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