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□Notice
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「あ、皆城くんここなんだけど」
「あの!! 皆城先輩」
「オイ、ちょっといいかー」
総士が帰ってきてから、慌ただしく時間が過ぎていく。
問題が山積みだった上に、新たな問題まで様々なことが起きていたのだ。
おもに平和のため。
喜ばしいことではある。
先の戦いで、損傷した箇所の復旧作業にも携わっている。
責任感が人一倍強い所為。
何か手伝えることがあれば手伝いたいのだが、難しいことは分からないし、頭を使う作業は苦手で役に立ちそうもない。
最近まともに話してない。
今も、びっしりと書かれた用紙を見ながら史彦と話し合っている。
同い年のはずなのに、総士は大人と渡り合っている。
「皆城くんはすごいよね」
「遠見?」
「ここから見てると、ずっと遠いところにいる気がするね」
「実際、すごいよあいつは」
「うん。だけど、一騎くんは隣にいないとね」
人の心を見通すことに長けた少女の言葉。
「皆城くんが、皆城くんである為にも。一騎くんが一騎くんである為にも」
にこりと微笑んだ彼女が、そっと背中を押した。
話し合いが終わったのか、史彦を見送った総士と目があう。
声をかけようとしたのだが、忙しいのか総士はそのまま立ち去ろうとしていた。
「あ、あのさ!!」
立ち止まった総士に何か言おうと言葉を探す。
だけど何も出てこない。
「あ…えっと、」
口べたなのが嫌になる。
忙しい総士の邪魔はしたくない。
「どうした?」
「…なんでもない」
本当に何でもない。
だけど、何か……いや、ただ話したかっただけ。
最近まともに会っていなかったから。
「忙しいんだろ、引き留めて悪かったな」
違う。
本当は、もっと話していたい。
だけど、それはただの我が儘でしかない。
「…そうか」
だめ。
行かないで。
背中ばかり見ていたくない。
「…一騎?」
手が勝手に去っていく袖を追いかけていた。
離れないで。
離したくない。
「…あ、ごめん」
ぱっと手を離す。
ひらひらと手を振る。
迷惑はかけたくない。
かけてはいけない。
「何でもないから」
笑おう。
何でもないのだから。
「……一騎」
「何だよ?」
うまく笑えなかっただろうか。
本当に嫌になるほど、使えない。
「あ、そう言えば遠見先生に呼ばれてるんだった」
「…そうか」
「…そう。だから、行くな」
くるりとその場を去ろうとしたのだが、今度はこちらが引き留められた。
「…何?」
「……さぁな」
「何だよ…」
「…何だろうな」
「なんだそれ」
思わず吹き出した。
くだらない言葉遊び。
捕まえられた腕が引き寄せられた。
距離がぐっと近くなる。
「それでいい」
「何が?」
「……あんな顔。見たくはない」
「どんな顔だよ」
「一騎は顔に出やすいんだよ」
ふいと総士の顔が近くなる。
“かまって欲しそうな顔してた”
耳元で、小さく囁やかれた。
くすぐったい。
総士の髪が首筋にかかる。
「……その顔。他の人の前ではするなよ」
「…なんだよ、それ」
こそばゆい。
するりと背中に触れられたように、ぴくんと身体が反応する。
「このままどっかに連れ込まれたいか?」
「……いいよ」
「はぁ?」
「総士だったらいいんじゃない?」
「…おまえなぁ」
ははは、と笑う。
総士は呆れた顔をしていた。
指揮官様のこんな顔、滅多に見ることはない。
すごく貴重で、総士らしい顔。
「…へへへ」
「かなわないな」
「何が?」
「何でもないよ」
ぎゅうと抱きついて、ぐりぐりと顔を押しつける。
クスクスと笑う声。
少しの間だけで良い。
少しだけ、
ほんの少しだけ、
「で、どこに連れ込まれたらいい?」
「……これを渡し終えたら、考えよう」
総士が自分だけのものになるならそれでいい。
※ ※ ※
「あーもう!! 本当に、あの二人ってやきもきする」
「ホント。見てて焦れったいのよ!!」
「でも、なんか良いね」
嬉しそうな黒髪の少年に、ふふっと嬉しそうな笑みを浮かべる。
「でもさ、あいつらここが公共の場だって忘れてない?」
「いいんじゃないかな。幸せだったら」
かつての二人の関係とは、少し違うかもしれないけれど。
「あんたも、好きだったんでしょ?」
「うーん…でも一騎くんは、皆城くんと一緒じゃないとね」
あんな嬉しそうな顔されたら、見守るしかないじゃない。
二人の少年を観察する少女たちの会話。
呆れながらも、あれはあれで平和の形なんだろうなとうなずいた。
end
なんだか、同じような話しか書いてない気がするι
実は一騎のほうが独占力強そうですよね
でも、あんまり我が儘は言えなくて、「あうー」ってなりますwww
そんな一騎見て可愛いなぁって総士は思うんです
あ、、
下段でしゃべっているのは、真矢と咲良です
わかりにくさ満点☆←←←