蒼穹

□キミのぜんぶ
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*キミのぜんぶ





すらりと伸びた長い指。
その指が、カタカタとパソコンのキーボードを弾く。規則正しくなる音がときどき止まって、またカタカタといい始める。
ぴたりと音がやむと、右手が近くに置いてあったコーヒーカップを掴む。
ブラックのコーヒーを飲んだ総士が、パソコンから目を放して一騎を向く。


「……そんなに見られても困るのだが」

「なんでだ?」

「面白くもないだろ」


ベッドに寝そべっていた一騎は、起き上がって総士の手を取る。指の一本、一本を確かめるように手を合わせた。背の違いもあるのだが、一回りほど一騎よりも大きい。
すらりとした長い指と、整った綺麗な爪。家事をする一騎とは違って、総士の手には傷もない。


「俺、総士の手すき」


総士の右手を掴むと、一騎は自分の頬に当てる。
少しひんやりとして、徐々に同じ体温になる。


「この手で触られるのも、すき」


頬に当てた手の上から一騎は手を重ねる。


「そうか」


総士の左手が、一騎の髪を撫でた。一騎の黒くて柔らかい髪を、何度も総士は撫でる。うっとりと一騎は目を閉じた。
頬に触れていた右手がするりと離れて、一騎の腰を引き寄せる。膝の上に一騎を乗せると、後ろから抱きしめた。一騎の手に自分の手を重ねる。ぎゅっと一騎は総士の手を握り返した。一騎の細めの肩に顎を乗せる。


「僕は一騎の全部が好きだがな」

「それって、すごい告白だな」

「事実を言ったまでだ」


わき腹あたりを撫でられて、くすぐったさに一騎は身を捩る。総士の手から離れて、膝を跨いで向かい合わせになった。総士の顔をじっと見た一騎は、くすくすと笑い出す。


「拗ねるなよ、総士」

「僕は別に拗ねてない」

「俺だって、総士の全部好きだぞ」


総士の唇にちゅっとキスをして、一騎はニコリと笑った。
総士の頭を抱きしめて、長い髪を撫でる。


「柔らかくて長い髪も、目も、鼻も、口も、手も足も……ぜんぶ」


パソコンの画面が暗くなって、スクリーンセーバーに切り替わる。
一騎の黒い目が覗き込んできた。
一度は視力を失ったその瞳が、総士を映し出す。



「総士?」

「それは愛されているな」

「おまえは違うのか?」

「いや、違わない」




重なった唇。

長い、長い、キス。



5本の指が、重なって、絡んだ。

しっかりと合わさって、離れない。




End


甘い総一がやっぱり好きです。
手が綺麗な人って、いいですよねー。総士の手はきれいであってほしい!!
一騎ちゃんは家事をする所為で少し荒れ気味。
なので、総士にハンドクリームをつけてもらって下さい!!!
そんな話どこかに転がってないかなー





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