Happy birthday to you
Happy birthday to you
Happy birthday dear……
その先の名前は、呼ばれた番号によってかき消された。
*生まれてくれて、
「……はしば、」
隣に寝ている空を見る。幸せそうに寝ている顔を見ると、何だか心が軽くなる。
今しがた見た夢は、あまりにも悲しすぎた。幼い頃の記憶は、ときどき扉から零れ落ちる。普段は、しっかりと鍵をかけているはずなのに、ふとした瞬間に、そのもろく壊れやすい鍵は壊れて扉が開いてしまうのだ。
時計は丁度、12時を指していた。
「あした、誕生日だね」
夢の中の自分は、泣きながらHappy birthdayを口ずさんでいた。
暗くて、冷たいあの中で、消えた光を探しながら。
誕生日が過ぎるたびに、空は自分が知らない時間を刻んでいく。
今頃だれとお祝いしてるのかな。
プレゼントは何をもらうのかな。
想像しながら涙する。
どうしてそこに、自分はいないの。
ぱたり、ぱたりと、知らないうちに直は涙を溢していた。
今が幸せすぎるから、過去の自分がとても悲しい。
「んー、どうした?」
「あ……」
涙が拭われる。眠そうな目で、空がこちらを見ていた。
欠伸をすると、抱きしめられる。あたたかい。
「泣いてたのか?」
よしよしと、背中を撫でられて、布団に引きずり込まれた。
温められたそこはとても心地良い。ごそごそと動いて、ぴたりと空にくっ付いた。
「くーちゃん」
「んー?」
「……なんでもない」
おめでとう。のその言葉はまだ早いけれど、誰よりも早く言いたい。
おたんじょうび、おめでとう。
ここにいてくれて、ありがとう。
End
暗ッ……
いや、でもなんとなく、これは思うのです。
だからこそ、直ちゃん幸せになってねぇええええええ!!!
これ、空誕なんだけど、いいんかね?