蒼穹

□夏が来る
1ページ/1ページ





暑さが日に日に増していく。じりじりと素肌を焦がすような太陽はすっかりと夏のもの。
しかし、温度調節されたアルヴィスの中は、暑さとは無縁。夏休みに入って家にいても暑いだけだと、一騎は総士の部屋に押しかける事にした。




*夏が来る




「そう……生きてるか?」


しかし、総士の部屋はパソコンが常に付いている所為なのかほかの部屋よりもかなり暑く感じられる。その室内で、だらりとベッドに沈んでいる総士に思わずそう問いかけた。うつ伏せになっているため、息が出来ているのだろうかと疑問も浮かぶ。さらさらの長い髪が首筋に張り付いて、暑さが倍になっている気がした。


「そ、総士?」


つんつんと突っついても、反応はない。流石に心配になって呼びかけてみる。
そういえば、室内でも暑さで熱中症になることもあると千鶴から聞いた記憶がある。これは、もしかしたら危ないかもしれないと、一騎はゆさゆさと揺さぶった。うつ伏せなのがよくないかもしれないと、寝返りを打たせる。目を瞑ったままの総士に、一騎は目を見張った。


「ちょ、そ……総士、総士!!」

「……あ、一騎…?」


ばしばしと何度か叩いたところで、総士はぼんやりとした目をこちらに向けた。ほっと胸を撫で下ろした一騎に、総士は首を傾げて起き上がる。張り付いた髪を鬱陶しそうに手で払うと、総士は一騎に手を伸ばした。


「どうした?」

「どうしたじゃないだろ!! なんで、呼んでも目を開けないんだよ!?」


伸ばした手はぱんと、一騎に払われた。状況をまったく理解していない総士は、なぜ怒鳴られなくてはいけないんだとむすっとしている。半そでから伸びた一騎の腕を掴んで引き寄せると、しっとりと汗で濡れた肌の感触があった。


「すまない」

「目、覚まさないかと思った」

「それはない。僕は――」


言葉を遮るように、一騎は総士の口を手で塞いだ。そのまま押し倒された総士は、一騎を見上げる。不安げに下がった眉根に、総士は塞いでいる手を掴んで離す。崩れるように倒れ込んできた一騎を抱きしめると、黒髪が首筋に触れた。


「一騎?」

「それ、もう言うなよ」

「……分かった」


一騎の背中を撫でると、総士は枕元にあった空調のスイッチを強めに入れた。涼しい風が室内の温度を下げる。


「で、なんですぐに反応しなかったんだ?」

「ああ、来主が干渉してきていた」

「操が?」


いつまでも重いだろうと退こうとした一騎は、総士の腕によって阻まれた。思いっきり腰を抱きしめられて、退くことができない。総士のほうを睨むと、しれっとTシャツの裾から手が入ってくる。わき腹あたりを擽られて、一騎はびくりと肩を揺らした。


「こっちに来たいらしい」

「ちょ、やめっ……はあ、なんで?」

「さあな、それは知らない」


総士がフェストゥム側から帰ってくるきっかけを作ってくれた個を持ったフェストゥム。それが来主操だった。敵であるはずなのに、無邪気すぎる顔で笑っていた。その顔を思い浮かべていた一騎は、いつの間にか進入してきた手が胸の飾りを押しつぶした事に思わず声をあげた。これまたいつの間にか捲りあげられたTシャツは、既に腹の上のところまできている。


「ちょ、どこさわっ……っん!?」

「無駄だとは思うが、来るなとは言った」


操自身はフェストゥムだが、人間を攻撃することはない。だが、やはり島の人間の中にはまだ操に関して良い感情を抱いていないものもいる。そう話しながら、総士は身体を反転させた。見下ろした一騎は、見開いた目をこちらに見向けている。押しつぶしていた乳首がぷっつりと立ち上がる。赤みをましたそこに、総士は爪を立てた。


「イタッ!」


一騎の言葉に、総士はもう片方に手を伸ばす。触れていないはずのそこも、同じように立ち上がっている。押しつぶすように触ると、びくびくと身体が揺れた。


「や、そ…し、ひゃっ!」


思わずあげてしまった声に、一騎は口を結ぶ。総士はちらりとそれを見ると、赤く小さな飾りに舌を這わせた。くりくりと舌で弄ぶように舐めると、一騎の身体が弓なりになる。突き出したようなその姿勢に、総士は口元を歪ませた。汗をかいていた身体は少しだけしょっぱい。それを耳元で告げると、一騎は身体を捩った。押しのけようとする一騎の手を捕らえて、頭の上に上げる。何か言いたそうな一騎を尻目に、総士は口に含んだ片方を軽く食んで、吸い上げる。堪えきれずに声をあげそうになった一騎は、自分の口を手で塞いだ。


「苦しくないか?」


紅葉した頬と濡れた目が首を振る。少しでも手を離すと、漏れてしまう嬌声が恥ずかしい。
そう思っていることぐらい、総士にも察しはついている。どこまで耐えられるかと、総士はもう一度、そこを引っ掻いた。もうすっかりと一騎の下半身も反応している。熱くなったそこは、無意識に総士の腰に押し付けていた。
漏れる息が熱を帯びる。徐々に体温を上げる身体に反して、総士の身体は変わらない。一騎の身体が体温を上げるほど、その温度差は開いて余計にその手を意識してしまう。
空いていた手がズボン中に入ってくる。ひんやりとした手が熱くなった身体を触る。その感覚がくすぐったい。進入を阻もうにも、手を離せば声が漏れてしまう。


「手、どけないのか?」


意地悪くそう尋ねる総士に一騎は睨むが、相手にはまったくされない。進入した手は下腹を滑って、太ももに触れた。付け根のぎりぎりの箇所を滑らせた手が一騎自身を掴んだ。既に熱くなって立ち上がったそこは、どくどくと波打っている。すぐにでも達してしまいそうなそこを、総士はゆっくりと擦った。一騎の目に涙が浮かぶ。苦しければ手を離せばいいのにと、妙なところで一騎は強情だった。一騎自身を掴んだまま、総士はその目元に唇を寄せる。押さえ込んでいた手を離すと、その手は総士の背中に掴まった。どくどくと熱い一騎自身は、数回擦るだけですぐに総士の手の平の中に性を放つ。はあはあと苦しそうに息をする一騎を見ると、唇の端が切れていた。


「強く噛みすぎた」

「おまっ、おまえのせ――んっ!」


切れた唇の端を舐めると、血の味がする。総士はそのまま一騎の唇を塞いで、するりと一騎の下半身から服を奪う。一騎の放った精液をそのまま後ろの窄みに塗り込んだ。絡んでいた舌が、ぴくんと引っ込む。固く結ばれたそこにぷつんと指をいれる。精液が潤滑油になって、そこはするりと指を受け入れた。


「まだ、柔らかいな」

「うるさっ、いっ!?」


すぐに馴染んだそこにもう一本足そうとしたところで、誰かが部屋の近くに誰かの気配がした。それを感じた総士は、すぐに行為を中断しようとするが、それよりも早く部屋の扉がシュンと音を立てて開いた。


「そーうし!! って、あれ?」

「……おまっ!?」

「あ、一騎もいる!! ねえ、総士と一騎はなにしてるの?」


操の純粋な目が首を傾げて二人を見た。しかも位置的に、一騎のそこに総士の指が入っているところがばっちりと見えている。何が起こったかまったく分からない一騎の思考が一瞬停止して、今までにない程高速回転する。導き出した結論は、総士を殴る事だった。



* * *



「で、なぜ竜宮島に来られたんだ」



恥ずかしさから逃走を図ろうとしていた一騎を無理やり捕まえて、総士はシーツを被せる。膝を抱えて丸まった一騎は、操から隠れるように総士の後ろにいた。それというのも、さっき見た光景を疑問いっぱいで総士と一騎を質問攻めにするという、ある意味発狂するほど恥ずかしいその問いを、一騎は「黙れ、ショコラ呼ぶぞ!」の言葉で押し切ったから。
なぜか犬が怖い変わったフェストゥムは、それで大人しくなって静かに椅子に座っていた。
通常であれば、人型を取っていたとしてもフェストゥムの島への侵入はすぐにソロモンが察知して警告を出すはず。しかし、操がここにいるにも関わらず警告は発せられなかった。


「え、なんで来ちゃダメなの?」

「……いや、そう言うことではなく」

「だって、キミ達のミールはどうぞって言ってくれたよ」


どうやら総士に干渉する前に、すでにこの島のミールに干渉したらしい。大胆というか、わざわざ行くと伝えるフェストゥムはどうなのだろうか。アルヴィスの奥で眠る妹は、予想以上に操には寛容らしい。


「ねえ、一騎。また一騎カレー作ってね!」


シーツを被った一騎の顔を覗き込んだ操は、見る見るうちに赤くなる一騎に首を傾げる。ぷいっと顔を逸らして、一騎は二人に背中を向けた。


「やだ」

「えー! なんでぇ一騎ぃ!?」

「うるさい、黙れ!!」

「なんでぇ、なんで僕が怒られるの。ねぇ、総士!?」


また始まってしまった操の質問攻撃と、一騎の機嫌がどんどんと急降下していくこの状況に、どう対応していいのか総士は頭を抱えるのだった。




ちなみに、なぜ操が竜宮島に来たがったのかと言うと、総士の記憶を読んで得た知識の中に、この時期なるとお祭があるから、ということだった。
今年のU計画はまたしても、大波乱な気がしてならなかった。






end


子供に夜の営みを見られた親的な感じですかね。
夏と一緒にみさみさ到来!! 空気の読めない子、それが来主操です←







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ