book2

□dans le printemps
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薄紅色の花弁が、ひらひらと舞い落ちる。




*dans le printemps




「あ……」


てのひらに乗ったその花弁は、ふわりと風に舞い上がった。紫色の瞳がそれを追う。花弁はするりと風に乗って、足元に落ちた。


「どうした?」


翡翠色の瞳の足元に落ちた花弁が、また風に運ばれた。青空には、薄紅色の枝がたくさんあって、きらきらとした光が降り注ぐ。


「ん? なんでもないよ」


小さな子供たちがぱたぱたと通り過ぎた。若葉色の帽子が、きゃははと笑う。楽しそうな声が、風に靡いて遠ざかる。


「ねえ、手」


手を差し出す。翡翠色の目が、仕方ないなと笑った。
手は少し冷たい。


「今日なに食べたい?」


手の体温がほどよくなって、やがて温かくなる。絡んだ指に力を込めると、それにこたえが返ってきた。


「キラは?」

「そうだなあ……」


白い雲がゆったりと流れる。
まだ少し寒い風に、ぴたりと引っ付く。


「なんでもいいよ」

「なんだそれ」

「じゃあ、……」



さわさわと枝が騒いで、一面が薄紅色に染まった。





end



河津桜が咲いたそうですねー
まだ、桜の時期ではありませんが、春といえば桜、桜といえばアスキラということで☆
梅も好きですよ。
ですが、住んでいるところが桜の町ということもあって、圧倒的に桜のほうが身近です。
川沿いに枝垂桜が咲くのは綺麗ですよ。

情景描写って、難しい……春の感じは伝わりましたか?

Dans le printemps=春に(仏)












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