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□春、蒼空
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春の陽気は心も穏やかにする。

柔らかく降り注ぐ日差しに、思わず欠伸を一つ。

授業に集中しようにも、春の陽気が邪魔をする。

ちらりと総士を見れば、眠そうな顔一つしていない。

昨日の徹夜したと聞いている。

学校の他にもアルヴィスの仕事もこなしているはずなのに。

クラスのみんなの大半は眠気と戦い、見事負けた生徒もいるというのに。



耳に掛けられた長い髪がするりと流れた。
色素の薄い髪。
触るとふわふわしている総士の髪。
左のサイドがひよんと癖がついていた。
癖がつきやすいと前に言っていた。



触りたいな。


そんなことを考えていたら、授業は終わってしまった。
途中からノートを取っていないがまぁ良いかと席を立つ。


お昼休み。

教室の中が騒がしくなる。


「総士」

「どうした?」

「ちょっといいか」



にぎやかな教室を出て屋上へ。

青い空に柔らかな日差しが降り注ぐ。

ぽかぽかと今日は暖かい。


「気持ちいいな」

「ああ」


大きく伸びをして、腰を下ろす。
青空に白い雲がふわふわ浮いていた。


「お前も座れよ」


ぽんぽんと隣を叩く。
足をだらんと伸ばして、もう一度背筋を伸ばした。

隣に総士が座った。
流れる雲はのんびりとしている。
すーっとそれを追っていくと、こつんと肩に頭が乗った。


「へへ……たまにはこういうのも良いだろ」

「まぁ…悪くはない」

「素直じゃないな…あ、いつもか」

「よけいなお世話だ」


肩が重いと頭がのけられて、元に戻る。

ひよんと跳ねた髪。
それに触れると、やっぱり柔らかい。
あの雲のようにふわふわして、気持ちがいい。


「俺、好きだな」

「……なんだいきなり」

「総士の髪…好き」


撫で撫でと、小さい子にするみたいにしたらにらまれた。


「……期待した?」

「何がだ」

「べつに…」


でもやっぱり撫でると気持ちいい。
指通りもよくて、撫でていたくなる。


「お前、最近寝てないだろ」

「……仮眠はしている」

「それじゃだめだろっ!!」

撫でていた手でぐいと髪を引っ張る。
バランスを取ろうとした総士より早く、亜麻色の頭を押さえ込んだ。


「なっ、にをするんだ!?」
「寝ろよ…まぁ、堅いとは思うけど、ないよりましだろ」


女の子みたいに柔らかくはないけど。
うっすらとできている隈をつつくと、照れなのか少し赤くなった。


「……おまえって、結構かわいいな」

「はぁ? おまえに言われたくない」


ふてくされた顔。
年相応に見える。
立場上、大人と同等に扱われるけれど、歳は同じ。

学校にいるときぐらい、甘えたって良いと思う。


「疲れてるんだろ。起こしてやるからさ」


頭を撫でた。
小さい頃に母親を亡くしているから経験はないけれど、きっと子供を寝かしつけるのはこんな感じなんだろうなと思った。
リズムを取るように、優しくあやす。


「な? 安心だろ」


総士はころりと頭の向きを変えた。
ひょんと跳ねた髪がこちらを向く。


「ちょ、何するんだよ!!」


腕が腰に回されて抱きしめられる。
ぴたりとお腹に総士の顔がくる。

かなり恥ずかしい格好。


「……抱き枕」

「はぁ!?」


まぁ、恥ずかしいけれど、総士が休めるなら良いか抵抗はやめた。

そのかわり飽きるまで髪を弄ろう。
三つ編みでも編んでやろうかとも思ったが、この陽気な空を見ているとまぁいいかと許してしまう。



「……悪くない」

「何が?」

「…おまえの、膝……」



ぎゅうと腕の力が強くなった。


甘えられている。
それが嬉しい。


亜麻色の頭。

優しいのにおい。



「おやすみ」



まだまだ時間はあるのだから。


そのうち規則正しい寝息が聞こえ始めた。



こんなにも、
あたたかくて優しい

春の空。



寝過ごすのは仕方がない。



遠くの方でチャイムの音が聞こえた気がした。








end


まだ寒い日が続いてますが、“寒さ暑さも彼岸まで”の言葉を願って!!


甘える総士が書きたかっただけ……
膝枕の時点で恥ずかしいも何もあったもんじゃないだろと、セルフつっこみ←←
まぁ、バカップルなんで悪しからずwww



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