book3

□ふたつのしっぽ
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※短いです




*ふたつのしっぽ





「まぁキラ、随分と髪が伸びましたのね」

「え、そうかなぁ…」


キラは、つんと前髪を引っ張った。ラクスに向けられた鏡には、肩を少し越した栗色の髪が写っている。
伸ばすつもりはなかったのだが、ここ最近の忙しさにかまけて、すっかり伸びてしまった。


「邪魔ではありませんか?」
「まぁ…そうだねぇ」


にこりと笑うラクスの手には、どこから取り出したのか櫛とヘアゴムがあった。





* * *





「キラー入るぞ…」


執務室の扉を開けたアスランは、ドアノブに手をかけたまま、キラの方を見てぴたりと動きを止めた。
キラは書類に目を向けたまま、顔を上げようとしない。無視されている訳ではなく、集中すると周囲の声が耳に入らなくなってしまうのだ。それはいつものことだからアスランも気にはしていない。


「あ、おかえりー」

「あ、ああ…」


アスランに気がついたキラは、普段とまったく変わらずにこりと笑う。申し分なく可愛らしい笑顔に、アスランもつられて笑顔を向けるが、いや待てとすたすたとキラに近寄る。


「ん、なにアスラン?」


こてんと首を傾げたキラ。その首筋につられて、二つに結ばれた髪が揺れる。
アスランは、そっとその髪に触れた。


「似合う?」

「かわいい…」


結ぶにしては短めな為、髪の量は少ない。ちょろんとピンク色のヘアゴムから伸びている髪がなんとも可愛らしい。


「くすぐったいんだけど」


束ねた髪が首筋に当たったらしい。身をよじったキラに、アスランはキラの細めの顎を持ち上げる。


「アスラン?」

「可愛すぎるな」


そのままアスランは、薄く開いた唇に口付ける。ころんと、キラの手からペンが落ちて転がる。アスランは、机についていた手をキラの手に重ねた。
机越しなのが煩わしい。
一度唇をはなしたアスランは、ひらりと机を飛び越える。座ったままのキラに、アスランは覆い被さるように唇を奪った。
深く繋がったそこから、くぐもった声が漏れる。合わさった唇の端から、飲みきれなくなった唾液がこぼれた。


「はぅ…あす…ら…」

「キラ…」

「…久々、だよね?」


えへへ、とキラは照れたような笑みを浮かべる。
潤んだ紫色の瞳に、そう言えばこうしてキスを交わすのも久々だったと思い返す。顔を合わすことはあっても、お互いに忙しい政務を負っている為、そんな気になることもなかった。今だって、けして時間があるわけではない。次の会議の調整の為に、アスランはキラの部屋に立ち寄ったのだ。


「…これ、ラクスが結んでくれた。たぶん、あのデコから、キスしてくるだろうって」

「…デコって……あの女帝め」

「だから!! アスランは真面目すぎるんだよ!? まるで、僕だけが欲求不満みたいじゃないか!!」


キラの主張にアスランは目を丸くする。
最近、キラがこうしてわがままを言うことは少なくなった。それを寂しいと感じていたはずなのに、その感覚も忙しさに追いやられてしまっていたらしい。
ピンクの女帝には、してやられたのが、癪に触る。
しかし、こうして久々に触れて感じたキラの温もりは、どうにも離れがたい。
少し膨れ気味の頬に、そっと触れる。するりと頬から顎へと手を滑らすと、二つに結んだ栗色の髪。結んだ髪が揺れる首筋に手を回して抱きしめた。


「俺も、キラが足りないな」

「だったら、もっと抱きしめてよ」


耳元で聞こえたその声に、アスランはひょいとキラを抱き上げた。





end



ハギさんがTwitterでつぶやいてた、ツインテールなキラたんから派生した話です。
机飛び越えるアスラン、自分で書いといて吹いたんですが、あえてそのままにしました←
アスランなら気障っぽくやるだろうなと……

しかし私では、ツインテールを生かしきれなかった!!
だがしかーし、使命は果たしましたので、ハギ様の絵に全裸待機です<●>∀<●>
ハギさんのみお持ち帰り可です☆




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