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□にゃん、にゃん
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ぴくん。
ぴく、ぴくり――
黒い三角の耳がこちらを向いていた。
*にゃん、にゃん
「一騎…?」
もぞもぞとシーツの中から出てきたのは、眠そうな顔をした一騎なのだが、いつもと何かが違う。というのも、黒い艶やかな髪の頭に、普通にはありえない物が生えていたからだった。その黒髪と同じ、黒い三角の耳。
「ん…そ、しぃ……?」
ふわあと欠伸をすると、黒い耳がぴくんと動いた。もぞもぞと動いたシーツから、ひよんと黒く長いしっぽが覗く。総士は思わずそのしっぽを捕まえた。
「やッ!? な、なんだ!!」
流石にそれには目が覚めたのか、しっぽが逆毛立つのが分かった。状況を理解していない一騎は飛び起きると、総士の手に掴まれているものに目を丸くした。
「な、なんだよ、それ!?」
「それは、僕が聞きたい」
「それより、あの……離して」
一騎はしっぽを指さした。どう考えても生えているとしか思えないそれらは、感覚もあるらしい。ぱっと手を離すと、するりと黒いしっぽが逃げていく。
一騎の髪と同じ、触り心地のいいそのしっぽは、離すのが勿体無い。総士はしっぽの丸い先を再び捕まえる。すると、「にゃッ!?」となんとも猫らしい声が上がる。
「ほぅ……」
「な、な、なんだよ!?」
顔を真っ赤にさせた一騎の黒い耳が、警戒するようにぺたんと伏せた。総士はぐっと一騎に顔を近づけると、唇を塞いだ。突然のことに目を丸くさせた一騎は、ばたばたと暴れるたが、しっぽを掴まれている所為で妙に力が抜けて押し返せない。まるで確認されているかのように、口内を舐められる。
「やっぱり猫か」
「……はあ!?」
「いや、猫の舌はザラザラしているというからな」
「確かめるためかよ……」
「なんだ、不満そうだな」
「というより、寒い……」
「あ、すまん」
なにも身に着けていなかった一騎はよく見ると、鳥肌が立っている。昨日、シャワーを浴びてそのまま寝てしまった為。一騎はシーツを手繰り寄せて被りなおした。
「……あの、重い」
「寒いと言ったからな」
覆いかぶさってきた総士は、シーツごと一騎を抱きしめる。つんと黒い耳が立ち上がった。
「嬉しいのか?」
「……知らない」
ぷいと顔を背ける。首筋に、ふっと息を吹きかけるとぴくぴくと三角の耳が反応した。
「かわいいな」
「う……嬉しくない」
「まあ、普段から可愛いのには変わりないけど」
「な!? ……もう、いい」
真顔の総士に、一騎ははあとため息を付いた。しかも、よほどそのしっぽが気に入ったのかさっきから無意識に触っている。とても妙な感覚なのだが、だんだんとどうでもよくなってきた一騎は、心地のよいあたたかさに再び眠けがおそう。
「眠いのか?」
「う、ん……なんで、かなぁ」
「まあ、猫だからじゃないか?」
「そうか……」
ふわんと欠伸をした一騎の目がとろとろと溶けていく。もぞもぞと動いて総士に擦り寄った一騎は、寝心地のよいところを見つけるとぴったりと胸の辺りにくっ付いた。
「あったか、い…」
「よかったな」
「うん……」
ゆるゆると頭を撫でていると、やがてすうすうと寝息が聞こえ始めた。
「一騎、おやすみ」
ぴくんと声に反応する耳に口付ける。
黒いしっぽは、ぱたん、ぱたんと嬉しそうにシーツを叩いていた。
end
裸で戯れる総一(けもみみ)が書きたかったんです。
設定まったく生かしきれずorz
ほんとはもっと動いて欲しかったのに、一騎ネコさんはどうやらまだ眠かったようです←←