蒼穹

□うしろ姿
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お題参考:反転コンタクト


トントンと、規則正しい音がする。
温かい家庭の音と匂い。



*うしろ姿



一騎の家に招かれる事は多い。アルヴィスで寝泊りすることが多い総士は、放っておくと、まともに食事をしない為。ことを見抜かれてから、それは習慣になった。一人分多くなるぐらいは大したことはないから来い、と半ば強制的に始まった。
真壁家の居間からは台所がよく見える。ピンク色のエプロンをつけた一騎は、忙しなく動いていた。
まな板の上で野菜を刻む音や、ことことと鍋から煮込んでいる音もする。立ちこめる香りは、空腹の腹には魅惑的なもの。家庭とは長らく無縁だった総士にとって、かなり新鮮にその姿は写った。


「一騎」

「もう少しで出来るからな、総士」


総士の呼びかけに、一騎はくるりと振り返った。ピンクのエプロンもふわりと揺れる。にこりと笑う一騎のそのビジョンは、どうしてその衝動を掻き立てられた。
一騎は総士の様子を特に意識することなく、再び料理に取り掛かった。再び揺れたエプロンと、細めの腰に結ばれたリボン。黒い髪から見える襟足が、動くたびに揺らめく。
すくりと立ち上がった総士は、一騎の背後まで忍び寄るとタイミングを見計らって肩から手を伸ばして抱きしめる。出汁やご飯の匂いに混じった一騎の匂いがした。


「ちょ!? なんだよ!!」


タン、と切れた大根がころころとまな板から転がる。抱きしめたまま、細い首筋に顔を埋めると、ピタリと一騎の手が止まった。そのままその場所に吸い付くと、ぴくりと肩が揺れる。


「あ、危ないだろッ!」

「なら、置けばいい」


包丁を持つ手に手を重ねると、指を外していく。俯いたまま、耳まで赤くなった一騎は包丁を置いた。遠慮なしに腕に力を込めると、ふっと一騎の力は抜ける。俯いたままの顔を総士は持ち上げて、その顔を覗き込んだ。きょろきょろと泳いでいた目が、諦めたように視線を合わす。


「な、なんだよ」

「いや、僕はただ欲望には忠実なだけだ」

「はあ!? なんだそれ!!」


反撃にあわないようにと、濡れている一騎の手を取ってそのまま腰を抱きしめる。唇を合わせて、味わうように柔らかいそれを吸う。寄りかかった一騎を支えながら、エプロン越しに胸の飾りに手を伸ばした。平なその飾りを摘んで弾くと、つんとそこは立ち上がる。エプロン越しにもわかるその形にくすりと思わず笑みが零れる。


「ふぅ、あぁ……っ!」


重なったままの唇から零れる水音とくぐもった声。徐々に一騎の力は抜けていく。かくんと倒れ込みそうになったのを支えると、総士は唇を離した。唇の端から零れた唾液が顎を伝う。間を繋ぐ銀糸が切れると、総士は一騎の下半身に手を伸ばした。が、ぱしん、と総士の手は叩かれた。ぺたんと座り込んだまま、潤んだ目が睨みを利かせている。


「煮物が焦げたらどうする!!」


開口一番に言われたその台詞。場の雰囲気を見事にぶち壊すその発言に、総士は思わず吹き出した。


「ちょ、笑うな!!」

「そ、その、すま…なかっ…」

「全然思ってないだろ、お前!?」


笑いを抑えようとしているが、明らかに肩が震えている。こちらを威嚇したままの一騎に、総士はコンロの方を指さした。


「本当に、焦げるぞ」

「え……うぁああああああ!?」


コンロの火を止めて、一騎はほっとしている。どうやら煮物は無事だったらしい。


「ったく、何だっていきなり……」

「男心だ。お前には分からんかもな」

「なっ、俺だって男だ!?」





“後ろから抱きしめるなんて卑怯者!”




エプロンを付けたうしろ姿に、ときめかない男はいないだろ?




End


そういえば、一騎が料理してるところって書いたことないなと。
一騎ちゃんのエプロン姿って、総士じゃなくても襲いたくなりますよね!!
そのうち皆城が裸エプロンとかさせるんじゃないでしょうか←←







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