book2
□ありがとう。
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たくさんのプレゼントと、たくさんの気持ち。
ぜんぶ、ぜんぶ、あげたい。
ありがとう。
「はあ、もー食えねぇ」
バタンと、空はベッドの上に倒れこんだ。
空の誕生日会が終わって、部屋に帰ってきた。
終わったら、問答無用で空と直は追い出されて、今にいたる。気を利かせた真一郎の計らいだったのだが、別れ際に顔がニヤついていたのが気に掛かる。
「羽柴、貰ったプレゼントおきっぱなし」
「えー。明日でいいじゃん」
「ちょ、はしば!?」
直に手を伸ばして、ベッドに引きずり込んだ。ぎしりとスプリングに重みが掛かる。
「なあ、あの指輪は?」
「……ここ」
指に嵌めるのは恥ずかしいからと、直は皮ひもを通して首にかけていた。
直の手から空はリングを取る。赤く輝いたルビーに口を付けた。
直にぴったりのこの色とおそろいの指輪が今は空の手の中にある。誕生日の近い直とは、誕生石も同じ。アクアマリンの石が入った指輪。直のものよりも、少しリングの幅を太くして作ってある。
実は一つだけ、二つのリングに細工をした。きっと、言われなければ分からない細工。
裏側に刻まれたハート。
「お酒くさい」
「いいじゃねぇかよー」
ぎゅうと直を抱きしめる。折れそうなほど細い身体は、ほんのりと温かい。
最近ようやく戻ってきているが、細いのには変わりない。相沢のところでどんな生活をしていたのか、それはまだ聞く事が出来ていない。
「はしば、いたい」
「あ、すまん」
いつの間にか力が入っていたらしい。力を緩めると、もぞもぞと動いて直は空と視線を合わせた。大きな目がせわしなく左右に動いている。
「……なんだよ」
「はしば……あの」
開いた唇に空は吸い寄せられるように唇を合わせた。言葉を飲み込んだ直の舌を絡め取る。甘い舌を吸うと、びくんと小さな身体が震えた。
おずおずと直は答えるように、空の背中に手を回す。
シャツを掴んでくる手が、愛おしい。
本当は誰にも触れさせたくなくて、閉じ込めておきたい。
だけれども、それでは誰かと同じになってしまう。
苦しそうに眉根を寄せる顔を見て、空は唇を離した。赤みが増した唇がてらてらと光って、端から蜜をこぼす。
熱い吐息と潤んだ瞳。その全部が欲しくなる。
もう一度と顔を近づけると、小さめの手が間に挟まった。
赤らんだ顔が口を開く。
「はしば……、あげるから……おれの、ぜんぶ……だから」
唇が重なった。触れるだけのキスはすぐに離れていく。直は空の首に抱きついた。
温かくて、強くて、優しい。
「だから……はしばを、おれに……ちょうだい?」
甘すぎる言葉に、言葉を紡げなくなる。
抱きしめ返すと、びくりと直の肩が揺れた。早くなった鼓動が重なる。
可愛らしすぎるそのプロポーズは、今日一番のプレゼントになった。
「ああ、やるよ。俺のぜんぶ……ナオに」
今度こそ、
だれも間違えることなく
しあわせをくれて、ありがとう。
二つのリングを重ねると、出来上がるクローバ。
それに気付いた時、ナオは何と言うだろう。
End
HAPPY BIRTHDAY 空くん!!
なんとか、間に合いましたかね?
直さんは空に何をあげたんでしょうかねー……思いつかなかったので、書きませんでした←
何気なく、直誕と繋がってます。
リング、わかりにくいですよねーι
どう文章に書いていいのか、ものすごく悩みましたが……これが限界orz
そして、一回もナオにおめでとうと言わせていないことに気が付いた……
何はともあれ、おめでとう!!
直といつまでも幸せにね☆