basara

□風花はまだ……
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寒い冬は、人肌が恋しくなる。それは誰しもが同じ事。




*風花はまだ……




しかし、政宗は違った。
物心着いた時には、すでに実の母は自分を嫌っていた所為もあってか、誰かとともに寝ることが苦手だった。遊びで女を抱いても、行為がすめばそこから追い出していたくらいだ。
だれかの体温がそばにあることが、嫌いだったのかもしれない。

それが変わったのは、十中八九この虎の若子といわれるこれの所為。
やたらと体温が高くて、人懐っこい。虎と言うよりも犬と言ったほうがよほどぴたりとくる。
何故か恋仲になってからも、どうしてこうも惹かれるのかは分からない。
好敵手からの流れにしては可笑しい関係。
しかし、決して嫌えない関係だった。

奥州の冬の訪れは早い。もうすぐ雪がちらついて、雪が道を閉ざしてしまう。おそらくこれがしばらくの別れになるだろう。
ぱちりと、火鉢の炭が爆ぜる。蝋燭に照らされた幸村は、この寒さにしては薄着だった。互いに雪国の生まれだが、政宗だがあまり寒さは得意ではない。真綿布団の上はそれなりに温かい。


「なあ、寒くないのか?」

「某、もとから体温はあたたかいようで平気でござるよ」


差し出された手は、童のように温かかった。その腕を思いっきり引き寄せる。つんのめった幸村が、こちらに倒れこんできた。ぎゅっと瞑っていた淡い茶色の目が開かれる。


「わ、わわ!! 政宗どの!?」


倒れたのが政宗の上だったことに驚いて、幸村は飛びのこうとする。垂れ下がってきた一房だけ長い髪が顔に掛かる。それを掴んで阻止すると、幸村は困ったような顔をした。


「どうした?」

「あの……離してくだされ」

「いやだ」

「うぅ……」


細めの腰を抱いて引き寄せる。支えている腕がぷるぷると震えているのが面白い。何故だと問うと、重みで潰れないようにだと答えてきた。単の袷から、ちらりと六文銭が揺れている。


「ハッ、おまえ。そのほっそい身体で俺が潰れるわけねぇだろうが」

「ほそっ……失礼でござる!! しかし、重いでござろうに……」

「重くねぇよ」

「……それも、なんだか屈辱でござる」


ふくふくと膨れた頬は、いつもにも増して幼くなる。そのうちいい加減痺れてきたのか、ぱたりと幸村が倒れこんできた。ちゃりんと銭の音が幸村との間に響く。幸村の体温が移ったそれは、ほのかに温かかった。


「おまえ、ほんとあったけぇな」

「それは、ようござった」


腰にまわしていた腕に力を込める。ぴたりとくっついたそばから、ぬくもりが移ってくる。
誰かの体温がこれほど心地良いと感じたことが、不思議で仕方がない。


「政宗殿は、まるで童のようでござる」

「はぁ、おまえに言われたくねぇよ」


そう言いながら、幸村が背中を撫でる手はとても気持ち良い。癪なので言ってはやらないけれど。
笑っている幸村の口に噛み付くように口付けた。離れようとするのを阻止するように、茶色の頭を押さえつける。歯列を割って、引っ込んだ舌を絡め取った。くちゅりと漏れる水音が高揚を煽る。まるで口内を味わいつくすかのように。
苦しそうに眉根を寄せる幸村に気付いて唇を離した。はあはあと肩で息をする幸村の唇は、赤く濡れている。紅葉した頬が色香を放つ。


「The act does not stop.」

「な、んと…?」

「なんでもねぇよ」


首を傾げるその顔を、胸に引き寄せた。
これか寒さは増していく。信濃も奥州も雪が行き来を阻む。
こればかりは仕方がないことだが、この心地を知ってしまった今、どうこの冬を乗り切ろうかと頭を悩ませることになるだろう。


「Take the responsibility,my honey」



まだ、雪はいらない。
もうあと少しだけ、冬が遅くなればいい。




end


同じ題材で書いてみよう、ダテサナバージョンです。違うジャンルにも、ありますので読んでみてください。
政宗さまいじっぱりなので、幸村には言いません。でも、幸村は分かってます。そんなダテサナ。
しかし、東北も信濃も雪大変ですよね……今年は特に。
政宗や幸村が生きていたころは、どうだったんでしょうね。
因みに、政宗様の英語は翻訳サイト便りなので間違ってましたら、ご指摘ください。

The act does not stop.
=とまらないじゃねぇか

Take the responsibility,my honey
=責任取れよ






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