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□おかえり
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ぼんやりとした空が見えた。
竜宮島の美しいはずの空は、同化によって低下した目にも綺麗に見えた。



その蒼穹にふと陰る何かに、目を細めた。
焦点が合わない目が、ぼんやりと人影を写し出す。




「あ、、、、」


だんだんと霞が引いてく。
まるでそれまでが幻だったのように、そこに彼はいた。
のぞき込まれた視線は珍しく穏やかな顔をしていて、やはり幻なのかと眉根を寄せた。



「………き……一騎」


差し出された右手に、嗚呼やはり幻だったと目を閉じようとして、頬に触れた感触にハッと目を見開いた。


「……そ、ぉし…な、のか!?」

「ただい……ま」


気がつくと抱きしめていた。
幻ではないことをもう一度確認するように、力一杯抱きしめた。

懐かしい香りがする。
幻ではない、温かい体温がそこにはあった。


「一騎……」


低めの声は覚えていたそのまま。

そっと伸ばされた腕が全身を抱きしめてくれた。


あの時から少し延びた髪に触れられて、こらえていたものが一気にあふれ出した。


あの時から一度も流れなかった涙が頬を伝った。

ぽたり、ぽたり涙が堰を切ったようにあふれ出してくる。


「……すまない」

「………ッ!?」


ゆるゆると頭を撫でられる。
言いたいことはたくさんあったはずなのに、言葉はなかなか出てこない。
口下手なのがイヤになる。
口を開いても出てくるのは嗚咽混じりの言葉とは言えないもの。


「一騎……」

「…あ…ッ!?」


空が見えた。
きれいな青空。

総士の顔越しに蒼穹が広がっていた。


「空が……」

「良かった」




久しぶりに見た竜宮島の空は、記憶の中にあった空よりも美しかった。


「総士……」



長めの髪が顔にかかった。再び空が隠れたが、もう不安はない。


涙でぐちゃぐちゃになった顔がおかしかったのか、うっすらと笑みを浮かべた顔が“ただいま”と呟いた。

温かい。
包み込まれるような優しさは、離れていた二年間も感じてたそれと同じだった。

「…おかえり、総士」












何のこっちゃwwwwww
映画のエンドを少女マンガばりに花を飛び散らせてみようと思い立った結果………完敗\(^o^)/







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