book3

□非常識的な
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ある日届いた謎の包み。
うっかりそれを見つけてしまったアスランは、一刻も早くそれを処分してしまおうと決意した。キラに見つかる前に。
そうまでしてアスランが焦る理由。それは、差出人の名前が『ラクス・クライン』と記されていることだった。




*非常識的な




天敵でしかないピンクの悪魔の関わるものが、まっとうなものである訳がない。キラ宛てならいざ知らず、アスラン宛てに届いたとなれば、十中八九と言わず100%害をなすものに他ならない。


「とにかく、すぐに処分だ。あいつに見つかる前に――」

「あ、アスランにも届いてたんだ!!」


ひょっこりと栗色の髪を覗かせたキラに、すっと意識が遠ざかる感覚に襲われる。きらきらと輝く紫の瞳は、好奇心いっぱいにアスランの手の中の小包を見ている。
こういったところは、姉であるカガリにそっくりだ。しかし、キラのところにも同じような包みが届いていたとは。
アスランはキリキリと痛み出した胃を押さえると、窓の外に悪魔の小包をぶん投げようと腕を振り上げる。


「アスラン、何やってるのさ! 折角ラクスが送ってくれたものを!!」

「だから恐ろしいんだろうが! こんな得体の知れないものあけたら最後何が起こるか分かったもんじゃない!!」


キラに捕まれた腕を振りほどいて、今度こそなかったことにしようとする。が、にこりと笑ったキラが、アスラン目の前に立ちはだかった。有無を言わせない笑顔は、あのピンクの女帝を彷彿とさせる。いつの間にピンクの毒牙にかかったんだ、とアスランは心の中で舌打ちする。こうなったキラに逆らうと後が怖い。


「まあ…キラが言うなら」

「良かった! なんかね、ラクスが僕とアスランにお揃いの物をくれたらしいんだ」


キラが小包と一緒に持っていたのは、手紙らしき物だった。お揃いで何かを送ったから、アスランと一緒に開けろと書き記されていたらしい。
そんな指示、怪しさ抜群だが、キラは純粋に喜んでいる。キラキラと輝く紫の瞳は子供のようで、年相応には見えない。庇護欲をそそられるその笑顔に、アスランは栗色の髪を梳いた。


「俺とお揃いは嬉しいか?」

「え!? いやそう言うわけじゃ…うぅ〜〜っ!!」

「可愛いなぁ。ホントもう可愛い」

「言われても嬉しくない!!」


キラを腕の中に閉じこめて、ぐりぐりと頭を撫でる。口では否定しても、うっすらと頬が色づき始めれば説得力はない。その頬をアスランが突っつくと、ぷっくりと膨れ上がる。


「じゃあ開けてみてよ、アスランの!!」


ふてくれたキラの声に、からかい過ぎたかとアスランは素直に従う。
それほど大きくはない包みは、きれいにラッピングされている。重みはないし、揺すっても音はしない。あの女帝の贈り物なんて、想像も付かない。想像したくもないととも言う。はっきり言って開けたくはない。だが、目を輝かせたキラには逆らえず、包みを開けた。


「……エプロン?」

「…そうだね」


身構えていた分、かなり拍子抜けした。顔を見合わせると、キラも意外そうな顔をしている。
薄い黄緑色のエプロンを広げる。


「あはははは! アスラン似合いそー!!」

「あの悪魔……」


きれいに包装されて見えなかった部分は、フリフリのレースがふんだんに使われている。いかにもラクスの趣味らしい。
キラにならいざ知らず、何故アスラン用に送られてきているのか。嫌がらせ以外の何物でもない。やはり、一筋縄では行かない。


「ほら早く着なよーアスラン!」

「これはキラのが似合うだろ!?」

「残念でしたー! 僕はこっちのエプロン貰っちゃったもん」


いつの間にやら包みを開けていたキラの手には、シンプルな薄いピンク色のエプロンがあった。そのエプロンを付けて料理を作ってくれるキラを想像すると、とてつもなくそそられる。今手の中にあるこのフリフリなエプロンさえなければ。いやだが待て、フリフリエプロンもキラが着るなら、可愛らしさ満点だろう。自分に送られてきているのだから、どう使おうがこちらの自由。
そんな脳内会議を繰り広げたアスランは、くるりとキラの方を見る。いざ、キラに着せようとフリフリエプロンを手にしたアスランは、バチンと顔面を叩かれたことにより阻止された。


「わざわざアスラン用に選んでくれたんだから、着るよね?」

「………え、いや…」

「試作も含んでるみたいだから、着るよね? これ着て一緒に料理作ろ」

「……分かった」


やはりアスランには、キラの笑顔には逆らえなかった。確かに、ちょうどお昼ごはんの用意をするのにも良い時間。考え方によれば、新婚さんのシチュエーションとも言えなくもない。自分の姿は自分では見えない…と言うよりも見たくはないが。すばやくフリフリのエプロンを身につけて視界から追いやったアスランは、うきうきとエプロンを付け始めるキラを見つめる。


「なに作ろうかなぁ」

「キラが好きなもので良いよ」


エプロンを着ようとしているキラの後ろの紐を、アスランが結んでやると、キラがくるりと振り返る。シンプルでしかないエプロンだが、キラにはとても似合っている。


「可愛い」

「な、何か照れ――っ!?」

ポン!!

音とともに突然視界が白くなった。やはりあの女帝の関わるものはろくな物がない。がたんとキラが何かにぶつかる音がする。

「キラ、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫…」


キラに危害を加えるものを、贈ってくることはないとは思うがそれも言い切れない。段々と視界がクリアになっていくと、しりもちを付いたらしいキラのシルエットが見え始めた。


「ならよかっ……」


アスランはキラの姿を見て、絶句した。
どういうわけだか、今のキラの姿は所謂裸エプロンだったからだ。


「え、なに!? どうしたのアス――ぎゃぁあああ!!」


ようやく自分の姿に気が付いたキラは、驚いて床に座り込んだまま突っ伏した。だが、そんなことをしても隠せるものではなく、むしろ形の良い臀部が丸見えになっている。
思わずゴクリとのどが鳴る。


「な、なんだよこれ!?」

「だから、あんな得体の知れん物は、捨てた方がいいと言っただろ」

「知らな…ひゃッ!?」


アスランは、するりとキラの背中を指でなぞった。思わず身体を起こしたキラの格好は、想像以上に破壊力抜群だった。
すらりと投げ出した足は、太股のかなり際の部分まで丸見えになっている。さらに、ぺたんと足を投げ出して座り込んだキラは前屈み気味で、エプロンからちらりと胸の飾りが見え隠れする。


「み、見るなァアア!!」

キラは手を振り上げるが、すぐにその手は捕まってしまう。ふるふると全身で警戒するキラの華奢な肩にアスランは手を置いた。びくんと肩を揺らすキラに、アスランは耳元で囁いた。


「キラ、可愛い」


健康的な肌にエプロンだけを身につけたその姿は、何とも言えない色香が漂う。逃げられないようにアスランは、キラを腕の中に閉じ込める。するりと背中に手を這わせると、腰のあたりまで手を滑られた。ビクビクと反応を示すキラがたまらなく可愛い。


「ちょ…やだって!」

「いや? キラの、当たってるぞ」


アスランの腹のあたりに、キラの熱を感じる。ピンク色のエプロン裾が持ち上がっている。くすりと笑みを浮かべると、キラはパシンと弱々しくアスランの背中を叩いた。赤くなった顔で、潤んだ瞳がアスランを見上げる。


「…誰の、せ、いだッ!!」

「はいは――ッ!?」


ポンッ!?


再び起こった破裂音と、視界を覆う白い靄。
それにともない、アスランの身体に痛みが襲う。それは今まで感じたことのない激痛だった。


「ぐっ…あぁ―ッ!!」

「アスラン!?」


あまりの痛さにキラの肩をつかむと、アスランはそのまま倒れ込んだ。徐々に視界が開けていくと、ようやく痛みは引いていく。
あの女帝がこちらにも何かを仕込んでいることは予測出来たのに、油断していた。


「アス……だいじょ……」

「…あぁ、心配ない」


押し倒してしまったキラを見下ろすと、紫の瞳がこぼれ落ちそうなほど開いていた。
力が入りにくくなった身体を起こそうとすると、妙に胸のあたりが重い。キラの視線もそちらに向かっていて、アスランは首を傾げた。


「……キラ?」

「……アス、ラン…だよね?」

「はぁ? 何を言ってるんだ」


心なしか、自分の声が変な気がする。ふるふると震えるキラの指差す方を、アスランは見てみた。


「………な、なんじゃこりゃァアア!?」


叫んだ声も、女の子そのもの。いつの間にか、アスランも服のみが消えてキラと同じ裸にエプロンの状態になっている。しかも、どういうわけだか、エプロンからこぼれんばかりに胸が膨れている。これではまるで、女性になってしまったかのよう。


「え、ちょ…ない!!」

「…アスランの破廉恥ィイイイ!!」


ぴらっとエプロンをめくり上げたアスランに、キラは真っ赤になってアスランの頬をぶん殴った。殴り飛ばしてから、ハッと気が付いたキラは、倒れたアスランを抱き起こす。


「ちょ、ごめっ!!」

「だ、大丈夫だ…」


いつもなら、キラの張り手ぐらいで倒れることなどないのだが、女の身体ではそうもいかなかった。パチパチと瞬きすると、キラの顔はやはり真っ赤に染まっている。


「…キラ?」

「……アスラン…可愛い」


もともと綺麗な顔立ちをしていたアスランは、かなりの美少女になっていた。
大きな切れ長な翡翠の目と、それを飾る長い睫毛。一回りほど小さくなった身体は出るところはきちんと出ているのに、腰も手足も細い。唯一身につけたフリルのエプロンが恐ろしく似合っていた。


「……嬉しくない」


ふいと顔をそらすと、キラの下半身が視界に入る。反応を示していたそこは、今もまだエプロンの裾を押し上げ、その部分だけピンクの色が濃くなっていた。


「キラ、もしかして…これ見て感じた?」

「なっ、なに言って!?」

にいといつもより赤みのある唇をつり上げて、キラの上に乗りかかる。自然と大きな胸の谷間がキラの前に晒される。


「あ、アスラン!?」

「折角キラがこんな美味しい格好してくれてるのに、俺がこんなじゃキラを満足させてやれるか分からないなぁ……」

「そ、そうだよ!! アスランも女の子がそんな格好してちゃ…ッ、うわっ!?」


アスランの手がキラの下肢に伸びる。エプロンの裾から入った手がキラ自身を掴んで扱き始めた。いつもより小さな手。だが、しっかりとキラの良いところ知り尽くしたその手は、キラを徐々に追い上げていく。悪戯っぽく笑みを浮かべたアスランは、女の子。


「やぁ、離し…ッ!?」

「もうイきそう? いつもより早いね」


赤い唇がそう告げる。確かに、先ほどからキラが意識しているのは、普段はけして有り得ないその柔らかそうな大きな胸。キラ自身を扱く動きにあわせて、ふるふると揺れている。そっとその膨らみに触れると、僅かながらにアスランはびくりと肩を揺らした。


「へぇ……キラもやっぱり興味ある?」

「いや、違っ!?」

「いいよ、ほら。触りなよ」


アスランは悪戯っぽく作った笑みをそのままに、キラの手を自身の胸に当てる。ふにっとした柔らかい感覚が、不思議な感覚が広がる。キラの手を掴んだまま、むにむにと胸を揉んでみると、じんわりと腰のあたりにむず痒い感覚が襲う。思わず漏れそうになる声に、アスランは唇を噛むとキラ自身の愛撫を再開させる。


「ゃ、あぁ…っ!」

「キ、ラッ!!」


無意識にキラはアスランの胸を掴んでいた。僅かにアスランの身体が弓なりになった。


「キラのえっちぃ」

「ひぃ、ちがぁ……あぁ」

くちゅくちゅと水音を増したキラ自身は、すぐにでも達してしまいそうだった。

「良いよ、キラになら触らせてあげる」


蠱惑的に微笑んだアスランに、失いかけていた理性がパンと弾けた。いつもアスランがしていたように、キラはぴんとレースを押し上げる乳首に舌を這わせる。大きくなった胸が、ぴくりと震える。アスランは舌打ちすると、キラの首筋に口付ける。アスランは、キラ自身を扱くスピードを速めた。
熱を持った吐息が、どちらともなく零れる。濡れた紫色の瞳がアスランを写す。高揚した頬は、やはり美少女のそのもの。かすかに聞こえる声は甘さを含んだ声音。いつもと全く違う感覚。


「あす、ら……も、イ…くッ!!」


ビクビクと襲いあがる快楽に、キラは抗うことなく、アスランの手の中で果てた。どちらともなく唇を合わせると、ハラリとエプロンの肩紐が滑り落ちた。
その瞬間、またもやポンっという音とともに視界がぼやけて、次の瞬間にはアスランの身体は元通りになっていたのだった。




 * * *



「いったい何だったんだ…」

「アスラン…すっごく綺麗だった!!」

「……それはどうも」


ぎゅうと抱きついてきたキラに、アスランはぐりぐりと頭を撫でる。
あのあと、元に戻って身体を繋げて、今はのんびりとアスランとキラはベッドの中にいた。


「キラのほうがよっぽど可愛い」

「アスランのが可愛いよ!! 君、小さい頃、しょっちゅう女の子に間違われてたじゃない!」

「それはキラも同じだろ」


キラはじたばたと手足を動かした。子供のようなその行動も、アスランには愛おしさを膨れさせるだけ。うつ伏せになったキラの華奢な肩に口付ける。くすぐったそうにキラは首を窄めると、くすくすと笑う。


「きょにゅー」

「キラのえっちー」


ぱんと栗色の頭を叩くと、キラはあははと笑った。

いつの間にか消えてしまったエプロンは、結局謎のまま。やっぱりラクスに関わる物はろくな物がないと、改めてアスランは肝に銘じるのだった。






「うふふ……今回も良い絵が撮れましたわ」


どこからかピンクの少女の笑い声が聞こえた。





end



オチなかった……
長い割にはヤマもオチもなく……エロも中途半端で…

やっぱりニョタ化と裸エプロンは二つぶっ込むのは無謀でしたね(´¬`)

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