book3

□Happy birthday
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たくさんのプレゼントと、おめでとうの言葉。
ありがとう、大好き!!




*Happy birthday







意識を飛ばしていたキラが最初に目にしたのは、じっとこちらを見つめていた翡翠の瞳だった。ぼんやりとする意識で手を伸ばして、キラはそちらに擦り寄る。すぐにアスランの手が絡んで引き寄せられた。


「キラ、大丈夫? 手加減できなくて、ごめん」

「んー? う…ん、だいじょ……ぶ、あすぅ……」


先ほどまで身体を繋げていたため、キラの身体はかなり疲労している。動きもゆっくりで、それでも何とか目を開けて笑顔を作る。栗色の前髪を払って、アスランはキラの額に口付けた。くすぐったそうにキラは身を捩ると、ぎゅうとアスランに抱きつく。


「へへぇ……あすらんだぁ」

「なんだよ、それ」


キラの言葉はどこか舌足らずで、ふにゃふにゃとしている。いつも以上に甘いたのキラに、アスランは笑って抱きしめ返した。耳たぶを甘噛みすると、キラは肩を窄める。栗色のサラサラとした髪がアスランの首筋に掛かる。かぷりとキラに肩を噛まれて、アスランはキラのわき腹を擽った。キラは身を捩ってアスランから離れると、小さく舌を出す。だけれども、すぐにアスランに掴まってしまって、再びキラは心地良い腕の中に戻った。


「キラかわいい」

「バカにしてる?」

「いや、全然」

「あ、そう……」

「キラは昔から可愛いから」


ちゅっと唇にキスをされたキラは、納得いかないとぷくりと頬を膨らませる。
そういえば、と意識を飛ばしていた時に見ていた夢を思い出した。


「ねえ、アスラン。覚えてる?」











5月18日。双子であるキラとカガリの生まれた日。
6歳になった今でも、どちらが上かでいつも喧嘩になる日でもあった。


「ぜったい、わたしがおねえさんだ!!」

「ちがうもん、ぼくだもん!!」


わあわあと言い合っても結局、結論は出ないまま。母も父も、どちらでもいいじゃないと笑っているだけで答えてくれない。「喧嘩してると、誕生日プレゼントもケーキもおあずけよー」と言われてしまったら、幼い二人は黙るしかない。ぴたりと抱き合って、仲良しのアピールをして両親にプレゼントを貰う。これが、毎年のことだった。


「さあ、誕生日パーティーの準備をするから、二人はお外で遊んでらっしゃい。アスランくんとラクスちゃんに招待状を届けるんでしょ」


はーい、と返事をして、二人は家を出た。アスランとラクスはもっと小さい頃からの知り合いで、家族ぐるみの付き合いをしていた。
手を繋いで待ち合わせの公園に足を向ける。一つ大人になったことが嬉しくて、足取りがいつもよりも軽やかだった。ぱたぱたと走って階段を上がると、既にアスランとラクスがいた。


「「あすらん、らくすー!!」」


キラは、ぱっとカガリの手を離してアスランに抱きつく。にこにことラクスは笑っていたが、カガリはびくりと何かを察して肩をすぼめた。


「ラクス、カガリがおびえてるぞ」

「まあ、あなたに言われたくありませんわ」


ばちばちと花火が見えたような気がして、カガリはふるふると首を振る。キラはアスランにぶら下がったまま、何も感じていないようだった。そんなキラに、ラクスは目線を合わせるとニコリと微笑む。


「キラ、お誕生日おめでとうございます」

「へへ。ありがと、らくす」


ふにゃんと笑ってキラは、ラクスにも抱きつく。見事にアスランの機嫌が損なわれていくのを察したカガリは、ぽんと肩を叩いた。


「まあ、あれだ。げんきだせ」

「ああ、ありがとな……」


この頃から、アスランとラクスは大人びていて、キラよりもカガリのほうがしっかりとしていた。ひしっとキラを抱きしめたまま、ラクスはカガリを見て微笑んだ。


「カガリさんも、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとな!!」

「ところで、そろそろキラを放してくれませんか」

「あら、キラは自ら抱きついてきたのですわ」


キラを挟んだ間、ラクスとアスランはにらみ合う。ぱちぱちと瞬きしたキラは、首を傾げるとカガリを見た。はあとため息を付いて、カガリはキラの頭を撫でる。


「きら、こっちこい」

「うー? うん」


ラクスの手から離れて、キラはちょこちょことカガリの元に来た。一方のラクスとアスランはにらみ合ったまま。傍から見れば、にこりと笑ったままなのだが、その周りが冬に戻ったみたいに冷たいことにカガリだけは気付いていた。
四人とも仲はいいのだが、アスランとラクスはよく対立していた。仲良く遊べばいいのにとカガリは思っていたそうだ。もっとも、アスランとは性格があわないとラクスは言っていたらしい。
性格が合わないというよりは、似た性格をしている所為で反発しているのだろうなと、今なら思える。


「なんか、ずるい」

「どうした、きら?」

「あすらんとらくす、なかよし」

「なかよし、ねぇ……」


二人でブランコを漕ぎながら、ぽつりとキラは言った。当の二人はにこりと笑ったまま、何か話している。まだ二人にはパーティーの招待状も渡していない。


「あすらんは、らくすとあそびたかったのかなぁ」

「……それは、ちがうとおもうぞ」

「ぼくたちじゃまだった?」

「うーん……ぜったいちがうきがする」


仲が良いと思っていたのは自分だけで、本当は誕生日もどうでも良かったのかもしれない。そう考えると、急に涙が溢れてきた。突然、ぽろぽろと涙をこぼし始めたキラに、カガリはぎょっとする。勢いよくブランコを飛び降りて、慌ててキラを慰める。


「きらぁ、なくなよ!」

「うー、かがりぃ」


ひしっとカガリに抱きつくと、わんわんとキラは泣きだした。その声を聞いて、はっとアスランとラクスはにらみ合いをやめて駆け出す。いち早く駆けつけたアスランは、泣いているキラの頭を撫でようとした。しかし、いやといわんばかりにカガリの後ろへ隠れてしまう。


「き、キラぁ!?」

「ざまぁないですわね!! キラ、どうしましたの?」

「やあ、あすらんもらくすも、キライ!!」


キライといわれた二人はぴしっと固まる。泣きじゃくるキラは、カガリに抱きついて離れようとしない。なんとかキラを泣きやませようと、カガリは声を掛けるがキラは首を振るばかり。


「おまえらのせいだぞ!!」

「申し訳ございませんわ」

「すまない……」


そのあと、ありとあらゆる手段で慰めてやっとキラは泣きやんだ。
カガリの後ろに隠れたまま真っ赤にした目をアスランとラクスに向けて、キラは手を差し出す。


「ほんとに、きらいじゃない?」

「当たり前ですわ! キラを差し置いて、どうしてこのデコと遊ぶというのです!」

「デコってなんだ!! そうだぞ、キラ。俺はキラと遊べればそれで良い」


「……ぼくたちのたんじょうびパーティーきてくれる?」



カバンの中から取り出した招待状を二人に渡す。にこりと笑って、アスランとラクスは頷いてくれた。二人とも、カガリとキラにプレゼントはちゃんと用意してくれていて、その包みを見て、カガリと一緒にキラキラと目を輝かせた。











「懐かしいな……」

「そんなことも、あったな」


くすりアスランは笑った。少しずつ思い出しながら、話していたキラは幼かった自分がどうしてこうも悲しかったのか分かって、じっとアスランの顔を見た。
変わらない翡翠の綺麗な目は、幼い頃から大人びていて、誕生日は自分のほうが早いのにとずっと言っていた。そして、もう一人の幼馴染のラクスもまた大人びていて。だから、二人が一緒にいると、不安になったのだ。自分といるより、二人でいたほうが楽しいのじゃないかと。


「あの頃から、僕はアスランが好きだったんだ」

「俺はずっと好きだったけどね」

「てっきりラクスが好きなのかと思ってた」

「……勘弁してくれ」


藍色の髪がキラの肩に掛かる。はあとため息を付いたアスランに、キラはよしよしと背中を撫でた。
小さい頃からずっと一緒で、今でも4人で出かけることは多い。キラとアスランの関係が変わっても、ずっとそれは変わらなかった。アスランとラクスとのにらみ合いは、今もまだ続いているけれど。カガリはもうとっくの昔に諦めたようで、傍観を決め込んでいる。
今日も、キラとカガリのためにアスランとラクスは誕生日プレゼントをくれた。二人のためにと、協力してケーキも用意して。キラとカガリの好きな、イチゴのたくさんのった大きなケーキとジュースで乾杯。


「ケーキ、おいしかったな」

「それは良かった」

「ありがとね、アスラン。ラクスにも、もう一度お礼しなきゃ」


四人で映画を見ているときに、黙って抜け出してしまったのだから。あの二人なら察しはついているだろうが、申し訳ない。
時計を見ると、あとすこしで日付が変わる。誕生日の特別な日から、日常へと時は過ぎていく。


「これでしばらく、アスランより年上だね」

「またそれか」


年上ぶってアスランの髪を撫でる。あの頃とあんまり変わっていないやり取りに、ぷっと吹き出した。
変わっていないようで、少しだけ変化した関係。
来年もまた、こんなふうに過ごせたらなとキラはアスランの首に手を回した。少しだけ冷えてしまった身体に、心地良い体温にほっと息を付く。ぎゅうと抱きしめ返したアスランの腕がとても気持ちよくて、キラはふぁあと欠伸を漏らした。


「ねむいの?」

「うん、すこし」

「じゃあ、おやすみ」



もう一度見た夢は、さっきの続きだった。
笑いながら、四人でケーキを食べている。もちろん、大好きなイチゴのケーキ。
先にイチゴを食べてしまって、いいなってアスランのほうを見たら、アスランは「はい」とフォークに刺したイチゴを差し出した。


「キラにあげる」

「いいの? ありがと、あすらん!!」

「きらずるい……」

「じゃあ、カガリさんにはわたくしのをあげますわ」




いつもより甘くて、おいしいイチゴ。

ありがとう、だいすき!!



End



昨日の幼少アスキラbotにたぎって書き始めたのはいいんですが、四人幼馴染設定はきつかったかι
カガリがあんまり祝えていない……ただ、カガリがいないときっとこの四人はバラバラです。
なんにしても、キラとカガリ誕生日おめでとう!!
いつまでも、仲良くね☆






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