book2

□ありがとう。
1ページ/1ページ







たくさんのプレゼントと、たくさんの気持ち。


ぜんぶ、ぜんぶ、あげたい。







ありがとう。








「はあ、もー食えねぇ」


バタンと、空はベッドの上に倒れこんだ。
空の誕生日会が終わって、部屋に帰ってきた。
終わったら、問答無用で空と直は追い出されて、今にいたる。気を利かせた真一郎の計らいだったのだが、別れ際に顔がニヤついていたのが気に掛かる。


「羽柴、貰ったプレゼントおきっぱなし」

「えー。明日でいいじゃん」

「ちょ、はしば!?」


直に手を伸ばして、ベッドに引きずり込んだ。ぎしりとスプリングに重みが掛かる。


「なあ、あの指輪は?」

「……ここ」


指に嵌めるのは恥ずかしいからと、直は皮ひもを通して首にかけていた。
直の手から空はリングを取る。赤く輝いたルビーに口を付けた。

直にぴったりのこの色とおそろいの指輪が今は空の手の中にある。誕生日の近い直とは、誕生石も同じ。アクアマリンの石が入った指輪。直のものよりも、少しリングの幅を太くして作ってある。

実は一つだけ、二つのリングに細工をした。きっと、言われなければ分からない細工。
裏側に刻まれたハート。


「お酒くさい」

「いいじゃねぇかよー」


ぎゅうと直を抱きしめる。折れそうなほど細い身体は、ほんのりと温かい。
最近ようやく戻ってきているが、細いのには変わりない。相沢のところでどんな生活をしていたのか、それはまだ聞く事が出来ていない。


「はしば、いたい」

「あ、すまん」


いつの間にか力が入っていたらしい。力を緩めると、もぞもぞと動いて直は空と視線を合わせた。大きな目がせわしなく左右に動いている。


「……なんだよ」

「はしば……あの」


開いた唇に空は吸い寄せられるように唇を合わせた。言葉を飲み込んだ直の舌を絡め取る。甘い舌を吸うと、びくんと小さな身体が震えた。
おずおずと直は答えるように、空の背中に手を回す。


シャツを掴んでくる手が、愛おしい。
本当は誰にも触れさせたくなくて、閉じ込めておきたい。
だけれども、それでは誰かと同じになってしまう。
苦しそうに眉根を寄せる顔を見て、空は唇を離した。赤みが増した唇がてらてらと光って、端から蜜をこぼす。
熱い吐息と潤んだ瞳。その全部が欲しくなる。
もう一度と顔を近づけると、小さめの手が間に挟まった。
赤らんだ顔が口を開く。


「はしば……、あげるから……おれの、ぜんぶ……だから」


唇が重なった。触れるだけのキスはすぐに離れていく。直は空の首に抱きついた。
温かくて、強くて、優しい。


「だから……はしばを、おれに……ちょうだい?」


甘すぎる言葉に、言葉を紡げなくなる。
抱きしめ返すと、びくりと直の肩が揺れた。早くなった鼓動が重なる。


可愛らしすぎるそのプロポーズは、今日一番のプレゼントになった。




「ああ、やるよ。俺のぜんぶ……ナオに」




今度こそ、


だれも間違えることなく


しあわせをくれて、ありがとう。





二つのリングを重ねると、出来上がるクローバ。



それに気付いた時、ナオは何と言うだろう。






End


HAPPY BIRTHDAY 空くん!!

なんとか、間に合いましたかね?
直さんは空に何をあげたんでしょうかねー……思いつかなかったので、書きませんでした←

何気なく、直誕と繋がってます。
リング、わかりにくいですよねーι
どう文章に書いていいのか、ものすごく悩みましたが……これが限界orz
そして、一回もナオにおめでとうと言わせていないことに気が付いた……

何はともあれ、おめでとう!!
直といつまでも幸せにね☆









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ