蒼穹

□Voice
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こんな気持ちは知らなかった。
戸惑いとともに感じたこの感情の行き場所を、僕は知らない。




*Voice





熱で犯された声で、名前を呼ばれる。嬌声の合間に呼ばれるその声は、普段よりもずっと艶めかしい。汗でしっとりと濡れた肌に黒髪が張り付く。
後ろから一騎の細い腰を掴んで、己の欲望を押し付ける。一騎のナカはとても温かい。苦しそうな呼吸と、震える身体。腰だけ高く上げられた一騎は、伸ばした手でシーツを掴む。
受け入れることを目的としない器官を無理やりこじ開けて、熱く波打つ欲望をねじ入れる。非生産的でこの行為自体の意味は、ある宗教的に見れば罪深く、人間ゆえの欲深さでしかないとも言える。


「そ、しぃ…っ! はっ、あぁ……ッ!?」


一際高い声をあげて、一騎は果てた。何度目なのかもう分からない。そのせいで、一騎の放った精液はとても薄かった。くたんと弛緩した身体をそれでも揺さぶると、一騎のナカに注ぎ込んだ精液がぐちゅぐちゅと泡を立てる。


「も、やぁ……そぉしっ、あっ…んっ」

「煽ったのは、おまえだろ?」


ずんと腰を進める。大きく一騎の身体が反れて、またシーツに倒れ込む。快楽と疲労で塗れた一騎の顔がこちらを向いた。涙で潤んだその顔に口付けする。伸ばしてきた手を捕まえて抱き寄せると、がくがくと一騎の脚が震える。僕を挟んで開いた脚が腰に絡む。


「そぉしっ、そーし……んっ!!」


唇を塞いで、歯列をこじ開ける。絡めた舌を食んで吸い付いて、口内を犯す。一騎の指が僕の髪を掴んで、くんと引っ張った。触り心地の良い黒髪を撫でていた手を滑らせて、平たい胸に触れる。ツンと立った乳首は赤みを増して、指でそれを押しつぶす。ピクリと反応した舌が、一瞬だけ引っ込んだ。唇を離してにやりと笑う。濡れた唇から、たらりと零れた唾液が顎を伝った。


「酷い顔だな」

「そぉ、し……の、せいっ、ヒッ、あぁ!!」


再び立ち上がっていた一騎の陰茎を掴む。数回扱くと、一騎のナカがぎゅうぎゅうと締め付けてきた。一騎を掴んだまま、あいた手で脚を持ち上げる。その脚を肩に掛けると、苦しそうな声が漏れた。


「やっ、やだぁっ、このかっこ……あ、やぁ!」

「嘘だな。一騎は嘘つきだ」


首を左右に振った一騎を横目で見ながら、僕は結っていた髪を解く。びくびくと波打つ一騎の陰茎に髪ゴムを巻きつけると、じたばたと一騎は暴れた。欲を吐き出せなくなった身体が細かく震える。ぐるぐると身体中を巡る熱が苦しいのか、一騎は金魚のように口を開けた。


「やぅ、ああ……はなっ、離し、そぉしっ!?」


自ら外そうとする手を捕まえて、トンと一騎の身体を押した。後ろに倒れた衝撃で目を閉じた一騎の頬に手を当てる。震えている唇に自分のそれを重ねると、一騎はゆっくりと目を開けた。その唇を耳元にずらして、外耳に口付けて囁く。


「ほら、見えるか?」

「やぁ、み、見るなっ!? ひゃっ、あぅ!」


一騎に見せ付けるように、わざとゆっくり動く。一騎と結合したその場所が、限界まで開いて白い泡を立てる。ふるふると震えて濡れぼそった一騎自身が主張する。
見開いた一騎の目にその姿はどう映りこんだのか、意外にも目を逸らさずにどこかうっとりと一騎はそれを見ていた。ぐぐっと膨らんだ陰茎にゴムが食い込む。先端の穴からとろとろと先走りがあふれ出す。


「や、やぁっ! んっ、そぉしぃ……やあっ!?」


わざと浅いところを突くと、一騎はいやいやと首を振る。伸ばされた手が首に回って、顔を引き寄せられた。自然と奥に飲み込まれたその衝撃に、一騎の腰が浮く。ぱたぱたと一騎から零れた蜜が、自らの顔に掛かった。


「あ、はっ!! おくぅ、もっと…っ、奥が、いっ!」


その言葉に従って、ずんと奥を突く。そのたびにナカが収縮を繰り返す。まるで搾り取るようなその動きに、理性が吹き飛ぶ。ぱん、ぱんと皮膚がぶつかる音と、ぐちゅぐちゅと一層泡立つその音が聴覚を刺激する。涙と体液でぐちゃぐちゃになった一騎の顔に視覚が。衝撃に耐えるようにシーツを掴んでいた手を合わせると、一騎の指が絡んだ。惹かれるように唇を重ねると、一騎の口内はひどく甘い。汗をかいた身体と精液特有の匂いは不快なはずなのに、より感情が高ぶった。五感全てが刺激され一騎のナカに、その熱を注ぎ込む。吐き出された熱に反応して、吐き出す術を塞いだはずの一騎も同時に果ててだらりと身体が弛緩した。一騎を縛っていたゴムを取ると、溜まっていた熱がゆっくりと吐き出される。長く続く射精に一騎の身体がびくびくと震える。


「あっ、あぁ…とま、ら、なっ、そぉしぃ……」


さらさらと色を失った精液が流れ出る。ゆっくりとしか熱を吐き出せない苦しさに、一騎の顔が歪む。助けを求められるように伸ばされた手を繋いで、もう片方の手で一騎の陰茎を握る。その刺激だけでぱんと果てて、一騎の意識は飛んだ。
ぐったりとした一騎のナカから、僕自身を引き抜く。無理やり開いていたそこは、閉じられることなくひくひくと収縮を繰り返す。放った精液がとろりと零れ出て、シーツに染みを作った。
その姿はあまりにも卑猥で、しかしとても愛おしい。そう思えることが不可思議で、その正体を知る為なのか手は勝手に一騎に伸びる。


「かずき、一騎……」


汗では張り付いた前髪を払って、その額に口付ける。頬、そして唇に口付けて、もう一度名前を呼んだ。
一騎に名前を呼ばれると、ざわざと胸がざわつく。その声は僕を惑わして、いとも簡単に僕の理性が崩れ去る。
一騎の頬を撫でていると、寒かったのか一騎は身体を丸めた。このまま裸でいるのは風邪を引いてしまう。汗をかいているから尚更に。そう思って立ち上がろうとすると、くんと腕を掴まれた。目を覚ましたのだろうかとそちらを見ると、一騎は目を閉じたままだった。掴まれた手首に一騎は擦り寄ってくる。偶然なのか無意識的なその行動に、頬が緩む。


「一騎、もっと僕の名前を呼んでくれ」


自分でも驚くほどの柔らかいその声が、一騎に届いていないのが少し惜しい。
一騎が風邪を引かないようにシーツを手繰り寄せる。丸まった一騎をそのまま抱きしめると、ちいさく身じろいだ一騎が熱に引かれたのか胸に擦り寄った。


「そぉ、し……」


呼ばれた名前に一騎の頭を撫でる。
性を吐き出すには非効率的で、ある意味加虐にも似たこの行動。
その始まりは紛れもなく、この声の所為。いや、この声に惑わされた僕自身。

荒唐無稽なこの論理は、果たして結論を導き出せるのだろうか。




end


久々、がっつりエロ。少し総士が意地悪く、マゾっぽい一騎さん。
甘くするつもりはなかったけど、やっぱり最後は甘くなる……
ちゃんと後始末はしてあげましょう。

今月末のオンリーに胸が高鳴りっぱなしです。






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