book2

□生まれてくれて、
1ページ/1ページ










Happy birthday to you

Happy birthday to you

Happy birthday dear……







その先の名前は、呼ばれた番号によってかき消された。







*生まれてくれて、






「……はしば、」


隣に寝ている空を見る。幸せそうに寝ている顔を見ると、何だか心が軽くなる。
今しがた見た夢は、あまりにも悲しすぎた。幼い頃の記憶は、ときどき扉から零れ落ちる。普段は、しっかりと鍵をかけているはずなのに、ふとした瞬間に、そのもろく壊れやすい鍵は壊れて扉が開いてしまうのだ。
時計は丁度、12時を指していた。


「あした、誕生日だね」


夢の中の自分は、泣きながらHappy birthdayを口ずさんでいた。
暗くて、冷たいあの中で、消えた光を探しながら。
誕生日が過ぎるたびに、空は自分が知らない時間を刻んでいく。


今頃だれとお祝いしてるのかな。

プレゼントは何をもらうのかな。


想像しながら涙する。


どうしてそこに、自分はいないの。



ぱたり、ぱたりと、知らないうちに直は涙を溢していた。
今が幸せすぎるから、過去の自分がとても悲しい。


「んー、どうした?」

「あ……」


涙が拭われる。眠そうな目で、空がこちらを見ていた。
欠伸をすると、抱きしめられる。あたたかい。


「泣いてたのか?」


よしよしと、背中を撫でられて、布団に引きずり込まれた。
温められたそこはとても心地良い。ごそごそと動いて、ぴたりと空にくっ付いた。


「くーちゃん」

「んー?」

「……なんでもない」


おめでとう。のその言葉はまだ早いけれど、誰よりも早く言いたい。




おたんじょうび、おめでとう。

ここにいてくれて、ありがとう。





End



暗ッ……

いや、でもなんとなく、これは思うのです。
だからこそ、直ちゃん幸せになってねぇええええええ!!!

これ、空誕なんだけど、いいんかね?









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ