「大丈夫だから、ね。帰ろ」
綺麗な緑色の瞳がそう語りかけた。
それはとっても、ささいなこと。
母さんに怒られて、だけどそれを納得できなくて。
上手く伝えることも出来なくて、だから、勢いで家を飛び出した。
走って、走って、
がむしゃらに走ったら、知らないところまで来てしまっていた。
「ここ、どこ?」
知らない並木道と、知らない公園。
夕暮れ時の公園には、誰もいなかった。
オレンジ色に照らされた公園の遊具が、寂しそうに影を落とす。
揺ら揺らと揺れているブランコは、きっとさっきまで誰かが遊んでいたから。
そこに座って一人、そっとそっとブランコを漕いだ。
キーキーと揺れるブランコ。
影がだんだんと長く、濃くなっていく。
「あ、すらん……」
だんだんと、寂しくなって。
だけど、家には帰れなくて。
いつも一緒にいるトリィも、今日に限って家においてきてしまった。
ぽたり、ぽたり、と地面に落ちた雨粒は、あとからあとから流れてきて、止める事ができなくなった。
オレンジ色の光は、もうすっかりなくなって後は、深い青が来る。
アスランの髪の色みたいなその空に、余計に寂しさが膨らんだ。
……ィ、ト…リィ
「え……トリィ?」
かすかに聞こえたその鳴き声に、あたりを見回した。
ブランコから飛び降りて、小さな緑を探す。
「あ、トリィだ!!」
紺色の空に、翼を広げた緑の小鳥がこちらに向かって飛んでくる。
ぱたぱたと羽ばたかせて、ちょこんと頭の上に乗った。
「どうして?」
「探しに来たからに決まってるじゃないか」
僕の影が、二つに重なる。
空よりも明るい藍色がすぐそばにあった。
「あすらん……ッ」
さっきまで止まっていた涙がまた溢れてきて、僕はアスランに抱きついていた。
わんわん泣いて、泣きやむまでアスランはずっと背中を撫でてくれてた。
トリィはパタパタと羽ばたいて、空に飛んだ。
「心配したんだぞ。学校から帰ってきたら、キラがいないって……」
「だって!?」
「キラの母さんも、心配してた」
「…知らない」
飛んできたトリィをぎゅっと抱きしめて、座り込んだ。
本当はもう怒ってもいない。
「キラ、帰ろ?」
「……いや」
だけど、出て行ったのは僕だし帰りづらい。
こんなに反抗したことは初めてだし、どうやって母さんに謝っていいのか分からない。
「キラ、ほら」
差し出された手を取ろうとして、とまどって。
そうしていたら、アスランの手にぐっと捕まった。
「帰るよ」
「……うん」
歩き出した僕たちは、手を繋いだまま。
先を進むアスランの背中と、肩に止まったトリィ。
影は、僕らよりもずっと長く細くなっていて、その影よりも深い空がもうすぐやってくるところだった。
「……おなか、すいた」
「今日は、ハンバーグだって」
“怖がる君の手を握った、
僕の下心をきみは知らない”
end
幼少アスキラです☆
一度は書いておかなくてはね!!
いったいキラは、どこまで走ったんでしょうね……
きっと、コーディネータークオリティーwww
しかし、まさかの下心あり……このころからアスランはキラ一筋です(キリッ