book4

□飽きのこない攻防戦
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「寒い・・・・・・さーむーいぃいいいいいい!」
「おまえは蓑虫か」


今年もやってきた蓑虫キラは、ぐるぐると身体に巻き付けたシーツの中で絶賛わがまま中だ。
いつの間にやら夏の気配はすっかり消えて、朝晩は特に寒くなってきた。空もすっかり高くなった秋の様子で、冷たい空気は心が洗われるようだとアスランは感じている。
部屋のこもった空気を入れ替えるため、窓をあけるとすっと爽やかな風が吹き込んできた。


「寒いから開けないでよ!」


だけれども、キラにとってはそんな風情は、ぐるぐる巻きのシーツの中で吠えて威嚇するべき憎き相手でしかないのだ。
これから先、どんどんと寒くなっていくばかりなのに、今からこれでは先が思いやられる。


「はいはい。もう閉めるからさっさと起きろ」


部屋の空気はもう入れ替わった。外の新鮮な空気は、それだけで頭もすっきりとする。


「やだ。寒いから出たくない」


キラはふいとそっぽを向くと、もぞもぞとシーツの中に潜り込む。
朝の空気が気持ちいいと感じるのは、キラには全く理解できないらしい。寝汚いキラらしい意見だが、だからと言ってずっとベッドの中にいる訳にもいかない。


「今日は会議もあるんだろ? カガリと出席するんだろ。遅れると俺がラクスに言われるんだぞ」
「カガリも絶対遅れてくるね! 今頃マーナさんに起こされてるよきっと」
「何を威張ってるんだお前は。この寝汚い双子め!!」


こうなったら実力行使で、力任せにシーツをひっぺ返す。掴んで一気に転がすと、ごろごろ転がったキラはドンと壁に激突する。思いのほか勢いよく転がった所為で、そうとう痛そうな音がした。


「悪い。強すぎた」


シーツをひん剥かれたキラは、頭を押さえて足とバタつかせている。
昨日は身体を重ねて、そのままキラは寝てしまった。起こすのは忍びなくて、キラの身体を拭いたあと、アスランもそのまま寝てしまったのだ。


「痛い! さむっ! 痛いーーっ!!」


頭を押さえて丸まったキラは、涙目をこちらに向ける。睨まれているのだけれど、全くもって迫力はない。


「アスランのバカ、アホ、エロ魔、ハゲ!!」
「おいコラ。いつもいつも懲りずに起こしてやる俺に向かってなんだその暴言は」


再びシーツに潜り込もうとするキラより先にシーツを奪って、ベッドの下に放り投げる。シーツを掴み損ねたキラの腕を掴むと、ぶつけた頭を撫でる。たんこぶが出来てしまったそこは、少し熱を持っている。


「ごめんな。痛いか?」
「・・・・・・まあ痛いけど、それほどは」


うつむいたキラの旋毛をもう一度撫でる。裸の身体には、確かにこの気温は少し寒すぎる。


「・・・・・・寒い。昨日服着せてくれなかったアスランの所為だ。風邪ひいたらアスランの所為だ」
「それは悪かった。風邪ひいたら責任持って看病してやるよ」


コーディネーターは、そう簡単に体調を崩すことはない。単なる言葉遊びだけれども、このやりとりは気に入っている。
思えば月にいた頃から、布団に籠もったキラを引きずり出すのはアスランの役目だった。いったいいつになったら、この役目から解放されるのやらと、こちらを見つめる紫の目に問いかけたい。



「もう目は覚めたな」
「・・・・・・お陰様で」


ぷくりと膨れた頬で、キラは服を掴んでくる。それから暖を求めてへばりついてくる。


「あったかいー」
「このまま寝るなよ」


裸のままぎゅうと身体を擦り付けて、わざとなのか腰に足が絡む。朝からなんとも激しい誘惑に、気が緩みそうになる。


「そろそろ服着ろ」
「めんどくさい。着替えさせて」


今日は随分と可愛らしく我が侭だ。はあとため息をついて、やれやれと顔には出しながらそれでもキラを甘やかす。
抱きついたままのキラをそのままにして、クローゼットの中の服を取り出す。散らばった下着を履かせて、万歳したキラに服を着せる。


「なんか懐かしい。小さい頃よく着替え手伝ってくれたよね」
「そういうのを進歩がないと言う」
「進歩ぐらいしてますー。手伝わせて上げてるんですー」
「なんだそれ」


キラの言い分は、時々すごくいい加減でおもしろい。
最後まで着替えを終えると、キラはよくできましたとアスランの頭を撫でた。


「こら、キラ!」
「アスラン良い子、良い子ー」


わしゃわしゃと髪を乱暴に撫でられる。ぐちゃぐちゃになった髪を見ると、キラはけらけらと笑った。


「こら、時間ないんだって言ってるだろ」
「お腹すいた」
「車の中で食べられるように用意している」
「流石アスラン!」


キラはタックルでもするように抱きついてきた。
今日は本当に、どこまでも甘えたい気分らしい。


「ほら顔洗ってそろそろ出るぞ」
「はーい」


これからもずっと、毎日こうして駄々を捏ねるキラを起こすのだろう。



*飽きのこない攻防戦



でもたまには素直に起きてくれないと、冬の終わり頃には喧嘩になるのかもしれない。

まあ、この役目は今のところ気に入っているから、誰にも譲ったりはしないけれど。




end



寒くなってきましたね。
アスキラはリア充なんで、寒いとこれ見よがしにイチャツけばいいと思います。そんでラクスあたりにいい加減にしろと灸を据えられればいい!!
アスキラ下さい。いちゃつくアスキラァアアアアア←





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