book2

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二人そろっての居残り。

悪いのは僕で、アスランはまったく悪くない。宿題を忘れて、しかもその宿題は合同課題だったから、一緒にアスランまでとばっちりを受けてしまった。


「キラ、もう出来たか?」

「ごめん、あと少し」


先生が僕たちに言い渡さしたのは、プリントが10枚。
お手製の問題を解いて、提出すること。

最初は、10枚ぐらいなら余裕だろうと踏んでいたのだけれど、一筋縄では行かない問題ばかりで、かなり手こずっていた。
ご丁寧に、問題は二人とも違う。

優秀なアスランは、とっくに終わってしまっているけれど、まだあと2枚と半分残っている。僕だって頭は悪いほうではないけれど、スバ抜けた頭脳の持ち主には到底敵わない。
都内でも有名な進学校の、しかも選抜のクラスなのだから余計に厳しいのは仕方がないけれど。
それにしても、この量を放課後に残ってやらされるのは如何なものなのだろう。


「あ、そこ間違ってる」

「え、うそぉ!?」


複雑な数式の最初のあたりでケアレスミスをしていたみたいで、ぐるぐると分からなくなっていたらしい。
ゴシゴシと、消しゴムで消したら、ビリっと紙が破けた。


「あーもう、いやだ!!」

「文句言わない。忘れたのはキラだろ?」

「うぅ……でも、もうこんな暗くなってる」

「……そうだな」


いくら春になったとはいえ、7時を過ぎれば外は暗くなる。
もうすっかり誰もいなくなった教室は、僕とアスランの二人っきりだった。
校庭の運動部員たちの声も聞こえなくなったから、きっと校舎にはあまり人は残っていないだろう。


「お腹すいた……」

「分かった、なんか買ってくる」

「ありがと!!」


全寮制のこの学校は、校舎と寮が近いため購買もかなり遅くまでやっている。
調子に乗って、リクエストしたら頭を叩かれた。べつに、奢ってもらう訳じゃないからいいじゃないか。


一人きりになった教室。

しん、と静まり返った教室は、電気がついているのに少し暗く感じる。春になったとはいえ、まだ寒さも残っていて7時を過ぎて消えた空調の所為で肌寒い。


「あーあ……最悪」


終わらない課題と、呆れた彼の顔が脳裏に過ぎる。

ただの幼馴染で、エスカレーター式だから当然のように同じ学校になったのだけれども、優秀すぎるアスランにとって、僕はお荷物でしかない。

机に顔を伏せて、アスランの席を見る。
右斜め前のその席からいつも見える、藍色の髪と翡翠色の真剣な瞳。
いつからか、並んでいたのがそんな風に変わっていった。


「いつまで、一緒にいれるかな」


この席からなら、横顔が見えるけれど、きっともうすぐ見えなくなって、遠くの方へいってしまう。


「それは……いやだな」

「だったら、早く終わらせろよ」

「あ、アスラン」


頭の上に置かれたお菓子の袋。
今はまっている出たばかりの新作そのお菓子。
と、もう一つは紙パックのコーヒー牛乳。


「ほら、それ食べて頑張れ。あと少しなんだろ?」


手渡されたそのお菓子。
冷たいアスランの手。



離れていくその手を捕まえて、頬に当てた。


「うん、ありがと」

「子供体温」

「うるさい!!」


冷たかった手が、僕の熱を奪っていった。








“放課後の教室は少し寒くて、



きみの手はこんなにも温かい。”






End


現パロ学生アスランは、すこしぶっきらぼうだけどキラの面倒はきっちり見ます。
ていうより、ほかを寄せ付けない感じです。
ちなみに、キラは学年10位には入ると思います。そのときの気分で10位内うろちょろしてる感じ。
パロいいですね。またやりたい








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