book2

□菜種梅雨
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たまにはこんなのもいいんじゃない?






*菜種梅雨






のんびりとした昼下がり、今日は珍しく用事もなく二人揃って休みが出来た。しかも、唐突に出来てしまった休みの所為で、特に予定もない。どこかに出かけようにも、生憎の雨では外に出ようという気もなくなってしまう。
キラはソファで寝そべりながら、外を見た。窓から見える空は、どんよりとしていて雨脚は相変わらず変わることもない。


「あめー、雨だー」

「ああ」


そのすぐ下で座りながら、機械をいじっていたアスランは相槌を打った。アスランの手元には、よく分からないパーツがいっぱいあって、なにやらコードに繋がっている。


「ねえ、おもしろい?」

「まあ、な」

「ふーん」


テレビはあまり面白番組もなく、チャンネルを変えても代わり映えはしない。適当に選んで持ってきた本は、前に読んだものだったから内容は知っている。ぱたんと本を閉じて、ソファの肘掛にとまっていたトリィを突く。トリィはこてんと、可愛らしく首を傾げた。


「トリィ、トリィ」


ちょん、ちょん、と近寄ったトリィはキラの指を突く。ごろごろと雷が鳴り出した。ぴかぴかと稲妻が走って、窓が明るくなる。


「落ちたりしてー」


ぱたぱたとトリィは羽を動かす。なんとなく「やめて」と言っているように見えて、キラは緑の丸い頭を撫でる。機械でプログラムされたはずなのに、ときどき本物の鳥のように見えてくる。


「トリィ! トリィ!!」


くるんと、トリィはアスランのほうを見た。アスランは相変わらず、もくもくと何かを組み立てていて、こちらを見ようとはしない。ちょこちょこと跳ねたトリィが頭にとまっても、まったく気付いていない。じっとアスランを見ていたキラは、だらんとアスランの肩に腕を伸ばす。ぴたりとアスランの動きが止まった。


「なに?」

「んー、べつにぃ」


キラはそのまま首筋に腕を回した。ひょいと飛び上がったトリィは、くるりと天井を一周してテーブルにとまる。藍色の髪がソファにも広がった。


「苦しいんだけど」


キラは首筋に顔を近づけておぶさるみたいにもたれ掛かる。視界に鎖骨が入って、なんとなく舐めてみたくなった。ぺろりと舐める。アスランはなにも言わない。今度はかぷりと噛み付いた。


「ちょ、コラ」


アスランの手が伸びて、キラの頭に乗る。わしゃわしゃと髪を掻き混ぜられて、キラは口を離した。鎖骨に薄く歯型がつく。


「キラ、ネコみたい」

「にゃー」


鳴いてみたら笑われた。ノートパソコンの上にとまっていたトリィも、タイミングよく首を傾げている。面白くなくてアスランの顔を覗き込む。


「なに?」

「べつにー」


アスランは作業用にかけていた眼鏡の所為で、見慣れている顔となんとなく違って見えた。眼鏡越しに翡翠の目がキラを見る。口元がなんとなく緩んでいて、ぺしんと額を叩く。


「痛いじゃないか」

「うそつき」

「嘘つきはキラだろ?」


身体を起こしたアスランは、寝そべったキラのとなりに座る。もそもそとキラは起き上がって、アスランとは反対の隅に小さく膝を抱えた。ひょいとトリィはキラの肩にとまる。


「トリィ―」

「なにトリィ?」

「トリィは素直だな」

「ちょ、重い」


アスランはキラにもたれ掛かると、ぎゅうと抱きしめる。
ちょん、ちょんとキラの肩を渡ったトリィは、キラの頭の上にとまった。こてんと首を傾げて、羽を広げて飛び上がる。
アスランはキラがしたように首筋を舐めると、そこにキスマークを付けた。


「あ、雨がやんだぞ」


いつのまにか、雨はすっかりやんでいた。まだ空はどんよりとしているが、じきに雲も晴れるかもしれない。


「どこかに行く?」

「……アイスが食べたい」

「分かった」





まあ、たまにはいいかもしれない。





End



収集つかないよね。

じゃれあうアスキラが書きたかっただけです。というか、構ってほしいキラが書きたかった?
キラはネコっぽい感じが好きです。アスランは大型犬っぽい。


菜種梅雨=3、4月ごろのぐずつく時期のこと。









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