7thB.V

□チェリーブロッサム
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庭にあるしだれ桜が満開を迎えた。

風が吹くと、はらはらと舞う桜の花びらがとても綺麗だった。
この村にレナ達が来てから初めて迎える春になる。



樹齢はかなり長いと思われるこのしだれ桜は、噂ではオーゼンナート家が始まったときからあると言われていた。

部屋の中から窓の外を物珍しそうに覗いている少女たちを見ると、思わず笑ってしまった。
仕草をまねているのか、まったく同じ姿勢で二人は見ていた。
アーウィンから出された課題を勉強している為、ペンを持ったまま二人は外を向いていた。

元は同じだから不思議じゃないのかもしれないが、微笑ましく見えてしまうのだ。
年上なのは分かっているのだが。


「ねえちゃん達、外に行ってきたら?」

「え、フレディ?」

「こんなにいい天気だもんね」

「でも、なかなか課題が終わらないの」


確かにレナの前には手付かずの書物が二冊ほど積んであった。
身体の面もあり学校にはほとんど行っていなかったレナが一般的な知識を得るためと、アーウィンが言っていた気がする。


「でも、気になるんだよね?」

「うん。とっても」


飲み込みは早いのだが、レナのペースはゆっくりでなかなか進まないのだ。


「息抜きも必要だよ。それに、こっちのねえちゃんは日の光にも慣れないとね」


冥使は日の光に弱い。
特に影のほうは、生まれたときからあの修道院に入れられていた為、特に苦手だった。
この村で暮らしていくためにも、克服してもらわなければいけない。
そうレナを説得させて外へ出た。


外は明るい日差しが降り注いでいた。
眩しそうに目を細める影は、それでも気持ちよさそうに身体を伸ばしていた。



「こっちのねえちゃんはネコみたいだね」

「そうね」


直接日に当たるのはやはりまだ苦手な用で、木陰に入り込んでいた。


暑くもなく寒くもなく、ちょうどよい。
時折吹く風に、しだれ桜の枝がそよいだ。


さわさわと心地よい音もした。

レナが暮らしていた家のそばには、こんなに大きな桜はなかった。
ましてや身体が弱かった所為で、外にでることも少なかった。


「口、開いてるよ」


ぽかんと上を見上げていたレナは、あわてて口を押さえた。


ひらひらと薄いピンクの花びらが舞い落ちる。
影はその花びらを捕まえようと、手を伸ばしていた。ひらひらと風に舞う花びらは、彼女の手をすり抜けて落ちていく。


「あうぅ」

「本当にネコみたいね」


ぷくりと頬を膨らませた影に、レナはくすくすと笑った。
あの暗い修道院の中では考えられなかった姿だった。


「れなぁ」

「なぁに?」


甘えるような声で影はレナにすり寄った。
影はレナの頭に手を伸ばす。
ひらりとレナの髪に乗った花びらを取ると、影はにこりと笑った。


「ありがとう」

「きゃはは!!」


褒められて嬉しかったのか勢いよく飛びついたが、レナは支えきれずにころりと転がった。
もうお馴染みになってしまったやりとりだった。


「れなぁ」

「くすぐったい!」


影は嬉しそうに頬ずりした。
同じ金色の髪が頬にあたるのがくすぐったくて、クスクス笑う。
レナの反応を面白がってか、影は楽しそうにひっついていた。
レナの柔らかい笑い声が響いた。



フレディはそばでその様子を見ていた。
あの修道院では考えられなかった光景だった。
まさか、こんなにも穏やかな日々がやってくるとは思っても見なかった。



まるで、金色の二匹のネコがじゃれ合っているみたい。
レナには笑っていて欲しい。
たとえ冥使で、しかも央魔でもあって、その中でもさらに特殊なケースであっても。

二人に分かれたままのレナたちがこれからも、笑っていられるような村にしたい。



金色の髪が木漏れ日に反射して、きらきらと輝いていた。


「ふれでぃ!!」

「うわ!!」


思いに耽っていたフレディの目の前に、赤い目のレナが現れた。レナにじゃれるのは満足したのだろう。


影はきゃははと笑っていた。





ぱたんと地面に転がってみた。
まねをして、彼女たちも寝ころんだ。



さわさわと揺れる桜がとてもきれいだった。


「きれいね」

「き…れ、い?」

「そう、とってもきれい」



来年もこうして桜の下にいられたらいいのにな。


「来年も見ようね、フレディ」

「うん」





end


あ…あれ?
友達にネタ出ししてもらったのと随分と違うものになったよこれ……

微妙に桜の時期からずれましたが、しだれ桜はまだ咲いてます!!!

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