book2

□あまいモノにはご用心
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「おまっ、まさか忘れてたんじゃないだろうな!?」

「あぁああああああ!!?」


真一郎の言葉に、空は絶叫した。






*あまいモノにはご用心?








いつものように探偵の仕事を終えた空は、報告のためにボスである真一郎の事務所に足を運んだ。今日の仕事は直とは別々で、直は七海からの仕事に出ているところ。事務所には、いつもどおりの笑顔で、七海が迎えてくれた。


「空くん、お疲れ様。ちょうど、私たちも休憩しようとしてたところなんですよ。一緒にお茶でも如何です?」

「サンキュ、七海ちゃん。お、今日はイチゴ大福か」


美味しそうなイチゴ大福と、七海の入れたお茶が並ぶ。ふんわりと、お茶のいい香りが漂う。箱の中に入っていたイチゴ大福に、まっさきに手を伸ばした真一郎はひょいとそれを口に入れた。あ、と声を上げた空も慌てて自分の分を確保する。
あまりあまいものは得意ではないのだが、このイチゴ大福は甘さ控えめで空も真一郎も競うように手を伸ばす。


「ちょ、兄ちゃん!? それ、2個目だろ!!」

「あー? 早いもの勝ちだろー? ななー。俺にもお茶」

「まったく、子供なんだから。はいはい」


二つ目のイチゴ大福を食べ終えた真一郎に、ぺしんと七海はつんつんと髪がはねた頭を叩く。昔から変わらないその様子に空はくすりと笑った。


「なんか、こういうのいいよなー」

「どうした空?」

「いや、なんかへいわーって感じで」


空の言葉に、真一郎はぐりぐりと空の頭を撫でた。あの日から随分とはいえ、きっと一生忘れる事はできない。それだけのことがあの2年間にあったのだから。
とんと、真一郎の前に湯のみが置かれた。ゆらゆらと湯気が立つ。真一郎の隣に七海は座った。


「おー。そういや、もうすぐ空と直の誕生日だったよな」

「そうだね。今年は何をしようか。羽柴くんは何か考えてまいすか?」

「……あ」


七海の入れたお茶に手を伸ばそうとした空の動きがぴたりと止まった。まさかと言った感じで、真一郎は空を見つめる。七海は七海で、にこにことその様子を見ていた。


「まさか、お前……」

「あぁああああああ!!? どーしよ、やべぇなんにも考えてなかった!?」

「まあ、最近忙しかったですからねぇ」


わたわたと慌て出した空に、七海はのほほんと返した。
事実、最近はとても忙しかった。大きな山も一件抱えていて、それがちょうどひと段落付いたのも2、3日前のこと。真一郎たちもばたばたと慌しく駆けずり回っていたのだ。


「にしてもよー。恋人の誕生日忘れる奴があるかぁ?」

「空くんなら、ありえますよ」

「まあ、そうだな」


はははーと暢気に笑う二人とは裏腹に、空はとても焦っていた。
まだ日にちがあるとはいえ大学の講義とバイト、それに探偵の仕事もあるため、差し引きすると、実際に動ける日はほとんど残っていない。


「まあ、頑張れ」

「ふふ。私たちは私たちで、直くんをお祝いしますからね。もちろん、空くんも」







* * *






事務所を出た空は、歩きながら直のことを考えていた。
忙しかったとはいえ、大切な日を忘れていた事に罪悪感が募る。あんな事があったためもあるが、誕生日には特別な思いもあった。
直がいたから今の自分があるのだと、思っている。あの研究室でも、相沢との対決も直がいなければ絶対に今ここに存在している事は出来なかっただろう。


「どーすっかなー」

(また、チューリップでも持ってくか?)

「なっ、夜!?」


空のもう一人の人格の夜は、空の中でにやりと笑っていた。
まだ付き合ってもなかったあの時、空は散々悩んだあげく、赤いチューリップの花束を直に渡した。高校生の当時、まだ自由になるお金もなく、ぎりぎりになってそれを選んだのだった。しかも、知らずに選んだその花の花言葉をあとから聞いて、さんざん皆にからかわれたのだ。
空の贈った赤いチューリップの花言葉は、愛の告白。


「あれは、知らなかったからだっつうの!!」

(いいじゃん。直も喜んでたしよ)

「絶対い……」


嫌だとつづけようとして、空は立ち止まった。思い浮かんだその考えに、夜はへーと興味深そうに腕組みをする。


(いいじゃん。お前しいっつうか)


驚く直の姿を想像して、よしと空は気合を入れる。
直の誕生日まで、あと4日。


「あ、羽柴」

「お、おまえも仕事おわったんか」


直の頭をぐりぐりと撫でる。鬱陶しそうに直は手を払ったが、空はとても嬉しそうだった。
首を傾げる直を思わず抱きしめる。


「外で何すんだ、バカぁああああ!!」


見事な右ストレートが決まった。



大切な人の誕生日。


あなたなら、どう祝いますか?







つづく?





 
というわけで、直の誕生日記念小説です。
空と直にとって、誕生日はとても大切な日だと思います。そんな感じになっ……てないですねー
一応、直の誕生日の日に続きを上げる予定です。
空はどんな誕生日を祝うんでしょうねぇ……お楽しみに☆

とか良いながら、アップできなかったらすみません←←←





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