book3

□ふあんとふまん
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「ねえ。これってどういうことかな?」



*ふあんとふまん



にこりと笑った石田が、どういうわけか玄関の前で仁王立ちになっていた。
手にしているのは、ストラップもカバーも付いていないスマホ。最近ようやく、ガラケーからスマホに変えたのだと言っていたのは、たしか二ヶ月ほど前のこと。


「え・・・・・・っとなんのことで?」


石田さんが怖い。
にっこりと、きれいに笑っているこの顔の時は、かなりヤバい。


「・・・まあこんなところでなんだから、部屋に行こうか」

「は、い・・・・・・」


ここ僕のうちですケド。とはとてもじゃないが言える雰囲気ではない。
石田に言われるがままに、鍵を開けて部屋の中へ入る。バタンと扉が閉まると同時に、石田に肩を掴まれた。


「いっ、たぁ」


肩に爪が食い込む。石田は微笑んでいた目を、すっと細めた。
じっと、真っ黒く澄んだ目がこちらを射抜く。思わず肩を竦めてしまう。真っ黒い瞳が、息がかかるほどすぐ近くに迫ってきた。
瞳の中に、自分の姿が映る。
怖いと思っている反面、どこか目がうっとりと石田を見つめている。
自然とうっすらと唇が開いた。けれど、すっと彼の唇は横を通り過ぎてしまう。首筋に息がかかると同時に、痛みが走る。
鎖骨と首筋との間。
痛みの次に、ねっとりと上へ舌があがっていく。今度は耳たぶが噛まれた。
痛い。
だけれど、それだけじゃない感覚がビリビリと身体に走る。


「い、しださぁ・・・・・・」


思わず名前を呼ぶ。
だが、石田は聞こえていないといったように、今度は耳の中を舐める。
反射的に身体が逃げそうになると、石田は逃げ道を奪うように壁際に追いやった。
壁と石田とはさまれると、すっとシャツの裾から手が入ってくる。


「ひっ。ちょ、石田さん!」


託しあげられて、胸元が露わになる。
すでに擦れて立ち気味の乳首。石田は迷うことなく口の含むと、そこを強く噛んだ。


「ひぃ、あぁああ!!」
「いいの? ここ玄関だよ」


つぶやいた声はひんやりと冷たい。
ドアが閉まっているとはいえ、廊下には声は漏れてしまうかもしれない。
手で口を覆うと、石田はもう一度そこを噛んだ。舌で押しつぶされて、また噛まれる。もう片方は、爪で抓られるように押しつぶされる。
執拗以上にそこだけ攻められる。
身体を動かそうにも、足の間に石田の足が入っている所為で少しも動くこと出来ない。
吸って、噛まれて、抓られて、そのたびにびくんびくんと身体が跳ねる。


「ひ・・・・・・っ、ん」


がくがくと足が震えて、身体を支えられなくなる。ずるずると壁を滑るように身体が沈んでいくと、ようやく石田が離れる。
身体が、息も熱い。
石田を見上げると、薄い唇が弧を描いていた。
ごそごそと、石田は自分の鞄を探る。手にしていたのは、コードの付いた機械。


「い、やぁ、それっ!」
「あ、覚えてるんだ。じゃあ付け方も分かるよね」


否定を許さない声。
手渡されたのは、クリップ型のバイブ。
いつだったかも、これでさんざん弄ばれた。

「ほら、早く」


冷たい声が降ってくる。
口と手とで弄ばれたそこは、大きくプックリと立ち上がっている。
だが、自分で付けられるかと言えば、これが持つ後の痛いほどの快楽と羞恥とで、すんなりと従うことが出来ない。
待たせれば待たされるほど、石田の機嫌が下がっていくことも分かっている。だけれども、受け取ったまま手が動かない。


「忘れちゃった?」
「あ、う・・・・・・」
「そう。ならしかたないね」


ぱたぱたとスリッパの音が遠ざかる。
すぐに戻ってきた石田の手には、部屋に置きっぱなしになっていたバイブがあった。


「や、やっそれ・・・のが、やぁ!」
「だって、保志くん忘れちゃってるからしかたないよね」


そういうが早いか、器用にズボンと下着とがはぎ取られる。逃げようとする腰を掴まれて、どこにあったのか赤いリボンで手首が捕らわれる。結ばれた手首が、ドアノブに掛けられた。


「ごめ、ごめんなさぁ・・・いしださっ・・・!」
「どうして謝ってるのか分かってる?」


とろりとした液体が、下半身にかかる。バイブと一緒に持ってきたローションは、性器を滑り落ちて、後方へと垂れる。
大きく割られた脚の間に座り込むと、石田はするりと奥の窄まりに指を突き立てた。中までローションを送り込む。


「や、やめっ、やだぁ!」


暴れようとするのを押さえ込まれ、何のためらいもなくそこにバイブが突き立てられる。

「あぁあっ!?」
「声、本当に気を付けた方がいいよ」
「やだ、いしださん! 抜い、ってぇ!!」
「やだ」
「ひぃいああっんーーっ!!」


バイブのスイッチが限界まで上げられる。悲鳴に近い声は、石田の掌の中に飲み込まれる。
身体の中で振動するバイブは、それなりに大きい。ローションのお陰でするりと入ったが腹が苦しい。力が入って抜けそうになると、もう一度押し込まれる。


「力抜かないと抜けちゃうでしょ?」
「ああ、ひぅ・・・むり、ですぅ」
「しかたないなぁ」


脱がされた下着を再び履かされる。濡れて立ち上がった性器が、下着を押し上げて顔を出す。ぺったりと濡れたその部分が気持ち悪い。バイブは抜けない代わりに、浅いところで留まって、前立腺を刺激する。


「これなら抜けないね。ついでだから、こっちも付けとこうか」
「ひっ、ああっ!」


落ちていたクリップ型のバイブで、両方の乳首が摘ままれる。そして、こちらも最大までスイッチを入れる。
痛すぎる刺激に身体が大きく反って、ずるりとさらに身体が滑る。
すでに高ぶっていた性器が、ぱんと弾けてじわりと下着にシミが広がった。
性器を触られたわけでもなく、いってしまったのにショックを受ける。


「早いね・・・・・・頭、打たないように気を付けてね。じゃあ、俺はゆっくりシャワーでも浴びさせてもらうから」
「ひぃ、やだぁ・・・っ、いかなっ、石田さん!! ああ、いし、ださぁ!」


手を動かそうとしても、引っかかったリボンの所為で動かない。その上、身体を動かすと、中に押し込まれたバイブが奥へ入り込んで圧迫感が増すだけだった。
下着に擦れた性器が、びくんと大きく震えた。
だらだら続く快楽。
二カ所同時の刺激で、すでに震える性器は絶頂を迎えだらだらと精液を流し続けている。それは、終わりなく襲ってくる。


「ああ、ひぁ・・・・・・はぁ、ああ、んぁ・・・」


力の入らなくなった脚が痙攣する。犬のように、速い呼吸を繰り返す唇から唾液が伝う。どくどくと、性器からあふれる精液は下着を濡ら、床まで伝っていた。


「い・・・し、ださぁ・・・いし、だ、さん・・・」


苦しい。
熱に浮かされた頭で、名前を呼ぶ。
びくんびくんと痙攣したような身体は、体力をなくして沈み込む。自然と丸まった所為で、またバイブが中へ押し込まれる。


「ああ! ひぃ・・・っ」


何度目か分からない絶頂。
視界が歪む。
引っ掛かった儘の腕が痛い。

石田が行ってしまってから、まだ10分もたっていない。
狂いそうなこの状況がいつまで続くのか。
涙が溢れて止まらなくなる。


「ごめ、な・・・い、・・・・・・だ、さん。・・・・・・っさい・・・」
「あーあー。すごいことになってるね。大丈夫、保志くん」
「いしださぁ・・・ああっ!」


石田の顔を見たその瞬間にも、びくんと大きく震えて精液をこぼす。
 

「すごいね。ずっとイきっぱなし? お漏らししたみたいになってる」
「たす、け・・・て、いしだ、さ・・・っ」


両方のバイブの振動が弱まる。
緊張しっぱなしだった身体から力が抜ける
身体の中でずっと振動していた所為で、まだ動いているような感覚がある。ぴくぴくと小刻みに震える身体を、石田はするりと撫でた。
その刺激だけで、またいってしまう。
精液は、色をなくして透明に近い。


「これ、保志くんはわざと俺を煽ってる?」


石田が手にしていたのは、やはりスマホだった。画面を近づけられると誰かからのメールだった。
送信もとは、森川俊之となっていた。


「今日のイベントで、やらかしたみたいだね。森川くんから、最近構ってやってるのかってメールが着た」


今日のイベント。
それは、戦国BASARAのイベントだった。石田も共演しているが、今日のイベントには出ていない。今回も舞台版の俳優陣が出演していた。
思い返して、すぐに言わんとしていることを理解した


「舞台上で抱きつくって、どういうこと?」

「それは・・・回答だったし、盛り上がってくれるかと・・・・・・」


クイズ対決のコーナーでのこと。
「合掌捻り」がどういうものなのかを答えるものだった。
聞いたこともない相撲の技名に、ウケをねらって、舞台版幸村の細貝に思いっきり抱きついたのだ。


「・・・それ聞いて俺がどんな気持ちだったか分かる?」
「・・・・・・はい。でもっ、石田さん最近ずっと忙しそうだったし、この間のラジオで久しぶりに一緒で・・・・・・なのに、すぐ帰っちゃうし、忙しいし、仕方ないけどって・・・だから・・・・・・ご、めんなさい」



言いたいことはたくさんあった。だが、いざ口にすると、うまく言葉にできない。
とてもじゃないが、言葉を扱う職業だとは思えない。
涙があふれた。
お互いに忙しい身で、会えない日が続くことがあることは仕方がない。昔は、共演作品も多く、プライベートで会えなくても、仕事場で会っていた。だが、最近はそれも少ない。
この間収録したラジオは、本当にひさしぶりの共演で自分が思っていた以上にうれしかったのだ。
第一部のゲストという形だったため
終わり時間も違っていた。

「・・・・・・ごめんね。俺、次も仕事入ってたから」
「わかってます。石田さんは忙しいんだって・・・・・・僕が勝手に少しぐらいなら話す時間もあるかなって・・・」


子供のような我が儘だった。
石田さんと一緒の番組に出たんだと。
会えなくて、寂しくて、思わずツイッターにも書き込んだ。
書き込んだ時は気付かなかったが、人肌が恋しかったのだ。


「・・・・・・気付かなくて、ごめん」
「いいんです・・・・・・石田さんは悪くない、です」


手首のリボンが解かれる。延ばしっぱなしで痺れた腕を、無意識に伸ばした。
黒く癖のない髪に顔を埋める。すうっと息を吸い込むと、慣れ親しんにおい。


「石田さんだ・・・・・・」
「保志くん」


ぐりぐりと首筋に顔を擦り付ける。
安心するにおい。香水を付けているわけではないが、いいにおいがした。
そろそろと背中が撫でられる。
気持ちいい。


「跡、付いちゃったね。ごめん」
「いいです。石田さんの愛だと思っときます」
「言うね・・・まったくこの子は。保志くんには適わないよ」


頭が撫でられる。髪を梳くように、そろそろと。


「・・・さ。そろそろ部屋行こう。いつまでもこんなとこいないで」
「・・・・・・抱っこ」
「無理。保志くんまた太ったし、俺細貝くんみたいに若くないし」


ぱんと手が叩かれた。
確かに、体格差があまりなく、どちらかと言えばこちらの方が重いだろう。


「・・・・・・じゃあ、これせめて抜いて下さい!」
「・・・・・・あ」
「忘れてましたね! すっごい苦しかったのに!! てかこんなもんよく鞄に忍ばしてましたね!?」
「・・・なに言ってんの? まだお仕置きは続行中だよ。はい立って」


にこりと笑みを浮かべる。
ものすごく楽しそうに。


「ひぃ!? 石田さんの鬼!!」
「ん? 嬉しいって? そっかー。目一杯相手してあげるよ」


腕が引っ張られて、立ち上がる。入ったままのバイブが中で動く。


「ひあっ、ちょっ石田さん!?」
「内股で可愛いねえ。ほら、またスイッチ入れられたくなかったら歩く」
「そんなあー」
「じゃあ、ここでやる? 廊下だから外に響くかもね保志くんの声」


よく通る声だから。
そう囁かれる。低めの、ものすごく良い声で。
その声だけで、腰が砕けそうになる。


この声が大好きで、ファンには悪いけれど、石田さんを独り占め出来るのは僕だけ。

そう思いたくて、拗ねてみたのかもしれない。

だけど、もう少し気を付けよう。
そう思ったのは、ベッドの上で今度はさんざん我慢させるというお仕置きをさせられたから。


不安も不満も、見事に消えてくれた。




End


先日のBASARAイベントがすごかったらしいですね。舞台上で抱き付いて、くるくる回ってたと。
あとは、忍たまラジオ前の保志さんのツイート。
それらを強引にくっつけました。
結果、ただのバイブで遊ばれる話になりましたが・・・・・・はい。妄想すみませんでしたァアアア!!




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