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□もやもやの正体
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「さてみんな。多分知ってるとは思うけど、今日は転校生を紹介します」


先生が黒板に名前を書きだした。
“来主 操”あのフェストゥムの少年だった。


「よろしくお願いしまーす」


来主の席は総士の隣になった。


「総士、よろしくね!!」

「あ、あぁ」




総士と来主が話している。
そちらが気になってしかただない。

総士と席はかなり離れているため、二人の会話はあまり聞こえない。
楽しそうに話す来主と総士。


休み時間なのだから、二人の傍に行けばいいのだが、なんとなく行き辛い。
みんな、来主と総士を遠巻きに見ている。

いくら安全だとはいっても、やはりフェストゥムが怖いのだろう。


「来主。あんまり迷惑をかけるなよ」


「迷惑なんてかけないよー」



そんな空気を諸共しないで、剣司は話しかけている。

羨ましいなと思う。
剣司はよく、自分が羨ましいというが。

剣司の訳隔てなく誰とでも普通に接しられるのこそ、凄いことだと思う。


教室が広い。


こんなにも距離があっただろうか。
なんだか、とても遠く感じる。


明るい来主は、キラキラと輝いて見える。

積極的に人と接する事のない総士が、輪の中の中心にいる。
そこだけ、光が当たっているように眩しい。



「一騎くんも、行ったら良いじゃない?」

「遠見、」


察しの良い真矢には、すべて筒抜けになっているようだった。


「気になるんでしょ?」


行けば良い。
あの頃とは違って、隔たりもなくなったのだから。


胸のあたりがもやもやとしている。
そのもやもやが、邪魔をして行けないのだろうか。


「もう、一騎くん!!」


真矢はたん、と手を取った。
手をひっぱって、そのきらきらの中へと連れて行く。


「あ、一騎だぁ」


満面の笑みの来主が、総士に抱きついていた。
総士はなされるが侭。


「どうしたの?」


無邪気な来主。
どうして、そんなに自然に居られるのだろう。

異分子なのはむしろ自分の方。


来主と目が合わせられなくて、視線をずらすと総士と目が合った。


「あ、あの……」

「おー一騎も一緒に道場行くか?」

「僕は、行くと言っていないが」

「えー総士も行こうよードージョーってとこ!」


ゆさゆさと来主に揺さぶられている総士は、嫌そうなのに退けようとしない。


もやもやが大きくなる。

嫌だ。

これ以上、見ていたくない。


そう思った途端、その場所から逃げていた。
教室を出て、廊下を走る。


きっと、みんな驚いているだろう。

だけど、どうしてもあの場所いたくなかった。


もやもやが、大きくなって押しつぶされそうになる。


久し振りに走った所為か、胸が痛い。
階段を上がって、屋上へ。


蒼い空。

この空が見えるのは、来主のお陰なのに。


晴れ渡る空とは、裏腹に心は曇ったままだった。


予鈴が鳴った。

もうすぐ授業が始まる。
教室に帰らなければいけない。

だけど、帰り辛い。



校庭では、体育の準備をしている生徒が見える。
この平和があるのも、二人のお陰なのに。


「サボりはよくないぞ、一騎」

「総士!?」


いつの間にか、総士が立っていた。
気付かなかった。


「どうして逃げる?」

「…え?」


背中がフェンスにぶつかった。
どうして逃げているのか、自分でも分からない。


「一騎?」

「べ、つに…気の所為だろ」

「そうか……」


総士に腕を掴まれる。
振り切れない。


「どうして、こちらを見ない」

「……気のせい、だ」


違う。
見れないから。
今の顔を見られたくない。
きっと、ヒドイ顔をしている。


「……来主に妬いているのか?」

「え……」


思わず総士の顔を見た。
なんだか、総士の顔がいつもより嬉しそうに見える。


「……もしかして、気付いてなかったのか?」



いつの間にか、もやもやがなくなっていた。

来主に嫉妬していたなんて、なんだか恥ずかしい。
顔が熱くなって、総士の顔が見れない。


「おまえも、なかなか鈍いな」

「な、ちがっ…!?」


クスクスと笑う声が聞こえる。
居た堪れない。


また、この場から逃げてしまおうか。
そう考えていたら、捕まってしまった。


総士の腕に。


「今度は、逃げるなよ」


どうやら、総士にはお見通しだったようだ。

分からなかったのは、自分だけだったらしい。




ますます、教室に戻り辛くなってしまった。




End



暗いなぁ根暗っ子一騎www
だけど、きっと一騎は自分から輪の中に入るのは苦手だろうな。
本当は混ざりたいけど、なんとなく入りづらい。


それにして、この話は何故こんなにも書きづらかったんだorz
文章読み返す勇気がない←のに、upするなよ


ちなみに、一騎が飛び出して行った後の話もあったり、、、


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