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□くろいろ
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なんだか頭がむずむずする。
朝起きて異変に気づいたのはそれだった。




*くろいろ




洗面台の鏡で姿を映したが特に変わったところはない。
寝癖が微妙に付いた自分の顔しか写っていなかった。

「気にしすぎか?」




通い慣れた道を歩いて、アルヴィスへ。
最近ではすっかり習慣になってしまっていたことがある。
あの生活力の全くない幼なじみの面倒を見ること。

気をつけないと、ずっと仕事をしていて食事や睡眠すら取らなくなってしまうのだ。
島のことを第一に考え、フェストゥムとの戦闘に備えて日々仕事をこなしていることは分かる。
しかし、いざという時に何かあっては元も子もない。
遠見先生や親父からも言われていることなのだ。



「総士おはよう」


アルヴィス内にある総士部屋。
ベッドと資料が並ぶ本棚、机以外家具は見あたらない寂しい部屋。
ここで大半の時間を過ごしている総士は何か思わないのだろうか。


「ああ……」


机に向かってキーボードを叩く総士がいた。
返事はしたものの、きっと反射的に言っただけだろう。


「総士、いつからだ?」

「…ああ、一騎か」

「いつからやってるんだ?」

「……いつ、だったか」


きっと、昨日からずっとだ。
目が赤い。


「休めよ」

「これを仕上げたらな」


会話はしていても手は決して休まない。
総士がここまでするのは分かる。

だが、こんなことをしていては身体が壊れてしまう。


「総士」

「……」


再び集中してしまったのか、返事はない。


「そ……ッ!?」


突然の激しい頭痛が襲った。
頭が割れるような痛み。

今まで経験した事がない頭痛。

壁に手を付いて身体を支えるが、痛みで手が震えている。


「あッ…い、ッ!!」


視界が暗くなる。
身体が崩れていく。

もしかしたら、同化による症状なのだろうか。



「かず……一騎!?」


総士の声が遠くに聞こえた。




* * *



気が付くと、ベッドいた。
激しい頭痛も治まっている。

きっと、ここはアルヴィスの医務室だろう。
見慣れた天井。

腕には点滴が刺さっていた。


誰もいない。
頭をそっと動かしても、部屋の中には誰もいなかった。


「そ、うし……」


総士が運んでくれたのだろうか。
心配させたかもしれない。


「あ、一騎くん。気が付いたのね」


遠見先生がカルテを持って入ってきた。


「先生…おれ、」

「もう大丈夫ね。ここまで運んでくれた皆城くんにお礼を言わないとね」


そっと起き上がると、遠見先生が背中を支えてくれた。
何だか、まだ頭が重い。


「一騎くん。よく聞いてね」


真剣な顔だった。
何か検査結果が良くなかったのかもしれない。


「遠見先生?」


「かずッ……」


入ってきた総士と親父は驚いた顔をしていた。


「一騎くん。これ」


遠見先生から渡されたのは手鏡だった。
なぜ、こんなものをと受け取ると鏡を見た。


「な……」


「これも、同化による症状らしいわ。元から持っているフェストゥム遺伝子が変化したらしいの」


「そんな!?」

「とりあえず、無事で良かった」


親父の手が肩を叩く。


「身体のほうはまったく問題ないわ」

「大アリですよ!!」


鏡に写っていたのは、見慣れた自分の姿ではなかった。

頭のてっぺんに生えた長い耳らしきもの。
髪の色と同じ色をした耳が生えていたのだ。


「可愛いからいいじゃない」


遠見先生の笑顔は慰めようとしているのかもしれないが、慰めになっていなった。


遠見先生によれば、一時的なものかもしれないとのことで、定期的に検査は必要らしいが、生活に支障がなければ退院してもいいらしい。




これから始まる生活に、不安しか感じられない。


これから、どうなるのだろうか。





つづく?



つづ……いてもいいのでしょうか?
一騎は、なんとなくウサギのイメージが強いのです。
皆城さんどうするんでしょうねー

私もどうするか分かりません←
むしろ、続かないかもしれません←←←




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