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□snow
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さむい、寒い――
*snow
まるで身体が凍りついてしまうかのように。
かたかたと震える身体を鎮めようと、ひざを抱える。毛布を頭から被っても、その寒さは収まらない。
いっこうに温まらない身体は、ぎゃくに寒くなっていくような気さえする。
赤くなった目では、闇の中ではぼんやりとしか見ることが見えないが窓の外では雪がちらついていた。
比較的温暖な気候の竜宮島だが、年に数回は雪が積もる時がある。ミールがそれを調整しているのか、どうなのかは分からないが一騎は雪が嫌いだった。どうしてなのかは、自分でもよくは分からないが、幼いころから苦手だった。目が見えづらくなってからは、特にそれが酷くなった気がする。
白く覆われていく地面と、空を覆いつくす厚く暗い雲。
覆われていく白が、何もかもを飲み込んでいく。
「い、や…だ」
いつもは聞こえる風や波の音までも吸い込み、無が支配する。
何も聞こえない中で、一人で取り残されてしまったかのよう。
誰かに助けを求めようにも、その声も奪われてしまう。いや、誰に助けを求めていいのか分からない。
「そ……し、……」
「……一騎、なぜ呼ばない?」
「……そぅ、し? な、んで……」
閉じていた目を開くと、ぼんやりと人影が見える。長い髪が頬に触れて、そこが感覚を持つ。
今日は帰らないと言っていたのに、と一騎は首を傾げる。総士の冷たい指が、流れた涙を掬う。まだコートを羽織ったままの総士は、そのままベッドに腰掛けた。ゆっくりと重みで身体が傾く。
「……遠見に追い出された」
眉間に皺を寄せる雰囲気が伝わる。闇に溶ける黒い髪を、その手が撫でた。冷たかったそこが温まる。真矢の鋭い観察力が、一騎の心を読んでいた。彼女には全てが分かっていたのかもしれない。
「……だが、感謝しないといけないな」
闇が濃くなった視界に、総士の顔が近づく。抱きしめられて、包み込まれる。
外から帰ってきたばかりの総士のほうが、冷たいのに温められている。
「僕は、言わないと分からない」
「でも、総士に迷惑はかけられない」
「それは、迷惑とは言わない。迷惑か、迷惑じゃないかは僕が決める」
だから、一人で泣くな。耳元で言われた言葉が、内側に溶け込む。
すべてを溶かす。
「あり、がと……」
あたたかな感触と、やさしいにおい。
いつも以上に感じるその感覚に、少しだけ雪が嫌いじゃなくなった気がする。
あした、朝起きるときに、もう一緒にいたいと言ってみよう。
さむさを理由にして、雪の所為にして。
end
久々、ファフ。で、一騎が女々しい……でも、普段平気そうにしてても実は的な感じが好きです。竜宮島、そんなに雪がっつりつもらなさそうですけどねー。
今年は雪多いですし……寒い時こそ、イチャつけばいいんだよ!!!
こんな様な話、書いた気もしなくもないけど……←書いたら書きっぱなしで振り返らない人