book3

□チョコより甘い
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ビターチョコレート、ミルクチョコレート

アーモンドチョコに、トリュフ

ガナッシュ、ガトーショコラ……


ふんわりと甘い匂いに、紫の瞳が輝く。




*チョコより甘い





今日は、2月14日。
世間は、バレンタインに浮かれ気味だった。
それは、ここオーブ官邸でも同じ。だが、去年と少し違うのは、ラクスのお陰だといえる。
そもそも、先の戦の発端の一つとなった、血のバレンタイン以降、この日は忌むべき日とされてきた。プラントにとっては、屈辱的な日であり、地球軍にとって見れば戦渦を拡大した原因とも言える日。
しかし、血のバレンタインと呼ばれた悲劇が、いつまでも憎しみだけで満たされていては、死者が報われない。ならばいっそ、死んでいった愛する者たちにチョコを贈ろう。
この日を、愛する者と平和に過ごせますようにと祈る日にしようと。
平和を愛するラクスらしい提案に、プラントだけではなく世界中がそれに賛同したのは記憶に新しい。
そのお陰もあって、今日は世界的に軍関係設備はどこも休まなければならない。そう、世界的な法でも定められていた。


「ねえ、アスランはレノアママにどんなチョコあげたの?」


ソファで寝転がったキラは、キッチンに立つアスランに視線を向ける。
ふわふわと、甘い匂いに先ほどからキラの鼻がひくひくとしている。抱きしめたクッションまでも、チョコの香りに包まれていて、寝起きだったらかぶりついているところ。


「んー……母さんは甘すぎるチョコは苦手だったから、ビターチョコ」

「そっか。きっとあっちで喜んでるね」

「だと良いがな……味覚は肥えまくってるから、文句言われている気がする」

「ふふ、レノアママらしいや」


記憶の中のレノアは、優しくもあり厳しい人でもあった。
小さい頃は、アスランを連れまわしすぎて宿題を忘れそうになって叱られたこともある。
大好きだったレノアに、キラはチョコで出来たバラを贈った。
アスランとカガリとラクスと、四人でレノアにチョコを贈ったのだ。


「で、僕には何をくれるの?」

「俺の愛」

「愛より、食欲!!」

「ちょ、キラ!?」


エプロン姿で振り返ったアスランに、抱きつく。
ふわりといつも以上に甘い香りに、ぴたりと身体をくっつける。


「だって、チョコ好きだもん」

「はいはい。もう少し待ってなさい」

「んー、待てない!」


湯煎したチョコに、指を入れようとするが叩かれた。
腹いせに、首筋に齧り付いてやったら、アスランに睨まれる。大人しく、しがみ付いたままでいると、アスランは作業を再開した。
湯煎したチョコに、生クリームを加えて掻き混ぜる。小さく丸めて、ココアパウダーをまぶして、冷やせばトリュフの完成。
冷蔵庫の中には、すでにチョコプリンとアーモンドチョコレート、ガナッシュが完成している。それに、ガトーショコラがオーブンの中に。
全部、キラがリクエストしたもの。
最近、料理に目覚めたアスランが、せっかくなら全部作ってやると、言い出したのだ。


「アスラン、本当に器用だよね」

「そうか? おまえが変に不器用なんだろ」


出来上がったトリュフを冷蔵庫に入れる前に、チョコがべったり付いた手を洗い流そうとしたアスランは、背中からにょきっと生えた手にそれを阻まれる。
ひょっこりと顔を出したキラが、アスランの手をじっと見つめていた。


「どうした?」

「……もったいない」

「はぁ?」


チョコが付いたアスランの指を、キラはためらいもなしにぱくりと口に咥える。ふんわりと甘いチョコが口の中に蕩けて、キラの表情も同じように破顔した。


「おい、キラ」

「おいひい」


口に含んだままで喋った所為で、上手く発音は出来ていない。甘ったるいだけではなく、少しリキュールの香りもするチョコは、本当に美味しかった。
キラは口の中で、アスランの指に舌を絡ませた。


「おまえ……わざとだな」


アスランが呆れたような顔をする。
キラは知ったことかと、もうほとんど味のなくなった指を噛んだ。


「これ冷蔵庫に入れたら構ってやるから」

「あ、やっぱばれた?」

「アホか。何年の付き合いと思ってんだ」


キラは腰にしがみついたまま、アスランはトリュフがのったトレイを冷蔵庫に入れた。
一度集中すると、そっちばかりにアスランは集中してしまう。会話には答えてくれるが、目線はずっと料理に向けていた。
分量が大切なお菓子なのだから、それは仕方ないのだが、なんだか面白くない。


「ほら、終わったぞ」

「お疲れ様、アスラン」

「きーら。煽るだけ煽ってくれた責任は、取ってもらえるんだよな?」

「なんのことだか、僕にはさっぱり?」

「ほー……なら、今作ったチョコは全部シンとルナマリアあたりにばら撒くか」

「嘘です。ゴメンナサイ、調子に乗りました」


キラはアスランに再びしがみ付く。
やっぱり、愛より食欲なんじゃないかとアスランはキラの頭を小突いた。


「はい、キラ。もっとあるから舐めてもいいぞ」

「……なんかアスランが優位、ムカつく!」

「ん? 聞こえないなー俺は何も聞こえない」

「アスランのくせにぃ!」


そう言葉では悪態をつきながらも、キラはアスランの言葉にすんなりと従う。差し出された指についたチョコを、キラは丁寧に舐め取っていく。
一回りほど大きいアスランの指は長く形も良い。密かに、キラが好きな場所のひとつだったりする。指の形をたどる様に舌を這わせて、爪の先に吸い付く。手の平も、同じぐらい丁寧に舐め取る。
ただ手を舐めているだけなのに、だんだんと気持ちが高揚してくる。始めたころよりも、舌も熱くなってきたような気がした。


「おいしい?」

「うん、おいしー」


うっとりとした目でアスランを見ると、翡翠のような目も熱を帯びているように感じた。
段々と、下半身にまで熱が集中して落ち着かなくなる。
右手のチョコがすべて綺麗になくなったところで、アスランはキラの舌を摘んだ。ぺろんと出された舌に、アスランは舌を絡ませてきた。
散々舐めてきた所為で、疲れた舌は言う事を聞かず、アスランにされるがまま。吸われたり、巻き取られて弄ばれる。
息が続かなくなって、合図をすると口唇が離れた。


「よく出来ました」


まるで小さい子供にするように、よしよしと頭を撫でられる。
昔から、アスランに頭を撫でられるのは好きだった。くすぐったくて、大好きなんだという気持ちが更にこみ上げてきて。
キラの服に手が掛けられて、脱がされる。器用に片手だけでボタンを外していくアスランに、関心しながらも頭はすでにぼんやりとしている。
するりと、下着ごとズボンまで脱がされた。


「キラって、淫乱? 手舐めながら、感じてたの」

「ち、がっ!」


脱がされた下着に出来たしみと、半立ちになった性器を、アスランはわざとキラに見せ付ける。くすりと笑って、かわいいと囁かれて顔が熱くなる。
今日はどういうわけか、いつも以上に身体も熱い。ふるふると首を振ると、アスランは、チョコの付いた左手で、キラの乳首を摘んだ。


「ふぅ……あっ!」

「キラの熱でチョコ、溶けてきたみたいだ」


胸全体を揉むように、するとべったりとキラの胸にチョコが付く。ツンと立ち上がった乳首までも、いやでも視線に入ってきてしまう。


「キラはチョコ好きだから、これも綺麗にできるよな?」

「え、いや……っ!」

「じゃあ、俺はもうここ触らないけど、いい?」

「あ、やぁ!」


するりとキラの性器を撫でていた手を止めて、アスランは微笑む。整いすぎて今は逆に腹が立つ。けれど、そんな理不尽な要望も、聞かなければいけないような気になってくる。
キラは、おずおずと自信の胸元に手を伸ばす。
ただチョコを取らせたいだけではないだけではないことは、キラだって分かっている。


「お利口だね、キラ」

「ばか、アスランのばか!」

「キラこそバカだなー……今そんなこと言ったら悪循環だって分からない?」


いつの間にあったのか、トリュフを作っていたボールがベッドサイドに置かれている。すべて丸めてトリュフにしてしまったはず。


「はい。チョコ好きのキラの為に追加」

「ひっ、や、つめた……っ!」


どろりと、胸元から徐々に下肢のほうへチョコが掛けられる。
生クリームが入ったチョコは、普通以上に熱に溶けやすく、すぐにとろとろと身体中に広がる。


「な、もったいない!」

「そうだね。だから頑張って舐めようね」


俺も手伝うよ。
そう悪魔のような声が囁く。
アスランは、キラの性器についたチョコを手で掬うと、キラの口元へもっていく。
甘ったるいチョコの匂いに、頭まで麻痺したようにキラは言われるがままそれを口に含んだ。


「ほら、キラ。チョコが垂れてきたぞ」

「あ、やぁ、ちょこ……」


キラは胸元に手を伸ばすと、チョコを掬う。しかし、チョコを掬うためには、自分で胸を弄るようにしなければいけない。しかも、じっとアスランに見られている所為で手を動かし辛い。おずおずと手を伸ばして胸元に触れるが、敏感になった身体は微かな刺激だけでも反応を示す。
恨めしそうにアスランに視線を向けると、ぐりぐりと頭を撫でられた。


「分かった。手伝うよ」

「ちがっ、そういう意味じゃっ!」


言うが早いか、アスランはキラの胸元に舌を這わせる。チョコと明らかにそれを舐め取るだけではない動きで、胸元を弄られる。こりこりと舌で乳首を転がされ、空いている手でもう片方を刺激する。
呼吸が乱れて、嬌声が漏れそうになる。慌てて口を閉じる。


「ふぅ…・・・はぁ、あっ!」

「ほら。きーら、あーん」


ヘソのあたりから掬ったチョコを、キラの口元に運ぶ。
長年の習慣からか、素直に口を開けてしまうと、アスランの指が入ってくる。
今度は、アスランの指がキラの口内を好きなように動き回る。舌と歯とを指でなぞられて、嘔吐きそうになるとやっと、指が出て行った。


「はぁはぁ、あ、すぅ……ば、かっ!」

「ごめん、ごめん」


涙目になったキラの目元にキスする。
唾液に濡れた指を、下肢の奥へと侵入させる。とろりといつの間にか、そこにまでチョコは流れていたらしい。唾液とチョコとで、ひくつく窄みは、なんなくアスランの指を飲み込む。


「うぁ……あすらん、の……へんた、い!」

「それは、キラもだろ?」

「ちがう、もん、ばかぁ!」


ゆるゆると解されていくそこは、もうアスランの形を覚えてしまっている所為で、指では物足りない。それでも、キラを傷つけないようにと丁寧に、アスランはキラを解していく。


「キラ、もういい?」

「ん……」






 *  *  *




「ほんっとに、バカじゃないの!!」

「……すみません、調子に乗りすぎました!!」


現実から冷めた後の、ベッドルームの悲惨な状況とオーブンに入れっぱなしで焦げすぎたガトーショコラ。
キラはかなりご立腹だった。


だけれども、いつもより甘い香りに、先におかしくなったのはもしかしたらキラのほうだったかもしれない。
そのことは、アスランには内緒にしておこう。




Happy Valentine



愛する人と、もう二度と別れなくても良い日。



End



途中で力尽きました←
いつもより強気なアスランにしようとしたんですがねー……無理でしたね。

インパクト以来、アスキラまた熱がやばいです。
どろっどろに甘いアスキラが書きたいです。






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