7thB.V

□瞳が映すもの
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このごろ、レナの様子がおかしい。
どこかそわそわしていて、心此処にあらずといった感じだ。

世間知らずなレナのためにと、一般常識を叩き込ませている最中だった。
村で暮らすようになって、必要になる知識も身に着けさせなければならない。

手始めにと、本を読ませてみる。
だが、その本のページは一向に進む気配を見せない。

ちらちらと、視線を忙しなく動かして小動物のようだった。


「レナ、なにを気にしているのですか」

「え? べ、別に何もないわ」


明らかに上ずった声。
分かりやすすぎるその反応。

隣でレナにもたれ掛かって一緒に本を読んでいた影は、早いうちから飽きてしまっていた。
ときどきチロチロと自分の赤い舌を出して、それにじゃれ付いている。
何が面白いのか分からないが、きゃっきゃと笑って繰り返している。

さしずめ、子兎と子猫。


「私だって、いろいろ忙しいのですよ」

「あ、ごめんなさい」


本に視線が戻って、字を追い出した。
ふわふわの前髪が目に掛かりそうになっている。
白い額に濃い影を落とす。

ああ、また視線がそれた。
気に入らない。

ページを捲ろうとしていた手を掴む。
白く細い手首は、力を込めると折れそうだった。
色素の薄い瞳が大きく見開かれる。


「ア、…アーウィン?」

「…気に入らない」


瞳が揺れる。
長い睫毛が影を作って、瞳が隠れた。


「ッ!! い、たい!?」


手に力が入る。
片手で持ち上げると、宙吊りになったレナが苦痛に歪んだ顔をしていた。
何故と問いかける瞳が向けられる。


「やあ、れなぁ!!」


影が足にまとわり付いた。
敵意が込められた赤い目が、此方を向く。


「これにも、感情はあるのですね」

赤い舌が伸ばされる。
鬱陶しい。
蹴り上げると、影は壁に叩きつけられた。


「や、やめて!!」

「れ、なぁ…」


まともに腹に入ったらしい。
影は、意識を失った。

影に向かって手を伸ばすレナの顎を持ち上げた。
恐怖に歪んだ顔。
蒼白になったレナが、此方を見ていた。


「ああ、そうです。あなたは此方を向いていればいい」


あなたが、外の世界に出ていろいろなものに興味を持ったことは分かる。
あの紛い者に、惹かれ始めているとこも。

気に入らない。

ずっと見てきたのに。

離れていくあなたが、我慢できない。


「レナ、あなたは私のものです」


私の赤い舌が、白い首を舐める。


「あ、うぃん……」


私を捉えたその瞳が、永遠に私を映すように。


End



初アーレナです。
……これじゃ、唯の虐待だなι
ロリコンでドSとか最悪だなぁとか言いつつ、好きですよアーウィン。
書きにくいけどね、アーウィン。

ドSキャラ初挑戦だったり……やっぱ、難しい
ごめん、影レナよ



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