book3

□desire
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呼び止められて、手首を握られる。ただそれだけのことなのに、いつも心はざわついてしまう。



*desire



「キラ?」


するりと手が離れていく。振り返ると、アスランの顔があった。普段どおりのその顔でもどうしてだか、今すぐにでも抱きつきたくなってくる。触り心地の良い藍色の髪に触れて、ぎゅうと抱きついて、香水はつけていないけれど、どういうわけかいい匂いがする。思いっきりこの場所で抱きつけたらいいのになと、考えたとこではたと我に返る。


「な、なにアスラン?」

「なんだか、今日のキラはおかしい」

「え、なんで? ふつうだよ」


表面上はと心の中で呟いたら、ぺたりとアスランの手が額に当てられた。小さい子にするように。実際に、幼い頃もよくこうされていた。同い年のはずなのに、ずっと大人びていた。低めの体温。今のこの気持ちにとって、そのぐらいでは下げる効果はない。


「……熱なんてないよ?」


一応、ここは公共の場所なのだから、こうして二人でいればイヤでも目立つ。過去の栄光は、少しの時間では消えることはない。恨めしくも思うが、過去はどうあがいても過去でしかない。
しばらくして、熱がないと判断したアスランの手が離れていく。その手を自然に目が追いかける。一回りほど大きい手は、どうしてかもう一度手首を捕まえた。


「え、アスラン?」

「やっぱりな……キラ、おいで」

「ちょ、ちょっとアスラン!?」


何がやっぱりなのか、まったく分からない。分からないまま、ずんずんと手が引っ張られる。すたすたと少しだけ早歩きで、人々を抜いていく。振り返る人もいたけれど、みんな道を開けていく。ここでの肩書きを考えるとそれもまた仕方がない。
すたすた歩いてたどり着いたのは、自分の執務室。勝手したると、セキュリティーが働いているはずの扉をアスランはなんなく開ける。これって、もしかしたら意味ないんじゃないかなと、考えたところでポンと背中を押された。たたらを踏んで振り返ると、扉が閉まって抱きしめられた。
おどろいて、目を見張る。ふんわりと大好きなにおいがすぐ近く。触りたかった藍色の髪も。


「ど、どうしたの、アスラン?」

「それはキラだろ?」


びくりと肩が揺れる。見透かされたみたいに、目を覗きこまれた。宝石のような瞳に、欲張りな姿が写り込む。ぴたりと手が頬に触れる。さっきよりもその手は冷たく感じられる。自分の頬が熱くなっているからなのかもしれない。


「そんな目でみられたら、俺だって我慢できないよ」


くすりと笑う声が耳に届く。外耳を食まれて、アスランの手が髪を撫でた。同じように藍色の髪を撫でる。さらさらの髪は、するりとすぐに手から離れていく。くるくると指で引っ掛けて、ぎゅうと抱きついた。


「ばれてた?」

「うん、ばればれ」


そのままの勢いで、ソファに座った。アスランの膝を跨ぐように座って、藍色の頭を抱きしめる。なされるが儘のアスランに、口付けた。腰に手が回されてよりアスランとの距離が近くなる。


「ねえ、アスラン好きって言って?」

「好き、大好きだよキラ」



時々、こうして確かめたくなるそのクセを、アスランは分かってくれている。確かめるようなことをして気を引いて。


「僕も、大好き」


なにもかも投げ出して、こうしてずっと抱きついて入れたらいいのに。




End


ただ単に、いちゃつくアスキラ。時々アスランの気を引きたくなるキラさんです。どちらかと言うと、アスランからのが多いですが、キラだってたまには欲情するときもあります。
アスランに比べたら可愛らしいものですがね。ただエロ突入させるだけの気力がなかっただけですが←








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