book2
□いい加減にしろ!!
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※学パロです。
「あのぉ、アスランくんいますか?」
*いい加減にしろ!!
教室の廊下からの声に、キラはぴくりお反応する。私の隣の席のアスランは、またかと言う顔で、席を立ち上がった。
「…あのさ、カガリ聞いてる?」
「あ、ああ聞いてるぞ」
さっきの授業で出た問題が分からなかったから、双子の弟のキラに教わっている途中だった。後ろ向きに座っている私に、キラは「女の子なんだから、跨いで座らないでよ」と小言を言う。
「で、ここがこうなってね……」
キラの説明は、先生よりも分かりやすかった。頬杖を付いて、キラの顔を見る。身内がいうのもなんだけれども、キラはとても可愛いと思う。男に可愛いというのはどうかとも思うし、本人もあまり喜んでいないのだが、可愛いと言う言葉がとてもよく似合う。
「だからね、この式にこれを当てはめて……」
そして、本人はまったく気付いていないのだけれども、ちょっとした表情の変化ぐらいこのお姉さまにはお見通しだったりする。隣が空席になった時から、意識がそれる事が多くなったこと。今だって、私が余所見をしていることにまったく気付いていないのだから。
がらがらとドアが閉まって、アスランが戻ってきた。手には、お約束のお菓子らしきもの。
甘い物が得意ではないアスランには、正直迷惑以外の何物でもないだろうが。
何事もなかったかのようにアスランは席に着いた。
キラの手が、とんと筆箱にあたって机から落ちて中身が散らばる。ころころと転がってきたボールペンやらシャーペンやらを拾って、アスランはキラの机に置いた。
「ここ、間違ってるぞ」
「……うるさいなぁ、キミに言われなくても分かってる」
ふいと、キラはそっぽを向いて、アスランに指摘された箇所を消しゴムで消し始める。あからさまに、キラの機嫌が急降下する。
「そんなことより、キミも大変だねモテモテで」
「何、ヤキモチ?」
「はぁ? バカじゃないの」
目の前で繰り広げられる、いつもの言い争いに私は傍観を決め込む。正直あまり巻き込まれたくないからだ。
消しくずを床に落とそうとしたキラに、アスランは制止の声を入れる。キラの動きがピタリと止まって、素直に従った。
「さっきの子、結構可愛かったじゃない。付き合うの?」
「いや、断った」
「即答……どうせ冷たく、“ムリ”とか言ったんでだろ?」
「まあ、そうだけど」
間違っていたらしい問題を解き始めるキラの手元を、アスランはじっと見ている。続きを教えてろよ、と突っ込みを入れたいところ。だけれども、今のキラには私はまったく移っていない。仕方がないから、あとでラクスにでも教えてもらおう。
「冷たッ!! その子かわいそ…まあ、外見だけしか見てなさそうだけど」
「多分、そうだろ?」
「キミ、ホント見た目はいいくせに、あとは欠点の方が多いからね」
カバンの中からペットボトルを取り出したキラは、それを飲むと、アスランに差し出す。アスランは、当然のようにペットボトルを受け取った。よほど喉が渇いていたのか、アスランは中身のほとんどを飲み干す。
「口下手で、人見知りで、知らない人と喋るとすっごく緊張するだろ? そのクセお節介だし」
つらつらと、キラはアスランの欠点を上げていく。子供の頃からの付き合いだから、まあ知っていることは多いとは思う。
「機械オタクで、休みはほとんど引き篭もってるし……なんで、キミみたいなのがモテるのか不思議だよ」
すらすらと問題を解いていたキラの手が止まる。アスランは、トントンと教科書の公式を指差した。ちらりとそれを見たキラは、少し考えてから答えを書いていく。
がさがさと、アスランはついさっき女の子から貰ったお菓子の封を開ける。中身はクッキーだったらしい。私が手を差し出すとアスランは、プレーンクッキーをくれた。もう一枚、アスランはチョコ味のクッキーを取り出して、キラの目の前に差し出した。キラは視線をノートに向けたまま、あーと口を開ける。アスランはキラの口の中にクッキーを入れた。もぐもぐとキラはそれを咀嚼する。アスランは飲み込んだタイミングを見計らって、次のクッキーを差し出した。今度はチョコチップクッキー。
「さあ、俺のこと知らないからじゃないのか?」
「確かに、それは言えてる」
そのクッキーは結構甘めで、口の中が甘ったるくなる。自分のペットボトルを出すのが面倒で、キラのを拝借して飲んだ。無糖のアイスティーは、クッキーによく合うと思う。ぽりぽりとクッキーを横取する。
アスランは、ポケットの中から紙パックのミルクココアを取り出した。下の自販機で売られているそれは、よくキラが好きで飲んでいるもの。それをキラの机の上に置く。
「間違えて買ったから、キラにやる」
「そうそう、意外に抜けてるとこもあるよね」
「それは、悪うございました」
甘いミルクココアをキラは、飲んだ。いくら甘い物好きでも、私なら絶対しないこの組み合わせ。だけど、無類の甘い物好きのキラは、お菓子を食べる時は大概ココアを頼む。
因みに、キラの好きなお菓子のトップにくるのがチョコレートだ。
「おまえらさ……」
いいかげん甘ったるいこの雰囲気にも嫌気が差していた。私が声を発すると、二人は同時に振り返った。「あれ、いたっけ?」みたいな顔するのはやめろ。
「はぁ……なんでもない」
「なに、気になるじゃん。カガリ!!」
「いーや! 私が何でもないと言ったら、なんでもないんだ」
立ち上がって、ノートを手に取る。キラは、あっと声を上げたけれど、私はヒラヒラと手を振った。
「じゃ、私はラクスのところに言ってくるからなー」
どうして、こうもウチ弟どもは揃いも揃って、世話がかかるのだ。
本人たちが無自覚なのか、それとも気付かないフリをしているのかは分からないけれど。
「あいつら、いい加減くっ付けよ」
「あら、それはまだまだ先だと思いますわ」
「あ、ラクス」
どこから覗いていたのかは、この際問いたださないことにする。神出鬼没の私の友人は、くすくすと笑いながら二人を見ていた。
はあ、とまたため息が出た。
ため息は、幸せがにげると言うが、その原因は間違いなくあの二人だろう。
「あのな、二人に挟まれる私の立場に立ってみろよ」
「ふふ。嫌ですわ。こういうのは、遠いところから傍観するのが一番ですもの」
まったくもって、その通り。
十数年以上、こんな関係のあいつらにつき合わされているのだから、それが一番楽だろう。
教室の中では、アスランがキラの口元に付いたクッキーの食べカスを取ってやっていた。
どうしたら、そんな自然にそんなことが出来るのか不思議でたまらない。
「もう、付き合いきれん」
とは口にしながらも、多分私は二人の仲を見守るのだろう。
仕方がない、これも腐れ縁というやつだ。
「本当に、手の掛かる弟達だなぁ……まったく!!」
「カガリさんは、お優しいですわね。私が同じ立場だったら、服ひっぺ返して強制的にラブホにでも押し込めますわ」
「いや、さすがにそこまでは……」
End
“不仲なのに、傍から見たら恋人同士”
というリクエストを、半ば無理やりハギさんから貰いましたー
あんまり、希望に答えきれてない……
やつら、どうやったら不仲にできるでしょうかね?どうやっても、いちゃついてる様にしか見えない!!
ただ単に、私の想像力が低いだけなんですけどねーι
少なくとも、キラはまったくアスランのことそう言う風には見ていない感じで書いたんですが……無意識に、意識してる的な……わっかりにく!!