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□優しい風景
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海はどこまでも続いている。
青く、青く、波を漂わせながら。

空もまた同じ。
漂う雲を乗せながら、青く、青く広がる。

白い砂浜を歩きながら、空の青と海の青の境目を見る。

果てしなく続くその青は、吸い込まれそうなほど透き通っていた。


この青い景色を再び見られるとは思っていなかった。


降り注ぐ太陽の眩しさに目を細めた。

きれい。


「気持ちいいな」

「そうだな……」


ずっと待ち続けて、信じて、でも不安で、そんな自分がいやになって。

空と海の美しさを思い出すこともなかった。

この景色の下で、たくさんの思いでを作っていたはずだったのに。
そんなことすら忘れて、瞳も、心すらも閉ざしていた。


「なぁ総士」



風に揺られて、琥珀色の髪が流れる。
ふわふわと揺れるしっぽのようで、思わず掴んでしまった。


「なんだ?」

「総士は…幸せか?」


ぴくりと眉が動いた。
思ってもみなかったことだった所為だろう。


「…それは、どういう意味だ?」

「……ただ、何となく」


意味なんてない。
ただ本当に突然そう思って、聞いただけ。


「一騎は難しいことを言うな」

「…総士のが難しいことをばっかじゃないか」


風が砂浜に絵を刻む。
サラサラと砂が舞い上がった。
小さな波が砂を濡らす。


「……そうだな。幸せとは人それぞれの捉え方だ。自分の幸せが他人に不幸を与えることだってある。逆もな」

「……そう、だな」


雲の狭間に入った太陽が、ほんの一瞬影を作る。
雲の形をした影が過ぎると、再び光が降り注いだ。


影になびいた前髪が総士の横顔を見せた。

うっすらと今でも残る傷跡。


青空と、蝉の声と、草のにおい。

すべての終わりで、始まりの風景。


「幸せ…なんだろうな」

「…そうか」


あの日。
あの時から、すべてが変わった気がする。


「俺は……」


償うことの出来ない過ちに後悔し、距離を置いて。

でも、どんな形でも役に立てることを知って。

分かり合えて。

あの場所に一人残していくことになって。
激しく悔やんで。

でも、信じて待つことで自分を保つことも出来た。


「…幸せ…だな」


手の中の琥珀をそっと離し、手を広げた。


代わりに抱きしめたのは、大きな幸せ。
全身を、すべてを包み込んで、抱きしめる。


海のにおいと風のにおい。
頬に触れた琥珀。


「一騎?」

「うん……幸せ」


優しいにおいと、青の色。

波が足下を濡らして、逃げていく。


「総士……」

「どうした?」


柔らかな日差しが包み込んで、二人の間に日陰が出来た。


「呼んでみた…だけ」

「…そうか」


空の青と海の青。

琥珀と黒。

風と砂と太陽と。


一つも欠けることのないように。

失わないように。



end


風景描写を書いてみよう……
難しいですな
結局何が言いたかったのか、分からなくなりました

ただ、竜宮島のキレイな風景が見えなくなっていたのは、すごく辛かったと思う。
だけど、見えないから寂しさも薄らいでいたんじゃないかと、そんな気がします。

……竜宮島行きたい←



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