蒼穹
□きみを想う気持ち
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総士が笑っていた。
帰ってきてから、本当に表情が柔らかくなった。
真矢やカノンもそう言っていたのを一騎は聞いた。
*きみを想う気持ち
別に、総士が笑っているがイヤだということではない。
今まであまり笑わなくて、きれい過ぎるその顔がみんなを遠ざけていたことを知っていたから。
自分の中の独占力がコレほどまでに強いものだったのか。一騎は、その醜い気持ちを押し殺して近づいた。
「一騎、どうしたの?」
「なんでもないよ、来主」
「そかなぁ?」
純粋そのものの操の瞳が、一騎を映し出す。操は、飲んでいたジュースを差し出した。
炭酸のオレンジジュースが、ぱちぱちとはじける。
「これ、あげるね」
「あ、ありがと……」
「じゃ、俺は行くよ」
「ああ、人に迷惑をかけるなよ」
「かけないよーっだ!!」
べーと総士に向かって舌を出して、操はいってしまった。操に貰ったジュースはまだ半分以上残っている。
どうしたらいいのだろうかと、一騎はちらちらと目をそらせた。
「座らないのか?」
「あ、ああ。座る」
さっきまで操が座っていたところに腰掛けた。総士から見て、右斜め側にあたる。持っていたコップをとりあえず、テーブルの上に置いた。
「あのさ、邪魔じゃなかったのか?」
「いや、別に」
総士は缶コーヒーを飲んでいた。
コトンと、缶がテーブルに置かれる。さっきまで操と話していたときには、和らいでいた総士の表情は、いつもの無表情に戻っている。
お前と話していても、楽しくないと言われているみたいだった。
「なんの、話してたんだ?」
「……たいした話じゃないさ」
「そう……なのか」
ただ純粋に、興味があっただけだった。一騎もそうなのだか、総士も相当の口下手で、だからどんな話をしていたのか気になった。他の人と、どんな話をしているのか気になってしまう。総士が誰とどんな話で笑ったのか、知りたい。
だけれども、するりと総士に交わされてしまっては知ることは出来ない。
一騎は、操から貰ったジュースに手を伸ばした。
「……一騎」
「なんだ?」
口をつけようとした所で総士に呼ばれて、一騎はそちらを見た。
こいこいと手招きされて、一騎は腰を浮かせた。総士の人差し指が隣を指す。ふらふらと、言われるままに一騎はそこに座った。
「一騎、こっちを向け」
「なんでだ?」
「いいから」
顔を上げると、総士の目が真っ直ぐにこちらを見ていた。
持ってしまった醜い感情を見透かされそうな瞳。視線をそらしたくても、逸らす事を許さない。
「怒っているのか?」
「怒ってない」
「そうか…じゃあ、何か不満か?」
「……不満は、ナイ」
ないといえば嘘になるけれど、これは一騎が勝手に持ったもの。だから、総士には不満はない。
だけれども……。
一騎はぷくりと膨れた頬を色素の薄い髪に押し付けた。サラサラとして絹のような長い髪。
腕を首にまわして、顔を見られないようにする。
「不満はない……か」
「……ごめん、嘘」
ふうと総士が息を付いた。一騎はぎゅうと力を強めると、背中に総士の手が回る。そろそろと背中を撫でられて、一騎は力を緩めた。
「総士が……笑ってたから」
「僕が?」
「そう。なんだか、無性に嫌になった」
「……そうか」
「いや!! 笑ってるのが嫌なんじゃなくて……何ていうか……」
上手く言葉が伝えられなくて、目が泳ぐ。
素直に言えばいいことなのだか、それが難しい。
一騎の手が長い髪に伸びる。一房すくって手の中で玩ぶ。
「僕は不快に感じていないから。それで良いがな」
「不快…じゃない?」
「一騎は嫉妬している」
「嫉妬……」
手の中にあった髪がするりと逃げて、総士の視線と重なった。
瞳の中に自信が写る。少し細くなった目にも、はっきりと一騎は映りこんでいた。
「それだけ、僕のことが好きと言うことだ」
「……なんだか、すごい自信だな」
「悪いか?」
「いや、悪くはないけど」
腰に回された手が、一騎を引き寄せた。総士の膝に乗りかかるのは少し躊躇ったが、素直に乗りあがる。目の高さが同じになった。
「まあ、僕も似たようなものだしな」
「総士が?」
「……無自覚なのも、考えものだな」
首を傾げた一騎を、総士は笑う。苦笑いに近いその顔。
ぐりぐりと黒い髪を総士は撫でた。
下りてきた唇は、コーヒーの味がする。総士の指さすほうを見ると、すっかりと炭酸の抜けてしまったオレンジジュースがあった。
「喉が乾いたのなら、新しいのを買えば良いだろう?」
「いや、別に乾いてた訳じゃないし……捨てるの勿体無いから?」
総士の顔が、むすりとなって低いと自覚している鼻が摘ままれた。地味に痛い。
何か怒らせることを言っただろうかと、考える。
「一騎に考えさせても無理か……」
「ちょ、俺がバカみたいじゃないか!?」
「いや、バカにはしていない」
摘んで赤くなった鼻の先を、ぺろりと舐められる。一騎は少し上を向いて、総士の唇に口付けた。ちゅっと軽い音に、少し赤くなる。
「僕も嫉妬しているということさ」
「来主に? そうなのか……」
なんだか恥ずかしい。
恥ずかしくなって、首筋に顔を埋める。
ほっとして、優しくて、大好きな匂いがより近くなる。
“僕がきみを、想う気持ち――”
それは、大好きの気持ち。
「つか、おまえらいちゃつくなら、余所いけ」
end
でろんでろんに甘い話を書こう。と思ったんですが……そこまではならなかった(д
総一にとって、膝の上で話しをするのは普通なんです!!
ちなみに、アルヴィスの休憩スペースでいちゃついてます。
ピンクオーラで、総一は気付いてませんが、まわり胸焼けしっぱなしwww
最後の突っ込みは、誰でも良いんですけど、真矢あたりですかねぇ←←
ちなみに、操と総士が話してたのは、「いかに一騎が可愛いか」です←どうでも良い