book3

□imtimacy
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※学パロ



*imtimacy

=愛情行為。又は、愛情表現。



 カーテンの隙間から差し込んだ日差しに、キラは重たい目蓋を持ち上げた。もぞもぞと、シーツを手繰り寄せようとすると、隣のなにかとぶつかる。
 寝惚けた頭で考えると、それは同じようにもぞもぞとこちらを振り返った。
 綺麗で触り心地の良さそうな紺色の髪と、形のよい鼻と口唇と、影が出来るほど長い睫毛。
 本当に、どこをとっても綺麗で、整った顔。
 擦り寄って、じっと近くで見つめる。
 普段、これほど近くで見つめる機会はそうそうない。
 学園中の憧れの生徒会長様。
 成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能。本当に、天は二物どころか、これでは贔屓しまくりではないか。
「アスラン」
 小さな声で呟くと、ぴくりと微かに眉が動いた気がした。
 アスランとキラは、幼馴染でつい最近、両思いになったばかり。バレンタインに、思わぬ形で、付き合い始めた。
 いつも一緒なのは、それこそ昔から変わらない。アスランの隣にいたのは、常にキラだった。それでも、ただの幼馴染と恋人では、関係は少しだけ変わった。今まで以上に、一緒にいて離れたくなかった。
 アスランとの間にあった隙間を埋めるように、キラはぴたりと擦り寄った。よく知った、優しい匂いをすうっと吸い込む。
 首筋に、髪が当たったのがくすぐったかったのか、紺色の眉がまたぴくりと動く。
 もっと隙間を埋めるように手の伸ばすと、素肌と頬が触れ合った。
 どくん、どくん、と響く鼓動がこれほど、心地良いものだと知ったのは、つい最近。もっと聞きたくて、耳をくっつけようとすると、身体にふわりと温かな重みが掛かる。
「きーら。良い加減にしとけよ」
「あれ、起きた?」
「普通、あれだけされたら起きるだろ」
 お仕置きだと、わき腹の辺りを擽られる。
 くすぐったさに身を捩ると、長い指先がお臍の辺りをなぞった。身体をくの字に折り曲げたキラは、ぷくりと膨れてアスランの頬を叩いた。
「痛いな」
「寒い。キミの手、冷たいんだよ」
「ああ、悪いな」
「悪いと思ってないでしょ」
 やめろといっても止めようとしないその手は、そろそろとキラの身体を撫でている。
「キラの体温がうつって、温まってきたから平気だろ?」
「……ばかじゃないの!」
 恥ずかしげもなくそう言う顔は、にやけてているのに、やはり見惚れるほどカッコいい。
 なんだか無性に腹が立って、キラは枕を引き寄せるとガードするようにアスランとの間に壁を作った。
「ばーか、あほ! エロ魔!」
「エロ魔って……」
 罵ってやろうと口を開けて出てきた言葉の稚拙さに、自分でも恥ずかしくなる。これでは、小さな頃と何一つ変わっていない。キラが一方的に喚いて、アスランは。
「はいはい。俺が悪かった」
 そうやって、折れてくれる。キラの機嫌を取るように、ぐしゃぐいしゃと頭を撫でて、最後はぽんぽんと頭を叩く。
「……変わってないって思ってるでしょ?」
「なにが?」
「幼稚園の頃から、成長してないって」
「キラは、キラだから良いんだよ」
「……なんだよそれ!」
 あほらしい。
 何に腹が立っていたのか、それすらあほらしくなって、枕をどける。
「おお。岩戸が開いた」
「僕は引き篭もりじゃない」
「キラが引き篭もってたら、手力雄神(たぢからおのかみ)にでもなってあげる。あ、天鈿女命(あめのうずめのみこと)でも良いよ」
「え、キミが踊るの?」
 想像すると笑えてくる。
「まあ、踊らなくても、キラが気を惹きそうなことなんて、分かりきってるからね。簡単だよ、岩戸を開けるのなんて」
良い笑顔が、癪に触る。
「それって、僕が単純ってこと?」
 もう一度岩戸にでも籠もってやろうかと、枕に手を伸ばそうとする。しかし、アスランはキラより早くそれを掴むと、ぽいと放り投げた。
「あ、岩戸投げた! 罰当たりな。祟るぞ、祟っちゃうぞ」
「……その設定続ける?」
「……いや、もう良いです」
 朝っぱらから、しかも裸で何をやっているんだと。時間が立てば経つほど、恥ずかしくなってきて茶化さずにはいられない。
 幼馴染から、飛躍して恋人同士にやっとなれた。
 だけど、その関係に慣れるには、幼馴染の期間が長すぎた。
「キラ?」
 覗きこんでくるアスランの顔をまともに見ることが出来なくて、キラはころりと転がってうつ伏せになる。すると、その上にアスランが覆いかぶさってきた。
「どっか痛い?」
「そんなんじゃない」
「そう。なら良い」
 首筋に髪が当たる。続いて、温かい唇の感触。舐められたと思ったら、ぞわりと背中に何かが走る。
「ちょっと、やめてよ!」
「あ、やっとこっち見た」
 翡翠のような目が、こちらを見つめていた。
その目で見られるのが大好きで、独り占めしたかった。自分だけ見て欲しくて、アスランの気を惹いていた気がする。
「エロ魔」
「ほう。俺がエロ魔……じゃあ、もっとすごいことして良いんだな?」
「……スミマセン、ごめんなっ! あ、謝ってるのに何で!?」
「俺がエロ魔だからなんじゃない?」
「ひぃ、くすぐったい! やめ、やめろっ!」
 散々、身体中を擽られて、バタバタと暴れる。
「もー、こーさん! 降参するって」
「はい。ダメ」
 笑うのにも疲れてきて、擽る手をガードするのも追いつかない。ならばいっそ抱きついてやれて、えいとアスランに飛び掛る。
「これでどうだ!」
「ほー考えたね、キラ」
「頭悪いみたいに言うな!」
 散々不利な目にあっていたのだから、一つぐらい奇襲に出ても良いだろう。
コアラみたいに足で挟み込んで抱きついて、真正面でアスランを見る。近すぎる顔の前で、にこりと笑ってちゅっとキスをする。
 踏ん張っていた手から力が抜けて、キラごとベッドに落ちた。
「俺の負け」
「わーい勝った」
 幼い頃から変わらない、子供っぽいやり取りで、だけれども、それが一番落ち着くらしい。
 この関係は、幼馴染とか友達とか恋人とか言い表せないから、良いのかもしれない。

 


END



キラ誕にしようとしていたのに、まったく誕生日に結びつかなくなってボツったもの。
あいも変わらず、いちゃつくだけのアスキラになりました。






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