蒼穹
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待つことは、なれている。
だから、平気だと思った。
「ねえ、一騎はいつもこうなの?」
「え?」
来主の言葉に、一騎は首を傾げる。
来主の話はいつも唐突で、脈絡もなく話が始まる事はよくあること。だけれども、あまりにも唐突過ぎて、何を言っているのか一騎には分からなかった。
「だから、そうやって待ってるの?」
来主は箸で一騎を指した。行儀が悪いと、その手を叩く。
ぼーっとしていたことを指摘されたのだと気が付くが、何を待っているというのだろうか。来主はやれやれと、今度は指をさす。まったく食べていないお弁当箱は、蓋を開けただけだった。
「あ、欲しいならやるぞ」
「ちっがーう!!」
力いっぱい否定されて、ため息をつかれた。
「一騎は何を見てるの?」
「え?」
「待っても、総士は来ないんだよ」
長期の仕事で総士は島を出ていた。
帰ってきてからの総士は、島の状況やシステムの向上のためにアルヴィスにこもりっ放しの日々だった。
学校にも一度も顔を出していない。忙しいのだから、それは仕方がない。
「一騎は、それでも待つの?」
来主の問いかけに、答えることは出来なかった。
箸をおろす。一騎は手をつけていないお弁当箱を来主に押し付けた。
「それ、食ってくれ」
「一騎っ!?」
来主の声を無視して走り出す。
もう待つ必要はなかった。
会いたければ会いに行けばいいのだと、今更だけれども気が付いた。
「来主、ありがと!!」
ばたばたと走り去った一騎を来主は見送った。
手渡されたお弁当は、どれも美味しそう。美味しいという感覚を教えてくれたのは、多分一騎だった。
「うん、おいしい」
手作りのから揚げは、とても美味しい。
「だけど、一騎がいないとおいしくないや」
“平行線をたどる日々”
End
一騎と見せかけて、平行線は来主でした。
……最近、まともに総士を書いていない気がι
そろそろ、甘い総一を書こうかな