book2

□真昼の騒動
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「ぬあ!?」

思わず変な声をあげてしまったじゃないか!!



*真昼の騒動







なぜか、廊下が騒がしい。いつもはこんなにも人が行きかう事はないはずなのに。バタバタと走り回る音が聞こえる。執務室で仕事をしていたキラは、パソコンから目を放した。
穏やかな昼下がりのはずなのに。


「何かあったのかな?」


いい加減、終わらない仕事の量に飽きてきたところ。立ち上がって大きく伸びをして、キラはひょっこりと扉から顔を出した。


「何かあったんですか?」

「こ、これは、キラ様!? 申し訳ありません、キラ様が気にする事もないのですが……」


部屋の外に控えていた警護役は、申し訳なさそうにしていた。“キラ様”と呼ばれることはいまだに慣れないのだけれども、カガリには「慣れろ」と一喝されただけ。


「実は、侵入者があったようで…」

「そう、なんだ……」


政府の重鎮ばかりのこの屋敷は、警備もかなりしっかりとしている。特に、キラやカガリがいるこのエリアは、その中でも重要に警護されていた。その警備の中を潜り込むとは、かなり手練かバカかどちらか。


「キラ様が心配することはありませんよ。ただ、念のためこの部屋から出ないで下さい」

「はい、分かりました」


抜け出す口実が出来そうだったのに。
ちっと心の中で舌打ちして、キラは扉を閉めた。
一応、護身術の類は身に着けているし、相手がコーディネーターであったとしても、それなりに倒す自信はある。だけれども、後で罰せられるのは扉の外の警護役になる。例のあの一件から、期限付きでカガリから勝手に抜け出せないようにと、警備を付けられてしまっただけで、あの人には罪はない。


「大人しく、仕事するか」


別に軟禁されているわけでもないのだし、仕事を終わらせればいいだけのこと。自分のデスクに戻ろうと踵を返したキラは、ハッと身を強張らせた。
部屋の中の気配がいつもと違う。はたはたと、カーテンが風に靡いている。窓は確か、閉まっていたはず。
巧妙に気配を消しているが、誰かがこの部屋の中に潜んでいることが分かる。
ゆっくりと、キラは部屋の中を見回した。上着の裏に仕込んであったナイフを袖に隠す。慎重に、部屋の中を進んだ。ピンと張り詰めた空気に、キラは息を呑む。
さっと、窓辺で何かが動いた。目でそれを追ったキラは、とっさにナイフを持った手を振り上げる。だが、キラの動きは読まれていたようで、その腕が掴まれて後ろに回られてしまった。首を動かして、その侵入者を確かめようとした。


「ぬあっ、ア――ッ!?」


いるはずのないその人に叫びそうになるが、大きめの手がそれを阻んだ。まん丸にした紫の目に映ったのは、プラントにいるはずのアスランだった。
キラが大人しくなったのを確認すると、アスランはすぐに手をどける。


「やあ、キラ」

「ちょっ!? やあ、じゃな――」


思わず出てしまった大声に、アスランの指がぴたりとキラの唇に当てられた。むっとキラは口を紡ぐ。騒ぎの原因がアスランだったのなら、危険なことはない。しかし、オーブにとっても重鎮であるはずのアスランが、侵入者のレッテルを貼られるのは避けなければならない。


「で、なんでこんなバカなことしたの?」

「バカって……まあ、うっかり見つかったから違いないけど」


はははと笑ったアスランはキラを抱きしめて、「はぁああ」とそれはそれは深いため息を付いた。なんだか疲れているアスランの様子に、キラはとりあえずアスランの背中をあやす様に叩く。
侵入者のまねごととはいえ、軍で相当の試練を受けてきたアスランが警備に見つかるはずがない。


「何かあった?」

「……いや、まあ…あったというか……」


歯切れの悪いアスランに、キラは首を傾げる。肩に乗ったアスランの藍色の髪を撫でた。ぎゅうと腰のあたりを強く抱きしめられる。


「あーすらん。どーしたの?」



小さな子を諭すように、話しかける。アスランがこうしてキラに甘えるのは珍しい。何か、余程のことがあったのだろう。そのまましばらく抱きしめられたままでいると、肩から紺色の髪が離れた。翡翠色の目がキラを写す。


「キラ……」


唇が塞がれる。歯列を割って入ってきた舌をキラは受け入れた。久し振りのその感触に頭がぼーとする。零れた唾液を拭われて、キラははたと我に返る。


「ちょっ!? 誤魔化さないでよ!!」


再び唇を奪われそうになって、ぐいと無駄に整った顔を押しのける。じろりとにらむと、アスランはすっとキラから離れた。


「………ら」


ボソボソと話すアスランの言葉は聞き取りにくかった。だけれども、キラの耳にはちゃんと届いていた。
キラはあはははと笑う。


「どうしよう、アスランが可愛い!!」

「なっ!?」


キラは笑いながら抱きつく。受け止めたアスランの顔が赤くなっているのを見て、よしよしとキラは藍色の髪を撫でる。


「ラクス、今頃怒ってるね」

「うっ……」


ねちねちとラクスにイビられるのを想像したのか、アスランは顔を歪ませる。そんなアスランの唇にちょんとキスをした。


「仕方ないから、一緒に謝ってあげるよ」


あのピンクのお姫様は、キラには甘い節がある。





『ただ逢いたかったから』


なんて言われたら、怒るに怒れないじゃない!!






“真昼の密会”




その後、プラントからの緊急通信にカガリが部屋に飛び込んできたことは、言うまでもない。





end



ただのキラ欠乏症だったアスランです。
あまりのバカップルにラクス様も呆れてるに違いない!!!
でもこんなアスキラ嫌いじゃないラクス様なのですwww

珍しく可愛いアスランが書きたかったんです!!


ちなみに、例の事件とはキラ強姦未遂のことです☆
わかりにくいですねι


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